あと3日
「あ、そう言えばノザキヒロト、お前ここに来る途中の村で盗賊を捕まえたんだよな?」
「はい」
「1人強い奴いなかったか?」
「えーっと、冒険者ランク5の人が共犯者でした」
「そいつも捕まえたか?」
ガルムさんは鬼気迫って聞いてくる。
「はい、捕まえました」
「もしかして・・・」
話を聞いていたオリビアさんが言った。
ガルムが言う。
「たぶんそいつです。ランク5の冒険者なら辻褄が合う」
急にオリビアさんが泣き出した。ガルムも「よくやった!」と俺の手を握ってきた。
どういう状況???
「実はオリビアさんの夫は、半年前に盗賊に襲われて死んでしまったんだ。オリビアさんの夫は冒険者でランクは6だった。氷魔法も使えて、盗賊なんかに負けるはずない強さなんだが・・・
でも、今君のおかげで分かったよ。たぶんその冒険者がオリビアさんの夫を殺したんだ」
そんなことがあったのか。
オリビアさんは俺に向かって「ありがとう、ありがとう!」と泣きながら言ってきた。
「ガルム、出かけるぞ!
オリビアさん、どうしたんですか? ガルム、お前が泣かしたのか!」
王子が奥の部屋から出てきた。
「後で説明します。
オリビアさん、また明日も来ていいですか?」
ガルムが聞くと、オリビアさんは
「はい、待ってます」
と泣きながらも笑顔で返した。
ガルムさんもニコッと笑うとドアを開けて出て行った。
俺もガルムさんについていって家を出ようとした。
するとオリビアさんが
「ヒロトさん本当にありがとうございます」
と頭を下げた。
俺はどんな反応をしていいか分からず、頭を下げた。
・・・・・・
王子は森に向かっているようだった。道中、先程あった話をガルムさんが王子に話すと、王子は「ノザキヒロト、本当にありがとう!」と言って手を握ってきた。
俺は恥ずかしくなって話を変えた。
「そういえば、氷魔法って初めて聞きました」
「まあ、氷魔法は水魔法の応用だからな。
火魔法って料理の時に温度調節するだろ。あれの水魔法バージョンだ。しかし難易度は格段に高い。しかも集中力と時間がかかるからあまり実践的ではないな。
まあ、俺は余裕で使えるけど」
そこからガルムの自慢話が始まった。俺は適当に相槌を打ち、話題を変えた。
「そうだ、なぜ森に向かっているんですか?」
王子が答えた。
「水色のガーベラを探しにな」
ガルムさんが俺に耳打ちしてきた。
「実はクロエが水色のガーベラをオリビアさんに渡したいらしいんだ。
オリビアさんは亡くなった夫からプロポーズの時に水色のガーベラを貰ったらしい。だからクロエもオリビアさんに感謝を込めて渡したいんだとさ。
でもクロエは体が弱ってるから、余が探しに行くってクロエに言ったらしい」
「ガルム、それ以上喋ったらクビにするぞ!」
・・・・・・
森に着くとリュードがいた。
「あれ、アニキどうしたんですか?」
俺は今までのことをリュードに説明した。リュードは途中で泣いてしまった。
「分かりました! 俺も水色のガーベラ探し手伝いますよ!!」
「ちなみにリュードはどうしてここに」
リュードは照れながら答えた。
「修行の続きを」
ガルムさんがリュードに話しかけた。
「こいつがさっき言ってたリュードか。アニキって呼ばれてるんだな」
ガルムさんは笑いながら言った。
ガルムさんを見たリュードは驚いていた。
「アブドヘルムのガルムさんですか?」
「ああ、そうだぜ」
「凄い! 本物だ!!」
え、ガルムさんって凄い人なの??
「普通はそういう反応をしたくてくれるんだよなー」
そう言ってガルムさんは俺を見た。
俺は目を逸らした。
「あの、差し出がましいようですが、俺と一度だけ試合をしてくれませんか?」
リュードが聞く。
ガルムは少し悩んでいたが、
「水色のガーベラを見つけてくれたらいいぜ!」
と答えた。
リュードは「やった!」と言って探しはじめた。
王子は俺たちのやり取りを気にする様子はなく、ひたすら水色のガーベラを探していた。
その日は水色のガーベラは見つからなかった。
王子は焦っていた。
「あと、10日あるんですよね?」
俺がガルムさんに聞くと、ガルムさんは首を振った。
「いや、10日っていうのは俺たちが出会った時だから、今日を合わせてあと3日だ」
あと3日⁉︎ 今日を合わせてだから実質明日には見つけなくちゃいけないじゃないか!!
それって大ピンチってやつだよな!!!
・・・・・・
次の日、俺とリュードは朝から森へ向かっていた。
王子とガルムさんはクロエに挨拶してからくるらしい。
俺たちは必死に探し回ったが見つけられなかった。クロエが言うには、クロエのお父さんは水色のバラをこの森で見つけたと自慢してきたらしい。
「もう少し森の奥に行ってみるか」
俺はリュードに言った。リュードは頷いた。
奥にはいろいろな魔物がいた。見たことがある魔物はもちろん、知らない魔物もいた。
その中でも今回1番驚いたのが、スライムだった。
「この世界にもスライムっているんだな」
俺がスライムに近づくとリュードが驚き、俺を止めた。
「アニキ、何近づいてるんですか? スライムですよ⁉︎」
え、まずかった?
「スライムは打撃攻撃も魔法攻撃も効かない、厄介な魔物なんですよ!」
そうなの! スライムって強いの⁉︎
「その代わり、近づかない限り攻撃してきません。
早くここから離れますよ」
俺はリュードに引っ張られてスライムから離れた。
その後、水色のガーベラを探している時、リュードが呟いた。
「俺もサナにガーベラ持って行ってあげようかな」
そういえば俺もガーベラを母の日に、弟と一緒に母親に渡したことがあったな。
あの時は赤色のガーベラを渡した気がする。青色もあったんだけど、店員さんはなんて言ってたんだっけ?
そんなことを考えていると王子とガルムに出会った。
「なんとしても今日水色のガーベラを見つけたい!
2人とも、協力してくれ!!」
王子が頭を下げた。ガルムが驚いている。
リュードが
「その為に朝から森に来てるんですよ」
と言った。王子は「ありがとう」と言うとすぐに探しはじめた。ガルムは開いた口がまだ塞がっていないようだった。




