解決
階段を降りて行く。声が聞こえる。降りて行くほどに声は大きくなっていく。
「盗賊の方は失敗しましたが、いい女が手に入りましたね!」
「ああ、冒険者の女だから多少は戦えるだろ。闘技場に剣闘士として売れば相当な額になりそうだ」
「女の剣闘士は珍しいですからね」
男達は笑っていた。
サナは手足を縛られ目隠しと猿ぐつわまでされている。この隠し部屋にいるのは5人だった。真ん中に大食い大会の決勝戦に出場していたランク5の冒険者がいた。
あいつも内通者か。冒険者なら報酬を多額にして、盗賊にわざと襲わせた後、まるで自分が追い払ったように見せるのも難しくない。
反吐が出る。
俺はこんな奴らにサナを奪われたのか。
はらわたが煮え繰り返る思いだった。
俺は部屋に入った。
「おい、今なら許してやる。サナを返せ」
男達は驚きを隠せないようだった。
「どうしてここが分かった?」
真ん中にいた冒険者が言う。
「お前の仲間が教えてくれたよ」
「ちっ、あいつ喋りやがって。
待てよ、あのシャルルとかいう女はいないのか」
「いない」
冒険者の男が急に笑い出した。
「お前がここを見つけたのは偶然か。他の奴らはまだ探してる途中なんだな。
じゃあお前を倒せば済むだけだ」
男は片手を前に出し、火魔法を放った。
しかし光の盾が俺を守る。
「ちょっとはやるようだなぁ。だがこれならどうだ」
男が手を握ると、飛び散っていた火が俺に集まった。
「今のは防御できなかっただろ。
甘いなぁ、戦闘中に油断するなんて」
煙が晴れる。
「誰が甘いって?」
俺は無傷だった。
「なんで・・・?」
「遊びは終わりだ」
「なんだって? 調子に乗るなよ雑魚が!!」
男が剣を抜き突っ込んで来た。俺は男の攻撃を全てかわす。
「なんでだ、なんで当たらないんだよ⁉︎」
男は一歩下がり、火魔法を放った。俺はその魔法を木刀で斬った。
「おかしい、なんで木刀で火が斬れるんだ⁉︎」
俺はそのまま男を斬った。男は横に吹っ飛び気絶した。
部屋にいた残りの男達は急いで臨戦態勢に入る。どうやら冒険者の男が負けるとは思っていなかったようだ。
「それ以上近づくな! 近づいたらこの女がどうなるか分かってるよな!!」
サナの近くにいた男がサナの首元に剣を当てる。
「それはやめておいた方がいい」
「なんだと? 決定権はこっちにあるんだぞ!」
「忠告したからな」
俺は右の足と膝に魔力を集中させた。
バキッ!
サナに剣を突き立てていた男の顔に俺の膝が食い込む。男の鼻は折れ、歯は何本か飛び散っていた。
「加減が難しいんだ」
周りの男達は俺を探していた。
しかしすぐ横に俺がいることに気づくと、叫び声を上げて襲ってきた。俺は全てかわしカウンターで全員を気絶させた。
・・・・・・
俺はサナの手足の縄、猿ぐつわ、最後に目隠しを外した。
「サナ、助けにきたぞ。
俺の不注意で怖い思いをさせたな。すまない」
サナは抱きついてきた。
「ありがとうございます!
本当にありがとうございます!!」
サナは俺の胸で泣いた。
俺はサナが落ち着くまで動かなかった。
・・・・・・
一時間後、街から締罰隊がきた。
「協力、感謝します!」
締罰隊の人が俺達にお礼を言った。
いろいろな事情聴取を受けたが、30分ほどで解放された。細かい事は盗賊達から聞くのだろう。全員現行犯で捕まったのだから。
締罰隊の人は別れ際に、俺に渡したいものがあると言ってきた。
「冒険者ランク5の犯罪者を倒したので、ランク5のバッジを贈呈します。今回は本当にありがとうございました!」
・・・・・・
その夜、村は祭りのように盛り上がっていた。俺達は村の多くの人から感謝された。住みついていた盗賊が捕まったのだ。村人達にとっては何よりも嬉しいことだろう。
俺たち4人はひととおりもてはやされた後、同じ席についた。
「一から説明してくれる」
シャルルは不機嫌に言った。サナが俺に抱きついて離れないのだ。
「分かった、少し長くなるぞ。
俺はブランドンから、この村に来る時は必ずと言っていいほど盗賊に襲われると聞いた。その時は特に気にしていなかったんだが、俺たちが3人だけで森に行った時に、仕掛けられたことで確信に変わった。
この村には内通者がいると。
シャルルがいない時に襲われたこともそうだが、あいつらの武器が盗賊達が使っていた武器と同じだったんだ。
そして盗賊を尋問していた時、俺たちの仲間がお前らのアジトを確認しに行っていると俺が言うと、尋問を受けていた男は急に心に余裕ができた。それを見て、俺たちには他に仲間がいないことがこいつらにバレていることが分かった。
そのことを知っているのは大食い大会終了後に話しかけてきた鍛冶屋のおっさんだけ。だから鍛冶屋のおっさんが内通者だって思ったんだ。
でも鍛冶屋の地下に盗賊のアジトがあるとは思ってなかったよ」
サナは「さすがです!!」と言って俺をより強く抱きしめた。
シャルルは怒りが抑えられないようだった。殺気が漏れている。
そうだよな、サナを危険な目に合わせてしまったことには変わりない。どんなに怒られても仕方ないよな。
「ヒロト」
「はい」
「あなた、そこまで分かっていて鍛冶屋に行ったのよね?」
「はい」
なんでそんなこと聞くんだ?
「じゃあ私が鍛冶屋に行っても良かったじゃないのよ!!!」
???
「そしたら今頃私がサナを独り占めに・・・
許さない!! ヒロト、今から決闘よ!!!」
えぇーー、怒るところそこ⁉︎
こいつ、どんな時でもブレないな。




