決闘
朝6時、ブランドンは既に待ち合わせ場所に来ていた。
この異世界では、どんな動物が荷車を引いているのかと思ったが、普通に馬だった。何の変哲もない馬だった。名前はケヴィン、名札に書いてあった。
俺たちは荷車に乗った。村への道のりは順調だ。
思っていたよりこの馬車の旅は楽しかった。少し揺れるが、草原の中をまったりと進んで行く、異世界に来て落ち着いた感じはこれが初めてだ。
目の前に森が見えてきた。
「盗賊は基本的に弓矢で攻撃してくるわ。弓矢が飛んできたら私が光魔法で防御するから、飛んできた方向を覚えて突っ込みなさい。
盗賊になるような奴らは大したことないから」
シャルルはそう言うと臨戦態勢に入った。こういうところを見ると、シャルルってすごいやつなんだなと感心させられる。
「そろそろ森に入ります。お二方ともよろしくお願いします」
ブランドンが言った。俺の中に一つの疑問が浮かんだ。
「魔物は大丈夫なのか?」
「大丈夫よ、魔物は襲ってこないわ。
森の中に作られた道は、どの魔物の縄張りからも外れているの。しかも冒険者がよく通る道だから、魔物も迂闊には近づいて来ないってわけ。
その代わり、冒険者や馬車を狙った盗賊が襲ってくるのよ」
なるほど。上手いこと成り立っているんだな。
森に入ると辺りは一気に暗くなった。シャルルも警戒しているようだ。
森を進むこと30分、特に変わったことは何も無かった。
「あと10分ほどで森を抜けます」
ブランドンがそう言った瞬間、シャルルが馬車を光魔法で囲んだ。周りから弓矢が飛んでくる。弓矢はシャルルの光魔法に全て弾き返された。
「ヒロト、いくわよ!」
シャルルはそう言うと荷車から飛び降り、茂みに入っていった。俺も弓矢が飛んできた方向へ、荷車から飛び降り向かった。
茂みを越えた瞬間、男が斬りかかってきた。俺はそれをかわし、相手の腹を殴る。
次は弓矢が飛んできた。右からは剣を持った男が突っ込んでくる。俺は弓矢をかわし、突っ込んできた男を風魔法で吹っ飛ばした。吹っ飛ばされた男は木に激突する。
その後、すぐに弓矢を放った相手との距離を詰め、相手の弓矢を折った。
男たちは戦意を喪失したのか、気絶した男を抱えて森の奥へと逃げて行った。
この程度の相手なのか。確かに大したことないな。
俺が荷車に戻る頃には既にシャルルは荷車に乗っていた。
「遅い! 何してたの!!」
いや、シャルルが早過ぎる。どうやって相手を倒したんだ?
「ありがとうございます! 流石ですね。それでは出発します」
ブランドンはそう言うと、馬をムチで軽く叩いた。
馬車が動き出す。
その後は何事もなく、無事に森を抜けた。
森を抜けた後、30分ほどで村についた。
村は思っていたより活気的だった。ブランドンによると近々この村で大食い大会が開催されるらしい。
ブランドンもこの村に人が集まると見込んで、ここに商売をしにきたと言っていた。
シャルルはその話を聞き目を輝かせた。
「その大会って参加資格とかあるのかしら?」
「予選を突破すれば誰でも参加できるって聞いています」
「ヒロト、私この大会に参加してくるからここからは自由行動ってことで!」
シャルルはそう言うと何処かへ行ってしまった。
食べ物のこととなるとすぐこれだ。
俺はブランドンから報酬を受け取った。
「こんなにいいんですか?」
ブランドンの報酬は想像以上に高額だった。
「いいんですよ。この村と街を繋ぐ道には必ずと言っていいほど盗賊が出るんです。締罰隊も何度か派遣されているんですが、捕まえられないんですよ。
なので、冒険者ランク3の方が護衛についてくれるならこれぐらい安いもんです。実際、積荷も馬も無事でしたし」
そうだったのか。
俺はブランドンにお礼を言って宿屋へと向かった。
よかった、2部屋空きがある。
部屋を予約した後、暇だったので村を見て回っていると、声をかけられた。
「お前、闘技場でロックベアーを倒した奴じゃないか?」
中学生ぐらいの藍色の髪をした男の子だった。
「俺はリュード、よろしく! こいつは幼なじみのサラ。俺たちの冒険者ランクは7だ」
リュードの後ろから藍色の髪を腰まで垂らした女の子が顔を出し、頭をペコッと下げた。
なんだこの子。コミュ力高いな。
「俺はヒロト、ランクは7だ。なぜ俺が冒険者だと?」
「こんな村で腰に剣をぶら下げてたら冒険者か盗賊に決まってるだろ」
リュードは笑いながら言う。
周りを見ると、確かに村人らしき人たちは剣をぶら下げていなかった。
「ヒロト、いきなりだが俺たちと一緒に冒険しないか?」
えっ! 急に何言うんだ?
俺が固まっていると、
「そうだよな、弱い奴とは組めないよな・・・よし、決闘をしよう。俺の実力を分からせてやる!」




