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別れ


 まただ。また俺は気を緩めてしまった。俺もシロも初めと比べると相当強くなった。そして今回はシャルルもいる。そんな油断がこの状況を生んだのだ。

 きっと、このオオカミ達はシャルルが強いのを見抜いたのだろう。シャルルがいなくなる瞬間を狙っていたのだ。万全な態勢を整えて。


 シロも今回は威嚇しかしていない。

 こちらの攻撃も通らない。逃げ場もない。

 今度こそ駄目だ。

 ここは玉砕覚悟でシロだけでも逃がそう。


 しかし、そんな覚悟はいらなかった。

 オオカミの群れは一瞬にして消え去ったのである。

 俺は目を疑った。シロの後ろに通常のオオカミの3倍は大きい真っ白なオオカミがいたのだ。

 そのオオカミは荘厳で圧倒的なオーラを放っている。

 俺は一歩も動けず、声を発することさえできなかった。

 そう、皮肉にも今日1番会いたくない相手に命の危機を助けてもらったのだ。


 シャルルがテントを回収して戻ってきた。


「どうしたのヒロト? そんなところで突っ立って」


 シャルルは俺が向いている方向を見る。


「ホワイトウルフ・・・」


 シャルルでさえ気圧されていた。

 シロは自分の親に近づき、頬擦りをした。親もそれに応える。その姿は誰にも邪魔できないものだった。


 しかしシロは親との頬擦りをやめ、俺とシャルルの元に来た。

 シロは今までで1番甘えてきた。頬擦りをし、俺たちの顔を舐め回し始めた。

 シロは今までこんなことはしなかった。それはシロが強く賢いからだとずっと思っていたが、そうではなかった。シロは俺たちと別れる時が来るのを分かっていたのだ。俺たちに甘えてしまうと別れが辛くなってしまう。だからシロは今まで甘えてこなかったのだ。


 シロは最後のこの一瞬だけでもと全力で甘えにきている。

 俺とシャルルは抵抗しなかった。シャルルの顔は涙とよだれでぐちゃぐちゃだった。


 シロは最後に俺たちに頬擦りをして親の元へ向かった。


「シロ〜〜〜〜!!!」


 シャルルの涙は止まらなかった。


「シロ、お前といる時間は楽しかったよ! ありがとう!!」


 俺は涙を必死に堪えながら言った。


「シロ、またどこかで会おうね。絶対だからね!!」


「ウォン!」


 シロが答えた。

 シロは親の背中に飛び乗った。シロの親は俺たちに向かって一礼すると一瞬で姿が見えなくなった。


 遠くから2匹のオオカミの遠吠えが聞こえた。


・・・・・・


 俺たちは無気力な状態で宿屋へ向けて歩き続けた。

 お互い一言も発さなかった。喋ってしまえば涙を抑えられなくなるからだ。


 宿屋に着いたが、今は満室だと言われた。 


 俺たちはテントで寝ることに決めた。

 お互いテントに入った後、俺はシャルルがテントの中ですすり泣く声を聞いた。

 やっぱり悲しかった。

 一緒に冒険しようと決めた日に迎えに来るなんて。せめて1日前に来てくれればここまで悲しい別れにはなってなかったのに。

・・・・・・


 テントの隙間から差し込む光が俺の顔に当たる。

 俺は目を覚ました。すると目の前にシャルルがいた。


「うわっ!」


 俺は急いでテントを出た。

 あれ、まさか俺はシャルルのテントに潜り込んだのか?

 しかしテントは小さかった。


「朝から何よ、うるさいわね」


 シャルルがテントから出てきた。


「お前、これは、どういうことだよ!」


「しょうがないでしょ! あのテント、シロの匂いがして眠ろうにも眠れなかったんだから!」


 シャルルの目元は真っ赤だった。

 こいつも悲しかったんだな。

 俺はテントを片付けた。シャルルも片付ける。

 気まずい空気が流れる。


「街に行くか?」


 シャルルが頷く。

 俺たちは街へ向かった。


・・・・・・ 


「先ずはギルドに行きましょう! 獲った魔物も売り捌きたいしね」


 シャルルは空元気を出していた。

 俺はシャルルの提案に賛成しギルドに向かった。全ての魔物を売ると結構なお金になった。

 シャルルにいくらか返そうとしたが、装備を整える為に必要になるからと断られた。

 シャルルは掲示板から1枚の紙を持ってきた。


「この護衛の依頼を受けるわよ!」


 それは、この街からある村まで護衛してほしいというものだった。このルートはコーラルに行く時に通る道らしい。目的地が一緒ならば、ついでに稼いでしまおうということだ。

 お勧め冒険者ランクは6と書いてある。


「今のあなたなら大丈夫よ」


 そう言ってシャルルは受付に紙を持っていった。


・・・・・・


「今回の護衛任務の依頼主のブランドンです。よろしくお願いします!」


 物腰の柔らかい人だった。


「私は商人をしています。今回は私と積荷を守っていただく依頼です」

 

 この時、積荷の内容を聞くのは駄目らしい。暗黙の了解というやつだ。

 俺たちはブランドンの依頼を受けた。


「それでは明日の朝6時に正面の門で待ち合わせということで」


 俺たちはブランドンと別れた。


 

「俺ちょっと用事があるから、ここから別行動でいいか?」


「奇遇ね、私も用事があったからちょうど良かったわ」


 ギルドを出てから俺たちも別れた。

 俺は先ず武器屋に寄った。剣が折れたままだからだ。新しい剣を買った後は道具屋だ。回復薬や解毒薬を補充し、面白そうだったので煙玉も買った。

 その後、俺は森へ向かった。

 特に意味はない。ただただ森へ、あの場所へ行きたかったのだ。

 目的地には先約がいた。


「ヒロトも来たの?」


 シャルルが座っていた。


「当たり前だけど戻ってきてないな」


「そうね、シロも進んでるのよ。自分の道を」


「俺たちも進まないとな!」


「自分の力で?」


「恥ずかしい事を思い出させるな!」


 俺たちは街へ戻った。シロの話をしながら。


 途中で喧嘩になってしまった。どちらがシロにより好かれていたかというしょうもない事で。


 

 いよいよ明日は俺にとって初めての任務だ。

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