成長
「今日は一段とボロボロね。
シロ、大きくなった?」
宿屋に着くとシャルルが夕食を作って待ってくれていた。
「ロックベアーに遭ったんだ」
「大丈夫だったの」
「シロのおかげで」
俺はシロを撫でる。
シャルルはシロを抱き上げ
「お荷物がいると大変だねー」
と言いながらシロの頭を撫でた。
お荷物ですいませんね。
・・・・・・
シロの親を待って3日目。
今日もいつものように俺とシロは森に来ていた。
俺は光魔法と身体能力の強化、つまり身体の部位に魔力を集中させる練習をした。
光魔法は順調に修行がすすんだ。壁のようなものを作れるようになり、剣の切れ味も上がった。
何より、光魔法は魔力還元がしやすいことがわかった。
魔力還元をした時の疲労感が他の魔法の時よりも少ない。これならば魔力を気にせず使うことができそうだ。
身体能力の強化に関しては上手くいかなかった。どうしても制御がうまく出来ないのだ。これを習得するには骨がおれそうだ。
練習中も魔物が襲ってくるので気は抜けない。襲ってくる魔物を撃退して、練習、撃退して、練習を繰り返した。
3日目もシロの親は来なかった。
・・・・・・
4日目、今日の天気は嵐だった。
「今日はやめときなさい! こんな日に迎えに来ないわよ」
シャルルはそう言ってくれたが、俺とシロは森へ向かった。傘はどこにも売ってなく、びしょ濡れのままいつもの場所を目指した。
今日は魔物もほとんど襲って来なかった。
ただただ時間だけが過ぎていく。
激しい雨が俺たちをうちつける。
俺は集中力が切れていた。いつもなら余裕でかわせる攻撃も今日は違った。
茂みから出てきたカエルが毒液を吐いたのである。俺は不意をつかれて、動けなかった。シロは俺に体当たりをする。カエルが吐いた毒液がシロに当たる。
「シロ!」
俺はすぐさまカエルを斬りシロに駆け寄った。回復薬をかけるが、紫に変色した部分は広がっていく。
俺のせいだ。森では油断してはいけないと散々思い知らされているのに気を抜いてしまった。この一瞬が命とりなのに。
シロの息が早くなる。何か、何かないのか?
このままではシロが死んでしまう。
「こんなことだろうと思った」
後ろから声がした。なんとシャルルが立っていた。
「雨の日にはよく毒ガエルが出るのよ。
ちょっとどいて!」
シャルルは巾着から藍色の液体が入ったビンを取り出し、シロに飲ませた。
シロの体から紫色の部分が消えていく。
「やっぱり回復が早いわね」
シロはあっという間に元気になった。
「ありがとう、シャルル」
「どういたしまして。ヒロトのことだから何も考えずに森に行ったんだろうなと思ったのよ。
うわっ、ビショビショじゃない!
水魔法を使わなかったの?」
よく見るとシャルルの頭の上に水が浮いている。シャルルは濡れていなかった。
水魔法を自分の頭上に固定させることで、傘の役割になるのか。なるほど、どのお店にも傘が売っていないわけだ。
「しょうがないから私も一緒に待ってあげるわよ」
素直じゃないやつ。でも本当に頼りになる。
シャルルはシロの体をタオルで拭いていた。
夕暮れには雨が上がった。
森を抜けた頃には周りは暗くなっていた。
・・・・・・
5日目の朝、
「きゃーーー!!」
シャルルの部屋から叫び声が聞こえた。
俺が自分の部屋を出ると、周りの人も何事かと顔を出していた。俺は急いでシャルルの部屋のドアを開けた。
そこには大人のオオカミがいた。シャルルは腰を抜かしている。俺は急いでドアを閉じた。
昨日もシロと一緒に寝たのだろう。起きたら子どものオオカミではなく大人のオオカミがいるのだ。それはびっくりする。
「シロか?」
俺が聞くと、オオカミは近づいてきて俺の足に頬ずりしてきた。
シロだ! 間違いない。それにしても成長が早すぎるだろ!
まだ朝早い時間だったので、俺たちは急いで宿屋を出て森へ向かった。
・・・・・・
「これはまずいわね」
シャルルは深刻な顔で言った。
「もう町の中にはシロを連れて行けないわ」
「何かテントとかないのか?
俺が町の外でシロと寝るよ」
「テントならあるわよ。でも駄目」
「なんでだよ?」
「シロと寝るのは私だから」
・・・・・・
今日もいつもの場所に着いた。
俺は練習を再開した。
「面白いことしてるのね」
シャルルは俺とシロを見ていった。
練習にはシロがずっと付き合ってくれているのだ。シロとの練習は為になる。まずはこちらの攻撃がほとんど当たらない。すばやさが違い過ぎる。それを補おうと俺の無駄な動きがどんどん減っていくのだ。
魔物が現れた時、シャルルは俺たちに課題を出した。
「私を守りながら戦いなさい。私はここから一歩も動かないから」
この課題は相当難しかった。シャルルに向かう魔物は全て倒さなくてはいけないし、安易に攻撃をかわすことも出来ない。初めのうちはシャルルに攻撃が十発も通ってしまった。
シャルルは光魔法で自分の周りをガードしているのでダメージは無いが、攻撃が通った分だけペナルティを出された。ペナルティは至ってシンプル、筋トレだった。
「おい、シロにペナルティはないのか?」
「あるわけないでしょ。こんなに可愛いんだから」
そう言ってシャルルはシロに頬擦りした。
ペナルティが無い理由になってねぇ!
この日もシロの親は現れなかった。
俺たちは街と森の中間地点にテントを張った。
ここなら魔物は来ないらしい。
シャルルは俺にもテントをくれた。
「なんか俺のテント小さくね?」
「文句を言わない!
あと、こっちのテントに入ってきたら殺すから」
そう言ってシャルルは自分のテントに入っていった。
そんなことするわけないだろ!
シャルルのテントが光魔法で覆われていく。
そんなに信用ないか!




