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猫と幼なじみ  作者: 鏡野ゆう
帝国海軍の猫大佐 裏話

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50/55

一般公開に行くよ! in 帝国海軍の猫大佐 13

帝国海軍の猫大佐の裏話的エピソードです



+++++



「さてと。和人(かずと)、そろそろ下におりて見学するか。あとちょっとで見学の時間もおしまいだから、他の場所が見れなくなっちゃうぞ?」

「ここがいいー!」

「いつまでもお前がそこにいたら、艦長が座れなくて困るだろ?」


 後ろで軽い咳ばらいが聞こえた。振り返れば大友(おおとも)さんが入ってくるところだった。


「ほら。艦長が来たぞ? 和人がイスを返してあげないと、艦長が座れなくて、立ったままになっちゃうぞ?」

「ここ、市バスみたいなゆーせんせきー?」


 その言葉に、立っていた人達が変な咳ばらいをする。


「……いや、どうかな。そこまで年はとってないと思うけど」

「和人君から見たら、立派なお年寄りだよね、おじさんは」


 大友さんは笑いながらイスのところにやってきて、おちびさんの頭をなでた。


「こんにちわ!」

「こんにちは。今日は楽しかった?」

「楽しかったー! ペダルこいで、けんすいしたー!」

「ん?」


 大友さんは首をかしげながら修ちゃんに目を向ける。


「お茶会のあいだ、伊勢(いせ)達とトレーニングルームで遊んでもらっていたんですよ」

「ああ、なるほどね。それが気に入ったのなら、和人君の将来は立検隊(たちけんたい)で決まりかな」

「さあ、どうでしょう」

「副長の息子なら、将来は護衛艦の艦長になってブイブイいわなきゃダメっしょ」


 山部(やまべ)さんが横で笑った。


「ブイブイってなんだよブイブイって。ほら、本当に行くぞ」


 (しゅう)ちゃんはさっさとおちびさんを抱き上げた。


「では艦長、自分は下にいきます」

「ご苦労さん。和人君、臨時艦長のおつとめ、ご苦労さまでした」

「はい!」


 大友さんとおちびさんが敬礼をしあう。


「では皆さん、お邪魔しました。これで失礼します」


 私も皆さんに挨拶をしながら、修ちゃんについていく。


「気をつけておりてくださいねー」

「また遊びにきてくださいねー」


 その場にいた人達に見送られ、私達は下に降りることにした。


「まこっちゃん、先行して。俺のほうが遅いだろうから」

「わかったー」


 本当にここの階段はやっかいだ。そしてのぼる時よりおりる時のほうが、その厄介さが増す。修ちゃんも階段に慣れているとはいえ、おちびさんを抱っこしている状態だ。その足取りはかなり慎重だった。


「和人、そこ、頭ぶつけるから気をつけて」

「はーい」

「それと、最初のところで止まったら、パパの帽子、ママの頭に乗せて。ツバのせいで階段が見えにくい。まこっちゃん、おりたところでストップ」

「わかったー」


 最初の階段が途切れたところで、私の頭の上に帽子が乗った。そしてそのまま、次の階段をおりていく。


「私より、かず君だっこしてる修ちゃんのほうが早くない? 先に行く?」

「いや、俺は後ろのほうがいい。俺が前になって、万が一まこっちゃんが踏み外して落ちてきたら、三人モロトモだから」

「ああ、それは納得する。私だけなら何とかつかまれそうだけど」

「だろ?」


 二人でモロトモならともかく、おちびさんも含めての三人モロトモは非常にまずい。まずは自分達の子供の安全が第一だ。


「はい、到着。おりて」


 おちびさんをおろすと、目の前のドアを開けた。開けて外に出ると、前のほうの甲板だった。ちょうどドアの前を歩いていた見学者さんが、予想外の場所からの人の出現にギョッとした顔をしている。そしてその横に立っていた隊員さんが、修ちゃんに敬礼をした。


「まこっちゃん、あずけた帽子こっちに」

「ああ、はい、どうぞ」


 帽子をかぶると、おちびさんと手をつないで前を歩いていく。


「和人、さっきまであそこにいたんだぞ?」


 そう言いながら上に見える艦橋をさした。窓越しに、双眼鏡で前のほうを見ている山部さんの姿が見える。途中でこっちに気がついたのか、下に双眼鏡を向けて手を振ってきた。


「たかいねー!」

「けっこうな階段だったもんね」


 見上げたおちびさんも、山部さんに気づいて手をふる。あの場所の窓ふき作業とかもあるらしく、そのための足場と安全帯をつける手すりがあるらしいけど、私にはとてもできそうにないかな。


「あ、パパ、みむろのおめめ!」


 上を見上げていたおちびさんが指でさす。指の先にあるのは、艦橋の下にある、大きな六角形の白いパネルのようなものだ。


「おめめは間違ってはいないかな。あれはこの(ふね)のレーダーだから」


 六角形の白いパネル。その奥にはこの護衛艦の目ともいえるレーダーがあるらしい。でも正直言って、私にはあれは目というより、六角形のサロンパスにしか見えない。だからあれを見るたびに、護衛艦さんも肩こりで大変なんだろうなって思うことにしている。


「まこっちゃんはあれ、サロンパスに見えるんだっけ?」

「そうなの。あのぐらいの大きさがあったら、一生、サロンパスを買わなくてもいいよね」

「あれだけ大きかったらものすごいにおいがして、あっちこっちから苦情が来そうだけどな」


 修ちゃんが笑った。

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