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猫と幼なじみ  作者: 鏡野ゆう
帝国海軍の猫大佐 裏話

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48/55

一般公開に行くよ! in 帝国海軍の猫大佐 11

帝国海軍の猫大佐の裏話的エピソードです



+++++



「はい。ここが俺の部屋。護衛艦の中なんだから、そんなに広くないぞ」


 ドアを開けると、おちびさんが喜んで入っていった。そして部屋の中を見渡してから、少しがっかりした顔をする。


「せまーい! 窓なーい!」

「だから言ったろ? ここは護衛艦の中だって。窓もないし、和人(かずと)の部屋よりせまいだろ?」

「せまいー!!」


 私も部屋に入ってあれこれ見て回った。ベッドは一つ、そして机も一つ。せまいながらも、前に見せてもらった部屋より、ずいぶんと広くなった印象だ。


「最初に乗った護衛艦の時は、二人で一部屋を使ってたよね? あれってやっぱり、下っ端だったから?」


 私の質問に(しゅう)ちゃんが笑った。


「下っ端ってひどい言い方だな。最初の一年目だって、幹部は幹部なんだけど」

「でも二人部屋だったじゃん? こうやって完全な個室を使えてるのは、副長になったから?」


 その質問に首をかしげる。


「どうなのかな。ここでは山部(やまべ)柿本(かきもと)も個室だし」

「そうなんだ」

「新しい護衛艦は、諸々の設備がコンパクトになった分、居住スペースが広くとれるようになったんだよ。それに動かす時に必要な人間も少なくなったし。そういうのも関係してるのかもな。同じ幹部でも、古い(ふね)だと二人部屋になると思う」


 素人(しろうと)が見ただけではわからないけど、古い護衛艦と新しい護衛艦では、それなりに変化があるらしい。


「へー。じゃあ新しい(ふね)に配属されたいって、皆、思ってるのかな」

「かもねー」

「ぼくとママ!」


 おちびさんが声をあげた。


「ん、なにー?」

「あ、和人、そこを勝手に開けるんじゃない」


 おちびさんが目の前にあったロッカーを開け、上を指でさしている。修ちゃんがあわてて閉めようとするけど、おちびさんが立っているので、なかなか閉められない。


「おい、和人、勝手に開けるなよ。ほら、そこをどく」

「ぼくとママー!」

「なになに? なにが僕とママ?」

「あ、ちょっと、まこっちゃん!」


 修ちゃんの背中越しにロッカーをのぞき込む。ロッカーの扉に写真が貼りつけてあった。


「あー、ほんとだ。かず君とママだねー」

「ほら、もう閉めるぞ」

「なんでー? 別に良いじゃん、見られても減るもんじゃないんだし」

「減るんだよ」


 おちびさんを移動させると、バタンッと少し乱暴にロッカーを閉める。


「えー、なんで閉めちゃうのー」

「もう十分に見たから良いだろ? ほら、ここはせまいんだから、外に出るぞ」

「えー」

「えーーー!!」

「もー……だからイヤだったんだよ、部屋を見せるの」


 ブツブツと言いながら私達を部屋から押し出した。


「別にいいじゃーん」

「よくないです」

「うちの家にだって、写真立て、たくさん飾ってあるじゃん?」

「とにかく、今のは忘れて」


 廊下をズンズンと押されて進む。そんなに恥ずかしがることないじゃない? 見たのは私とかず君だけなんだから。


「ああやって、写真を持っていてくれるのは嬉しいんだけどなー。贅沢を言えば、机の上に飾ってくれると、なお嬉しいんだけどなー。あ、出しておくと他の人に見られちゃうか」

「忘れてください、たのむから」

「もー、恥ずかしがり屋さんだなあ、修ちゃんてばー」

「まこっちゃん」


 修ちゃんの声が平べったくなった。これ以上つつくと、本気で怒られるかな。


「はいはい、わかりました、忘れます……あの写真って、お正月の初詣(はつもうで)の時に撮ったやつだよね?」

「……まこっちゃーん?」

「はい、忘れます」

「おしっこー!」


 押されて歩いていると、突然、おちびさんが叫んだ。


「ちょ、和人、ここでトイレか」

「おしっこー、でそうー!」

「出そうって、修ちゃん、トイレあるよね?!」

「そこにある。和人、ちょっとガマンしろよ?」


 修ちゃんはおちびさんを抱き上げると走っていく。さすが慣れているせいか、せまい廊下を走るのも早い。まっすぐ走って、突き当りを右に曲がっていった。


「トイレあったー!」

「そっちは届かないから無理だろ、こっちでしなさい」

「はーい!」


 そんな声が聞こえてくる。修ちゃん達の声がする方をのぞくと、おトイレがあった。男性用の便器がならんでいるけど、かず君が使っているのは、奥にある個室の洋式のトイレだ。


「考えたら、お昼ご飯食べた後に行ったきりだもんね」

「リンゴジュースを飲んだからな。よかったよ、ここでトイレと言ってくれて。上にのぼってからだったら大変だった」

「上にのぼるの?」

「行くつもりだけど?」


 上というのは艦橋のことだ。一般公開の時もめったに入れない場所だけど、今日はお茶会招待客でもあるから特別らしい。


「かず君、大丈夫かな? あがる時はともかく、おりる時」

「どっちも俺がだっこしていくよ。だからまこっちゃん、自分は自分で気をつけろよ?」


 つまり私のことまでは、かまってられないぞって言いたいらしい。


「わかったー」


 そんなわけで、私達は艦橋へとあがることになった。でもさ、いつも思うんだけど、なんで護衛艦の階段て、こんなに急で使いにくいんだろうね? そりゃ、京都の古い町家に住んでいたこともあるから、この手の急な階段には慣れてるけどさ。

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