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猫と幼なじみ  作者: 鏡野ゆう
帝国海軍の猫大佐 裏話

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43/55

一般公開に行くよ! in 帝国海軍の猫大佐 6

帝国海軍の猫大佐の裏話的エピソードです



+++++



和人(かずと)、なに食べる?」

「いくら!」


「かず君、なに食べたい?」

「いくら!」


「いくらばっかだね」

「いいのー!」


 おちびさんリクエストの、回るお寿司のお店にやってきた。で、さっきから食べるのは、いくらの軍艦巻きばかりだ。


「本当に好きだねえ、いくら」

「すきー♪」

「ま、大好きなものがあるって良いよね。それを食べただけで幸せになれるし」

「しあわせー♪」


 本当は寝ちゃいたかったんだけど、こんなに喜んでいるから、ま、いっか。


「まこっちゃんは? 流れてこないのはパネルで注文できるよ」

「私はサーモンさえあれば幸せ」

「炙りサーモン、うまそうだよな。これ、注文するか」

「しようしよう!」

「了解。あとは、トロサーモンと、ヒラメと」


 (しゅう)ちゃんがタッチパネルを操作して注文してくれた。


「お、プリンが流れていくよ、かず君」


 最近の回るお寿司屋さんはおもしろい。お寿司じゃないものもたくさん回っていて、カレーや天丼まであるんだから驚きだ。


「あ、副長?」


 奥の席に行こうとしていたお客さん達の中の一人が立ち止まった。


「ああ、伊勢(いせ)。お疲れさん。今日も問題なかったか?」

「はい。少なくとも自分がおりるまでは、艦内は問題なしでした。どうも、お久しぶりです」


 その人は私を見て頭をさげる。


「こんばんは」

「こんばんわー!」


 いつもの制服じゃなかったから一瞬、誰かわからなかったけど、この人は修ちゃんと同じ(ふね)に乗っている伊勢さん。修ちゃんが率いている分隊の海曹長さんで、あと、立入検査隊(たちいりけんさたい)の責任者さんだ。


「明日の一般公開に来られるんですか?」

「そのつもりです」

「お茶会もあるんですよね。艦長がゴリゴリ張り切って、コーヒー豆をひいてましたよ」

「そうなんですか。楽しみです」


 残念ながら、私は飲まないけどねー。


「お子さんは大人のお茶会、退屈でしょ。もしトレーニングルームでよければ、相手しましょうか?」

「良いんですか?」

「ええ。明日は特に展示があるわけでもないので、見張りに立つ以外は手はあいていますから。かまいませんよね?」


 伊勢さんは修ちゃんに確認をとる。


「うちの子だけじゃないかもしれないが?」

「かまいませんよ。自分権限で動かせる人手はありますので」


 それを聞いた修ちゃんが笑った。


「立検隊が幼稚園の先生役をするのか。ちょっと見たい気もするな。適当に連れ出すから頼む」

「了解です。ではまた明日」

「ああ。……なに? 俺の顔になにかついてる?」


 私と目が合うと、修ちゃんは首をかしげる。


「ヒヒヒッ」

「ヒヒヒて。気持ち悪いな。なんだよ」

「ほんとに口調も声色(こわいろ)も、普段と全然違うよね」


 とたんに修ちゃんはしかめっ(つら)になった。


「だからイヤなんだよ、まこっちゃんが仕事場に来るのがさー」

「いやー、でも、かっこいいよ、修ちゃん。制服を着た修ちゃんに、今の口調と声色(こわいろ)で話しかけられたら、私、卒倒しちゃうかも。他の幹部さんもあんな感じなんだよね? 皆、よく平気だよね?」

「あのさ。幹部がしゃべるたびに乗員があっちこっち卒倒してたら、仕事にならないだろ?」

「アヒャヒャヒャ、そりゃそうだ」


 想像したら変な笑いが込み上げてくる。


「アヒャヒャヒャじゃないから。なあ和人(かずと)、うちのママは変態ママかー?」

「へんたい?!」

「ちょっと、し――っ! そんな大きな声で叫ばないで」


 お寿司のレーン内にいた店員さんがこっちを見たので、あわてて口に指を押しあてた。


「そういう言葉を教えないでよ」

「俺が教えなくても、変態って言葉ぐらい自然に覚えるだろ?」


 また「変態」と叫ぼうとしたおちびさんの口をふさぐ。


「静かに、かず君。なんでパパをほめたら変態あつかいされるのか、さっぱりわからないよ。パパ、かっこいいと思わない?」

「おもう」

「でしょー?」

「でも和人は、アヒャヒャとか笑わないだろ?」

「どうかなあ。どうですか、和人君?」


 手をマイクにして質問をしてみる。


「……あっひゃっひゃひゃっ?」

「ほら」

「ほらじゃなくて。それ、どこかの時代劇のマネだろ」


 修ちゃんはあきれたように笑った。


「ほら、まこっちゃん。食べたかった炙りサーモンとトロサーモンが来たぞ。和人は? なにが食べたい? もうデザートいくのか?」

「いくらとプリン!」

「わかった、両方な。じゃあ、まとめて頼むぞー」


 お仕事モードの修ちゃんと、おうちモードの修ちゃんの違いって、本当に面白い。本人はそれを私に見られるのが、非常に気恥ずかしいらしい。


―― かっこいいからほめてるんだけどなあ…… ――


 昔は先輩達に冷やかされるのがイヤとか言っていたけど、年をとって偉くなると、また違った理由でイヤになるらしい。偉くなって威厳が出てきて、それはそれで良いんじゃないの?って思うんだけどな。


―― さすがにヒヒヒとアヒャヒャヒャはまずかったか ――


 少しばかり素直に感情をあらわしすぎたかもと、少しだけ反省した。あくまでも少しだけだけどね!


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