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猫と幼なじみ  作者: 鏡野ゆう
帝国海軍の猫大佐 裏話

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39/55

一般公開に行くよ! in 帝国海軍の猫大佐 2

帝国海軍の猫大佐の裏話的エピソードです



+++++



 (しゅう)ちゃんが私達が行くことに乗り気でない理由の、「気恥ずかしい」とは一体どういうことなのか。


「なにが気恥ずかしいのか、さっぱりだよ」

『わからなくていいよ』

「え、そんなこと言われると、よけい知りたくなる」


 わりかし真剣に理由を知りたい。修ちゃんは絶対に口を割りそうにないけど。


『もー、そんなことどうでもいいから、和人(かずと)と電話かわって』

「わー、息子をダシにして逃げやがりましたよ、この人。かず君、パパが電話でお話したいって」


 おちびさんはパパとお話ができると聞いて、喜んですっ飛んできた。取り残された猫達は不服そうだ。スマホをおちびさんに渡し、私は猫の相手をするためにテレビ前にすわる。


「ちょっと、だからって、そこでバリバリしないの! もー、せっかく新しくしたばかりなのに、ふちっこがボロボロじゃん!」


 カーペットの危機再びで、二匹のバリバリに声をあげる。この二匹には困ったものだ。やはり、つけた名前がいけなかったんだろうか。母親が「ピエール」「マリアンヌ」と名づけた子達は、大人になるまで野良生活をしていたのに、実に物静かで優雅なのだ。それに比べて、我が家のニャンコ達ときたら。


「もー……ほら、猫じゃらしで遊んであげるから、バリバリしないで」


 楽しそうに話しているおちびさんの声を背中に、両手に猫じゃらしを持って無心で振る。二匹が相手なので二刀流だ。普段は二匹でお留守番をしていることが多いので、休みの時はこうやって全力で相手をするけど、けっこう疲れる。だがそんな人間のことなんて、猫達はおかまいなしだ。


「ほらほらー、シイタケもマイタケも、ジャンプですよー!」

「ママ、バアバみたいに猫使いしてる」

「え、パパ相手に実況なんてしなくていいよ、かず君。それと長く話すのはダメだよ」

「いーやー! まだお話するー!」


 スマホを持ったまま台所に逃げていった。


「修ちゃん、適当に切り上げてね! って、今の聞こえたかな……ま、いつものことだから、適当に切ってくれるよね」


 キッチンの影から、楽しそうにおしゃべりをしている声だけが聞こえてくる。どうやら見学の話題にもなったようだ。


「ママー?」

「なにー?」


 そろそろ猫じゃらし係はお疲れですよと言いたくなってきた時、おちびさんから声をかけられた。


「パパが紅茶は何がいいのーって!」

「なんでもいいよ。艦長さんの顔がつぶれない程度のもので」

「……わかんないって!」

「スマホさんかもーん!!」


 おちびさんが小走りにやってきて、私の耳にスマホを押しつける。


「もしもしー?」

『ごめん。俺、自分が飲まないから、紅茶のことはさっぱりなんだけどな』

「どこのでも良いけど、ティーバッグはまずいよね?って話なんだよ。たしかコーヒー豆は、艦長さんがコーヒーミルでひいているんだよね?」


 要はバランスの問題ってやつなのだ。


『ああ、そういうことか。葉っぱにしろってことでOK?』

「うん。それと、私以外にも紅茶がよいっていう人が出るかもしれない。だからダージリンで良いよ。私が好きなアールグレイは、好き嫌いがあるから。メーカーに関しては、特に指定はないかな。買いに行った先で見つけたものでOK」

『了解。ちゃんと買っておく。これってきっと自腹だよなあ……』


 紅茶ってけっこう高いよなって愚痴っている。


「艦内の予算でおりないの? イベント用に艦内予算で缶バッジを作ったよね?」

『まあ一応、福利厚生で申請してみる』

「もしダメなら、私が買い取るから。あ、ポットある? ティーカップは?」

『そのへんは来客用のがあるから問題ない』


 さすがに艦長さん主催のお茶会で、自宅みたいに急須にマグカップというわけにはいかない。コーヒーカップがあるのはわかっていたけど、ティーカップもあると聞いて一安心。ああ、もう一つ、忘れるところだった。


「お茶菓子、もっていったほうが良い? そっちでも一応は用意するんだよね?」

『そうだな。前の日にこっちに来るなら、頼まれてほしいかな』

「わかった」


 だったら紅茶も一緒に買えって話なんだけど、それとこれとはまた別ってやつなのだ。


「当日、お天気になると良いねー」

『そればかりは、お天気の神様しだいってやつだな。乗ってくる電車が決まったら、また連絡いれて。駅まで迎えに行くから』

「そうする。じゃあもう一度、かず君と変わるね。そのまま切っちゃって良いから」

『了解』


 パパとおちびさんのおしゃべりタイムが再開。そして私は、猫じゃらし待機をしている二匹を見下ろして、ため息をつく。


「もー……今、十分に猫じゃらしを楽しんだよね? まだするの?」


 二匹は何か言いたげな顔をしながら、私の膝に前足をかけた。その顔つきは、ご満足には程遠いと言いたげだ。もう少し我が家のお猫様にご奉仕しなければ、いけないらしい。


「かず君の電話が終わるのが先か、シイタケとマイタケが満足するのが先か、どっちだろうねえ……」


 そんなわけで、再び二匹の猫と猫じゃらしの舞を始めた。

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