4.魔法とは何なのか
これまで現実的解釈で中世ファンタジーを皮肉ってきたが、ここで最大の問題に直面する。魔法だ。
ファンタジーといえば魔法という固定観念を私はどうしても捨てきれない。これら現実的にありえない現象を全て廃そうとすれば、それはファンタジーではなくなってしまう。ここで私は一つの妥協をすることにする。ファンタジー世界には魔法がある。問題はそれをどうやってリアルに描写するかだ。魔法の始まりとは何なのか。原理は?何ができるのか?疑問は絶えないが私は以下のように考えた。
魔法は未知のエネルギーを様々な事象として変換する人間の機能である。
これだけだと魔法なんてそんなもんだろ!と誰かに言われそうだが、これだけでも現実に当てはめて考えると大変なことだ。2018年現在、発電は火力発電が主とされているが、人道的配慮を行わなければ間違いなく人間発電機が発明されるだろう。空に浮くことだって簡単にできる。重力と反対方向にエネルギーを生み出してしまえばいいのだ。もちろんうまく飛行するためには正確な操作が必要とはなるが。とは言え、この能力を物語の住民に与えることによって世界はかなり変わるだろう。魔法というスパイスによって人々の暮らしもだいぶ変わるはずだ。人々が空を飛ぶ魔法が使えるなら梯子などは使われないかもしれない。水を生み出せるものがいるなら井戸など作られないかもしれない。魔法がある世界をリアルに描写するならば、これらの小さなことにも注意を向けなければならない。多くの人が期待する魔法の戦闘ばかりに目を向けていてはこのようなことには気づけない。だから私は多くの人が「良い」と評する小説を見ても首を傾げてしまうのだ。
愚痴はこれくらいにして、話を進めよう。
魔法が未知のエネルギーを変換する能力であることは決定した(私の中で)。これ以上考えを巡らせても答えは出ないだろうし、科学に疎い私には随分と酷な話だ。
では魔法の始まりはどのようなものだろうか。良い案が思い浮かばないので、ここは進化論パワーを借りることにする。昔々、ある村の人間が危機にあった時、突然変異で魔法を使うことができるようになったとするのが妥当だろう。そうするとその人間は村の人々から奇異な目で見られるようになり、村を追い出されてしまう。いや、そもそも魔法を無自覚に行使したことにより変換がうまくできず死んでしまうのが普通だろうか。どちらにしても魔法使いは呪われた(もしくは病気の)人間であり、いずれ死んでしまうという風評が流れてもおかしくない。魔法を扱える人間が魔法を使わないでいると体に未知のエネルギーがたまり続けてしまい、何かしらのアザができるというのはどうだろう。そうすることで病気らしさを演出できるし、それを助けてくれる流浪の魔法使いなんてのも物語的には面白い。まぁ、何にしろ魔法が初めから全ての人間に受け入れられるはずがないという話だ。しかし、時が経てば奇跡の力として魔法使いを崇め奉る時代がくるかもしれない。魔法を始まりとして宗教が起るかもしれない。結局は著者の想像力次第だが魔法が存在するだけでたくさんの物語を描けそうだ。