2014年7月20日
のらりくらりとほどほどに、それなりに生きてきた真琴。気付けば20歳の誕生日が間近に迫る中、大病にかかってしまう。死の気配が近づくなか、「もし、過去に戻れたら…」と口にしてしまう。突然の頭痛に襲われ気がつけばー…あれ?周りの人達大きくない?
と、いうか、俺、小さくない?
過去に戻ってしまった真琴。父と母の離婚、叶わなかった片思い、兄弟との不仲、そして何より大病にかからないための人生設計。
色々目標はあるけど、真琴3歳。立派な大人を目指します。
誰もが一度は考えたことがあるだろう。
「もし、過去に戻れたら」
「もし、あの時からやりなおせたら」
人は過去に戻れない。
それは誰もが知っているのに
なぜ荒唐無稽なことを考えてしまうのか。
俺の場合は死にたくないからだ。
「高橋さーん、お薬飲みましたかー?」
個人用の病室にはもう揃ってないものなど何もない。
最新のゲーム機に漫画の最新巻。
雑誌に音楽プレイヤー、小説たち。
全て病室で退屈な思いをしている俺のために買い与えられたものだ。
入院生活にもすっかり慣れたもので、
去年の10月に仕事場で倒れてからもう9ヶ月を過ぎた。来月で2桁の大台に乗る。
やったね。
という気分のはずもなく、
正直来月を迎えられるかどうかも怪しいくらいの病状らしい。
来月には俺の誕生日も来る。
今年で20歳になる俺は普通科高校を卒業し、
2年制の専門学校に1年間通ったのち、
教師と大げんか。
あっさりと辞めてしまった。
就職担当の先生とはとても仲が良かったため就職は先生のおかげでなんとかなった。
いや、なんとかなっていた。
仕事中に倒れ、しかも不治の病にかかった俺をずっと雇ってくれているはずもなく、
入院も半年を過ぎたあたりでめでたく解雇となった。
今日は7月の20日。
京都府特有のジメジメとした夏のクソ暑い気候を病室で体感していた。
「あっ、もう、高橋さん。なんで窓開けてるんですか。冷房逃げちゃいますよ?」
きゅるきゅると音を立てながらせっかく開けていた窓を閉められる。
「…すみません」
病室に篭りきりだと気も益々滅入る。
加えてずっと冷房にあたっていると、
なんだか、暑いであろう外とは違うこと、
出れないことを嫌でも感じさせられるのだ。
「あっ、お薬はーーー、ちゃんと飲んでますね。よろしい、じゃあ昨日も言った通り今日は11時から検査ですから、食べ物ももちろん水も飲まないようにしてくださいね。」
年配の看護婦さんにそう言い含められ、
俺は適当に返事をして看護婦さんを病室の外に追いやった。
あの人は少し苦手なのだ。
口うるさい、もとい、口うるさかった母に少しだけ似ていて。