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C# -しーしゃーぷ-  作者: 穏乃
結成は唐突に
6/10

6# ‐結成は唐突に6‐

本番当日。

この一週間ずっとギターの練習は欠かさずやってきた。静もずっと練習していた。全然自身はないけれど、それでも今日が成果を見せる日、これで認めてもらわないと私たちは、私たちの物語はここで終わる。

 四月十八日、私は授業が終わるのと同時にいつも通り音楽室へ向かった。もう日常になりつつあるこの風景、もしかすると明日からこの日常がなくなるかもしれない。そう考えるととても怖い。

「早いね、篠」

 最初に鉢合わせたのは静かだった。いやまあ同じクラスなんだから一緒にいけよってなるけど私は割と一人で音楽室まで行くことが多いから不思議ではなかった。静のカバンに刺さったドラムスティックを見るこの風景も私の中ではすでに日常と化していた。

「遅い!」

 私や静よりも早く到着したのは穏乃だった。と言っても穏乃の今来たばかりでまだベースとカバンを置いていなかった。

「ごめんごめん」

 いよいよ本番、緊張して心臓がどきどきしているのがわかる。演奏会は十七時からこの第二音楽室で行われる。審査をするのはこの話を持ち出してくれた茉野さん、そして生徒会長と学園長の三人。茉野さんはともかく生徒会長と学園長、この二人のどちらかに認めてもらえば創部はほぼ確定と言っても過言じゃないと私は考えている

「静も篠も、一回通しで練習しとこ」

「うん」

「おう」

 私たちの物語の命運をかけたライブが今始まろうとしている。



十六時三十分、生徒会長や学園長たちよりもいち早くやってきたのは茉野さんだった。

「ドラムの調整、いる?」

 せっかくなのでお願いした。私たちの中でドラムのチューニングができる人がいないのでとてもありがたいことだ。でも茉野さんはどうして私たちをここまで助けてくれるんだろう。どうして何度か顔を合わせただけの私たちに生徒会に掛け合ってまでこんな機会をくれたんだろう。

「茉野さん」

「なに?」

 茉野さんはその長くきれいな黒髪を軽く書き上げる。

「どうしてこんなに私たちに協力してくれるんですか?」

 茉野さんは少し考えるような表情をするもすぐにいつも通りのむっとした顔に戻り背を向けながら窓際の方へ歩きながら口を開く。

「やりたいことがあるのにできないって、私はいけないことだと思うの。いけないことを正すが生徒会の務めだと私は思う」

 それが理由じゃダメ?と私の目をまっすぐ見つめがら茉野さんは答えた。十分すぎる答えだった。

茉野さんがドラムの調整をしている間にどうやら時間になったみたいで、生徒会長と学園長が音楽室に入ってくる。二人はあらかじめ用意しておいた椅子に座ってもらう。茉野さんもドラムの調整が終わり、静かに椅子に座る。

「さてと、この一週間の成果を見せてもらいましょうか」

 私はギターの準備をするが、緊張しているのか酷く手が震えている。こんなに緊張するのは多分小学生で初めての『アレ』の時以来だ。あの時の私も酷く緊張していたのは今でも鮮明に覚えている。

「篠」

 振り向けばすでに静と穏乃は楽器の準備が整っていた。みんなの姿を見れば自然と私の震えも治まってくる。

「やるよ、二人とも!」

 静のスティックの叩く音と同時に私たちの初めてのライブが始まった。私と静と穏乃の奏でる音楽を一つの音楽を作っていく。いける、この調子ならこのままライブが成功だ。

「あ…」

 静のドラムの音が急になくなる。焦って振り向けば静は青ざめた表情でスティックを持つ手を震わせていた。おそらく途中で覚えた譜面が真っ白になってしまったのだろう。このままじゃ失敗に―――

「篠!」

 穏乃の言葉で気づいた。私も静かにつられて間違っていることに。穏乃は私たちのフォローをしようとするが、まだ初めて一週間の私たちには元に戻すことなんてできなかった。




絶望的だった。私たちの物語がここで終わってしたのだから。私だけじゃなく静も穏乃も苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

「…残念だけどこの結果じゃ―――」

「待ってください!」

 このまま終わりたくなかった私は反論の声を上げようとした。だけど無駄だってなんとなくわかっていた。でも、それでもここで終わりたくなかった。

「会長、私からもお願いします」

 そういって椅子から上がり頭を下げたのはこのチャンスを与えてくれた茉野さんだった。

「この人たちがただ楽したいから軽音部を作ろ打ちしてるようには見えません」

 そう。うちの学校は部活動が強制されているため、たまに部活の創部申請をするだけして活動しない人たちがいるらしい。創部手続きが複雑になったのもそれが原因だと聞いている。

「いいんじゃないかしら」

「学園長!?」

 そういったのは学園長だった。

「で、でも活動内容はともかく顧問が決まってませんし」

 そいえばそうだった。練習のことばっかりに気を取られていて顧問のことを先生に頼むのを忘れていた。

「顧問の先生は私が用意しましょう」

「だとしても人数が…」

 え、人数?

「ちょっと待ってください、人数は足りてるはずですけど!」

 最初に反論したのは穏乃だった。確か創部には最低三人以上、足りないことなんてないはずなのに。

「そういえば新入生には伝えてなかったわね、今年から最低人数が四人に変わったのよ」

 新入生だけで創部するなんて思ってなかったからと、生徒会長は付け足す。そんなの今更ひとり集めてこいだなんて無理だよ。

「だったら私が入部します」

「茉野さん…!?」

 それは突然で唐突の発言だった。声の主は何回確認しても茉野さんだった。私だけではなく穏乃も静も、生徒会長も驚いた表情をしていた。

「…茉野さん、自分の言ってる事が分かってるの。生徒会の人間がそんな道場で部活に入るようなこと…」

「同情なんかじゃありません」

 やれやれと茉野さんは首を横に振ればあきれた表情をしながら私たちのことを見つめる。

「彼女たちの音楽を、もっと近くで聞いていたいから」

 だから、入部する。と。

「はぁ、仕方ないわね」

 そう口にすれば生徒会長は持ってきていたのであろう私たちの書いた創部届けに生徒会、と書かれたハンコを押す。穏乃と静はポカーンとしていた。もちろん私もだ。今失敗した演奏から私たちの物語なんてここで終わってしまうと確信していたから。体が震えている。

「あの…」

 茉野さんはこちらを向けばどことなく読み取れない表所で私たちに言葉をつづる。

「よろしくね、軽音部のみなさん」 





「しーしゃぷ…?」

 生徒会長は創部届けに書かれた活動内容を見て首をかしげる。楽器の練習をし、しーしゃーぷとして活動していく、そう書かれていた。

「篠、静、穏乃。三つのし、それから半音高めるシャープ。未熟ながらも自分たちを高める意味でのシャープらしいわ」

「でもそれだと茉野さんはしじゃないから仲間外れじゃ…」

「仲間はずれじゃありませんよ」

 学園長の言葉に生徒会長が疑問を抱くような表情になる。

「だって、Chikaさんじゃないですか」



とりあえず一話終わりです。

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