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C# -しーしゃーぷ-  作者: 穏乃
結成は唐突に
5/10

5# -結成は唐突に5-

私と穏乃と静はすぐに集まり、茉野さんの提案を2人に話した。生徒会に私たちのことを認めさせること、そのためにライブをすることを。そのために一週間で初心者の私と静かが演奏できるようにならないといけないことを。

「篠、その話って信じていいの?」

最初にその話を疑ったのは穏乃だった。まあ最少疑うよね、ダメだって言われてたのに演奏するだけ部活の創設を認めてもらえるかもなんだから。ただ穏乃はともかく私と静は楽器なんて全く演奏したことがない。だからこの一週間で演奏できるようにならないのだ。

「いや無理でしょ」

静諦めるの早すぎ。

「でもほら、私音楽の評価2だったし」

そういえばそうだった。静は何というかすごく音痴なのだ。だから中学の時はいつも音楽の授業で居残りさせられていたのを思い出した。

「嫌でも歌うわけじゃないから大丈夫だよ!」

とは言いつつも私も大して音楽の成績が良かったわけでもない。不安がないわけじゃない、でもやるって決めた以上やりきらないわけにはいかないんだ。

「まあ普段の音楽の授業と楽器の演奏なんて関係ないから、気軽にやっていこ?」

気軽にやりたいところだけど、期間は一週間しかない。今からでも練習しないと―――

「篠、静、焦らない」

焦る私たちを制止したのは穏乃だった。

「まず二人は帰ってこの本を熟読。練習は明日から考えるから」

いい、絶対一文字も読み漏らさず頭に入れてくること―――蛙まで何回も耳にタコが出来てしまうくらいに言われ続けた。そんなこと言われなくてもわかってるつもりだ、私だってこのまま終わりたくなんてないから。




それから私は家に帰ってから穏乃から借りた初めてのギターというタイトルの本を端から端まで何度も何度も読み返した。今まで本気になれなかった分、本気で何かに取り組んでみたいという気持ちが止まらなかった。

「静は私より呑み込みが早い、置いてかれないようにしないと」

 いつもそうだった。体育のスポーツでも私よりもいつも早く静の方が早く上達する。だからそんなことにならないようにしないと。実際に音は出せないからギターの音は慣らさずに何度も握ったりして明日に備えた。

 朝が来て昼になり放課後が訪れる。そんな当たり前の日常だけれどこの時を私はずっと待ち望んでいた。私は終礼のチャイムとともにカバンとギターを持って音楽室に走る。音楽室は先生や生徒会の人に頼んで今回の演奏会が終わるまでは使わせてもらえるように交渉しておいた。音楽室のドアを開けばもうすでに静と穏乃が楽器の準備をしていた。静は学校に会った備品のドラムの位置を調整、穏乃はベースのちょぼみたいなのをいじっていた。

「穏乃、それは何?」

「これ?これはチューナーだよ?」

 チューナー…?なんか昨日読んだ本にチューナーのことが書かれてたと思う。確か音を正しく合わせるのに使うやつだったかな。細かいことまではあんまり覚えてなかったや。

「まあ私はチューナーなしでもチューニングできるっちゃできるんだけどもね」

そういえば穏乃は小学生の頃からベースをやってるんだった。音合わせがこのチューナーなし出来るのがすごいことなのかよくは分からないけど、私にとっては何もかもがすごいように感じる。

「はい」

穏乃は私にベースの先っちょについてるチューナーを取り外せば、私に差し出してくる。

「篠もこれヘッドにつけてチューニングして、練習するわよ」

「ねえ穏乃」

私たちの言葉を遮ったのは静かだった。

「ドラムってどうやってチューニングするの」

「ドラムのチューニングは私もちょっと…ベースとギターしかいじったことないし」

 そういいながら穏乃は首を横に振る。このドラムは長い間音楽室の準備室に放置されていた使い古されているものだ。もちろん音があっていない。でも今ここにいるメンバーでドラムのチューニングなんて私と静は当然、穏乃にもできなかった。ちょっと絶望的な状況だ。

「少し失礼」

 そう占めていた音楽室の扉をノックしてから入ってきたのは生徒会に取り次いでくれた茉野さんだった。茉野智佳、この人がいなければおそらく私たちは今回のチャンスすらも与えてもらえなかったんだと考えるとすごい恩人である。たとえ今回の演奏会が成功しようが失敗しようが。

 「来週の演奏会の件なんだけどね―――ってどうしたの深刻そうな顔して」

「あ、茉野さん。実はドラムのチューニングできる人がいなくて…」

 茉野さんはそれを聞けば退屈そうな顔から一転して興味津々の顔になりドラムの方へ足を運ぶ。

「チューニング…ねえ」

「茉野さん、ドラムのチューニングは初心者の出来るようなことじゃないから―――」

「出来たわよ」

「えぇ!?」

 穏乃がドラムのもとへより何度か叩けばほんとにできてる、と言葉をこぼす。それだけすれば茉野さんはまた退屈そうな顔をしながら音楽室を出ていこうとする。

「待って!ドラムやったことあるの?」

 茉野さんはにらみつけるような目つきでこちらを振り返る。

「ないわよ、楽器とか興味ないし」

 それだけ言い残して茉野さんは音楽室から去っていった。茉野智佳、あの人はいったい何者なんだろう。


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