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C# -しーしゃーぷ-  作者: 穏乃
結成は唐突に
4/10

4# -結成は唐突に4-

突然の知らせ、それは私たちの夢を壊すようなそんな知らせだった。

部活設立届けが受理されず却下されてしまった。それは私たちにとって絶望的な知らせだった。

「な、なんでですか!」

最初に突っかかったのは穏乃だった。

「理由その一、あなた達顧問は?」

「あ…」

穏乃はその言葉を聞いた瞬間口が開かなくなった。そう、私たちは部員集めに没頭しすぎて大事なことを忘れていた。顧問の先生がいなければ部活として成り立たない。

「理由その二、活動内容が明確にされていない」

ぴらぴらと彼女は設立届けを見せた。活動内容にはバンド活動と書かれている。

「バンド活動だけじゃなくて練習場所や練習方法、その成果をどうやって発表するのか。ちゃんと詳しい内容書いてね」

そう設立届けと一緒にいい渡せば彼女は去り際に首だけこちらに向けて立ち止まる。

「因に一度設立申請を却下された部活は生徒会一人以上の同意がなければ受け取ってすらもらえないからね」

と言い残しコンビニで出会った彼女は音楽室から去っていく。私たちは渡された設立届けを片手に呆然としていた。生徒会一人以上の同意がなければ設立届けを受け取ってもらえない。それはつまり生徒会の一人に認めてもらえなければ軽音部は設立できないということだ。まだ入学した手の私たちに生徒会の知り合いなんていない、つまり軽音部の設立はほぼ不可能に等しい状況だった。



あれから一旦私たちは解散した。それぞれこれからどうするべきなのか。穏乃は軽音部がダメなら学校外でバンド活動をやって行こうと言ってくれたが、部活じゃないと学校生活の思い出にならないと思って私は断った。と言ってもこれからどうすればいいかなんて私にわかるわけもなく学校の帰りに近くの公園に立ち寄っていた。だけどそんなことがどうでも良くなってしまうくらいの光景が公園に入った瞬間に目に入る。さっき私たちに設立却下の説明にきた生徒会の人だ。名前はえっとーーー

「まの先輩…?」

公園に集まっていた猫に囲まれ楽しそうに猫を撫でていたまの先輩は私の声に気付きこちらを向く。本当に見とれてしまうほどの綺麗な髪だ。

「まりの」

え?

「茉野って書いてまりのって読ませるのよ」

「茉野先輩…?」

はぁ、と茉野先輩はため息混じりの私に説明するのめんどくさいと顔に書いてるような表情をする。いや実際書いてるわけじゃないけども。

「私一年生だから、先輩じゃない」

「え」

驚愕した。コンビニで出会った時(茉野さんが覚えてるかは知らないけど)から年上の雰囲気を出していたこの人が同い年!?

穏乃も結構大人の魅力があったけど、それ以上に魅力の塊のこの人が同い年!?

「あ、でも」

茉野さんは付け足す。

「私諸事情で学校行ってなくてね、今二十歳なの」

そういう人がたまにいるって話は聞いたことがあったので私は深くは聞かなかった。高校自体は何歳でも入学できるのであり得ない話ではない。でも二十歳のお姉さんか、ほかの子達とは違う雰囲気な理由はそれだったんだ。

20歳ってことは高校生だけどお酒も飲めるしタバコも買えちゃう歳ってことなんだ。

そりゃ同い年にしてはすごい魅力を感じたわけだった。だって同い年じゃないんだもん。ーーーじゃなくて、もしかしたら茉野さんならわかってくれるかもしれないという儚い希望を抱きつつ私は息を整える。

「茉野さん、私達の部活設立申請を同意してもらえないですか…」

茉野さんは目をつむり間を開けてから目を開き私の顔を見つめる。

「いや私個人としてはそりゃあなたたちの意見を尊重したいわよ?でも生徒会の1人としては…ね?」

茉野さんの言いたいことはなんとなくわかる。一生徒としてはやりたいことがあるのなら、やれば?って思うのが普通だと私も思う。だけど生徒会の1人である以上そんな考え方ができないのだろう。私達に肩入れするわけにもいかない。

「ほかの生徒会の人にもあなたたちのことを認めさせることができたのなら、或いは」

「それって、生徒会の人の前でライブをするってことですか」

「ついでに言うと顧問にする先生にもね?」

そういえば生徒会に認めてもらう方法ばっかり考えてて、設立届けに書く詳しい活動内容も書いてないし、顧問の先生も探していなかった。でももしこのライブが成功すれば生徒会にも認めてもらえて顧問の先生もつくかもしれない。試して見る価値はあるのかもしれない。でも穏乃はともかく私と静かは演奏もしたことがない素人だ。

「もしやるなら一週間、かせいであげるわ」

一週間、その間に一曲でも演奏できるようにーーー

「やります…いいえ、やらせてください!」

やれるかどうかじゃなかった、ギターを買ったからでもない。直感だったけど、この話にならないと私の物語が始まらない。そんな予感がしたから。

「わかった、生徒会と掛け合ってみるわ」

はい、と私は返事をすればすぐさまポケットから携帯を取り出しながら公園を駆け出す。携帯の電源をつけ、穏乃に連絡を取るために。期限は一週間、それまでに何か一曲演奏できるようにならないと私達の物語は始まらない。

「私やる、やってやるんだ!」

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