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C# -しーしゃーぷ-  作者: 穏乃
結成は唐突に
3/10

3# -結成は唐突に3-

学校が終わったのが12時過ぎだった。早いように感じるかもしれないけど、入学してすぐは多分どこもこんなもんだと思う。入部届けやらなんやらを出すのに少し出るのが遅れてしまいなんやかんやで13時ごろにこの楽器屋さんに到着したのだけれど、宮本さんと静は恋と時間スティックを選ぶのに夢中になってて私は暇すぎて近くのコンビニで時間を潰す羽目になっていた。楽器みとけよって思うかもしれないけど素人の私がなにを見てもちんぷんかんぷんなので、こうしてコンビニで有意義な時間を過ごしてる方がいいに決まってる。そうに決まってる。適当に雑誌を立ち読みしてから私は飲み物を買おうとジュースコーナーに足を運ぶ。

唐突かもしれないがそれは綺麗な黒髪だった。同性である、いや同性であるからこそ見とれてしまうほどに美しい黒髪。その長い髪をシュシュでふんわりと肩におろした美しい女性の服装は私と同じ七海学園の制服だった。学校にこんな綺麗な人がいたんだと思いながら私は午前の紅茶に手を伸ばす。すると女性もちょうど午前の紅茶を撮ろうとしたのか私の手とぶつかり、触れ合ってしまう。

「あ、の…すいません」

ぶつかった手を私は赤面しながら握りしめた。女性の手が触れたことになぜかときめきを感じてしまった。

「…いえ」

女性は一礼すると午前の紅茶を持ってそのまま会計の方へ向かう。振り向き側にカバンについていた定期券がちらっと見えた。駅はそんなに遠くはなかった。名前はーー茉野智佳…まのちかと読むのだろうか。私はそんなことを考えながらコンビニを後にした。



「いや篠、ほんっとごめん」

私が不機嫌な理由はどう考えてもこの二人にある。今16時である。宮本さんと静はスティックを選ぶのに約二時間も時間を消費してしまった。ここで忘れているかもしれないが、ここにきた本来の目的は私のギターを購入するためである。どうせ二時間使うなら私のギター選びに二時間かけたかったところだ。といっても仕方ないので早速私は宮本さんとギターの並べられているところへ足を運ぶ。

「ベースもそうなんだけど、最初は愛着持つために値段じゃなくて好きな形のギターを選ぶといいよ」

「好きな形…」

たくさんのギターをチラチラと眺めながら私好みの形のギターを探す。いろんな種類のギターを眺めていて一番いいなと思った形は今のところはストラトタイプのギターだった。シンプルで可愛い形をしていた。特に水色のやつが可愛くて私は足を止め、そこから動かなくなってしまう。

「フェンダー・ストラトキャスターか、初心者には妥当なモデルかな?」

横で宮本さんが何か言ってるが私には聞こえなかった。このギターに私は夢中になってしまっていた。まるで生まれてきたときからこのギターと出会うことが運命付けられていたかのように、私は引き寄せられてしまう。

「私、このギターにする」

一目惚れというやつなのじゃもしれない。私はために貯めたお小遣い全てを使い切りフェンダー・ストラトキャスターのギターとケース、弦を購入する。胸の高まりがおさまりきらなかった。今からでもギターを弾きたい気分だった。購入したギターをケースに入れてもらい、私は満足げな顔で肩に背負う。

「今、すごいテンション高い」

「そりゃ初めてのギターだもん、嬉しいよ」

宮本さんは素っ気なさそうな顔だったが、どことなく笑みを浮かべているのがなんとなくわかった。きっと宮本さんも初めて自分のベースを買ったとき、今の私と同じ気分だったんだろう。

「ちょっとお茶していこっか」

「いいね!」

静の提案で私たちは近くにあるカフェでお茶をすることになった。すごく気分のいい私はお金がないのに二人におごってやりたいくらいの気持ちだった。そのままお店を出てわたしと宮本さんと静はカフェで定番のお店へと向かう。



次の日、私たち新生軽音部は第二音楽室に集まっていた。音楽室の奥に隠されていたドラムセットを引っ張り出してくる作業から始まった。まずはドラムをセットし、私と穏乃が演奏できるスペースを作る。あ、なんで昨日まで宮本さんだったのに穏乃なのかというと。

「二人とも名前で呼び合ってるのに私だけ苗字なの嫌だから、名前でいいよ」

とのこと。

そしてずっと練習ばかりだとしんどいのでちゃんと休んだり飲み物や食べ物を置けるように学校の机をいくつか並べて椅子も置く。最初は何もなかった第二音楽室が徐々に私たち軽音部の部室へと生まれ変わって行く。軽音部設立2日目はほとんどが掃除で終わってしまう。時折静の持ってきたお菓子をつまみながらおしゃべりを交えたりもしたので有意義な時間を過ごした気分だ。

「そろそろ下校時間だし、帰ろうか」

穏乃は一息つけば椅子から立ち上がり鞄とベースを持って帰る準備をする。もう18時前で下校時間ギリギリだった。そろそろ先生が見回りにくるので早めに音楽室から出ないといけないと思い私も支度をする。そう思った時だった。

「あの」

声のした方向に振り返る。

「軽音部ですよね。部活設立申請、却下されたことを報告に上がりました」

それは昨日コンビニで出会った綺麗な女性と、却下というハンコを押された私たちの部活設立届けだった。

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