第一話 「厨二病は我々の生きた証なのさ。」by我が友人
とーじょーじんぶつしょうかい
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黒い人…………黒鬼という名前。めちゃくちゃキザ。えらそう。でも三枚目チック。後めちゃくちゃ強い。チート。
ロリ…………リンという名前。「薬草を見分ける程度の能力」を持つ。黒鬼の弟子。苦労人。弓が使える。アチャ子。あと黒髪。
カタリベ…………この物語の解説者。もっと判りやすく言えば作者自身。物語に干渉することは無く、ただ観測するのみの存在。その割にはモノローグに一々茶々を入れてくる。
「…………という夢を見たのでした。」
「良かったな。これでお前もポエマー(笑)だ。」
「だから夢だっていってるでしょうが!!」
とある森の中、辺りを囲む楠や椎やならの醸し出す心地よく冷えた空気を浴びながら、黒ずくめの男()と、未だあどけなさの残る少女が、下らない会話を繰り広げながら、壮絶な戦闘を展開していた。
既に周りの木々は無残に破壊され、或いは半分以上が燃え尽くされ、地面には男子高校生のニキビ面の様にボコボコのメッタメタにされていた。
どうでも良いけどマイナスイオンって何だよ何で物理的存在も確かじゃないもんが身体に良いんだよ疑似科学もいい加減にしろよ!
「美しく輝け我等が厨二の星(笑)」
「ああああああああああああああああああ五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿ーーい!!!」
直も煽り続けるその男に、少女は両手の掌から光球を生み出し、次々に投げ付ける。
しかし冷静さを失った攻撃では、数で応戦しようとも意味は無く、男は体軸をずらすのみでするりとかわした。
背後の森に吸い込まれていった珠は、爆発を起こしながら木々をなぎ倒して行く。
「エクスガルヴァイン(属性:聖魔・1万光年分の強さ・時に折れる)」
「■※☆★△〒§%#▲△#!!!」
最初の台詞がアレだったとは言え、何故少女はここまで取り乱しているのだろうか。
それは全て、男の手の中にある、男が今開き朗読する、右手に持った、表紙がこれまた黒に染められた大学ノートのせいであった。痛い痛い、マッマ心がイタいよ。
ところでこないだ、小学生の時に書いたさいきょうのけん()の絵が出てきたんだが、軽く泣きそうになった。消防の時からこれかよ俺。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
もう何処から発声しているのか判らない、形容しがたい絶叫をあげながら、鼻筋の通った顔を怒りと羞恥に歪ませながら、少女は目の前の男に突撃した。
墨汁で浸したようなフロックコートに身を包み。
何の光も反射せず、只吸収するばかりの黒髪を右目を隠すように垂らし、猛禽類の様な瞳孔を持つ左眼を愉悦に歪ませるその男。
可憐さの欠片も無い、武骨な突撃を鼻で嘲った彼は、至って軽やかに、その襲撃をかわした。
「…………ッアグ………!」
それだけでは済まず、彼は勢い余ってバランスを崩す少女の臀部を、一応柔らかく蹴り跳ばす。やっぱり女の子には優しくしないとね(ゲス顔
頭が真っ白になっていた少女は、瞬時に到来した奇襲に対応できず、受け身さえとり損ね、その端麗な顔を地面にめり込ませた。
「返し、返してッ!!」
「だが断る。」
四肢を地面に投げ出したまま首をもたげ、泣き顔一歩手前の表情で、少女は男に懇願する。すごく、興奮する情景だ。
しかし男は意に介さず、向こうの景色が透けようかという程透き通る病的なまでに白い肌と対照的な、鮮やかな紅を開いた。
悔しかったら取り返せと言わんばかりに、男はノートを掲げてゆっくりと振る。
ギリッ、と音を発て歯を食い縛った少女は、どうしてか震え続ける両足を叩き、ゆっくりと立ち上がった。
少女は今、決意したのだ。必ず、目の前の邪知暴虐、傲岸不遜なる悪夢の男をこの世から除かねばならぬと。
思えば、かなりの回数、目の前の男から何かしらの悪戯を受けている。少女は思い出した。
三日に一度は目覚まし時計が一時間進んでいたりする。
歯磨き粉がわさびにすり代わっていたこともあった。
竹の子は食べられると聞き、良く伸びてきたものを掘って食べ、三十分後に腹痛に襲われ。
行きなり振り向いてきて、「右に避けろよ。」と言われ素直に避ければ思いっきり糞を踏みつけた。
挙げ句の果てに、今度は大丈夫だろうと喜び勇んで買ったFF14がやっぱりクソゲーだったりもした。
(……………?)
何かおかしいような気がしたり、電波を受信した気もするが、きっと何かの間違いだろう。
ぎゅうっと眼を瞑り、少女は余計な思考を頭から追い出した。
今の自分に必要なのは、目の前の史上最悪の魔王を殺しきる、圧倒的なまでの力、それを産み出す天限突破の怒りと憎しみ。
呪言を何度も何度も、脳の隅々に刻み付ける。筋違いの憎悪が、自己暗示によって真理と書き換えられ、少女の心を支配する。
瞳を開く。
感情の昂りに合わせて、霊力は暴走し、瞳が朱一色に染まった。覇気が身体を覆い包み、殺気が森の空気を、殺伐な物へと変えていった。
「この恨み………………ハラサデオクベキカアアアアアアァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!!!」
「半分以上が自業自得ではないか。」
呆れ果てた男の冷静なツッコミも最早馬耳東風。
血走った眼で、地面が爆発する程のエネルギーで、脚を蹴り出す。
篠突く雨の如く暴力的に、少女は男に襲いかかる。
そのスピードに、少女を覆うオーラは空気摩擦により一時的に赤熱し、大気は破壊され衝撃波だけを残した。
音速を越え射出された彼女を阻むものは何も無く、男との、わずか数mの距離など刹那の内に消え去る。
濁った光を纏った右手は引絞られた矢の様に、限界まで力を溜め、そして今、眼前にそびえる一色の黒に
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」
一直線に突き刺さり――――――――――――――!!!!
「That`s too bad…………」
そしてその一矢は、まるで三文の足しにも成らない猿芝居の様に、虚しくも馬鹿馬鹿しくただ空を切った。
何のことは無い。
ただその男が、それこそ残像が残る程の速度で、体軸さえも揺らさずに横に身体をずらした。それだけのことだった。
「ギッ…………!?」
焼き付いた頭脳にも本能は残っていた様で、数瞬の間、少女は抜き手を突き出したまま、その場で停止してしまっていた。
その隙を見逃す等、何も無い所で良くこける私ですら有り得ない話であり、ぬいっ、と伸びてきた真黒の左腕が、少女の右手を掴んだ。
はっ、
少女の口から息が流れ、止まっていた脳髄が電気信号を送り始めた。力任せにでもと、少女は自由を取り戻そうと活動を再開した。
ぐん
離れない。
大岩にでも挟まれた様に、何れだけ足掻いても、引っ張っても、殴りかかっても、その猛獣の口腔から、腕が剥がれない、走れない。
ずい、と、不意に身体が引っ張られるのを、少女は感じた。
急激にGがかかり、ガクンと首が唸った。脳が頭蓋に当たり、吐き気と目眩がする。
「ペナルティだ。バカ弟子。」
少女の顎を、彼女の両眼を自分の眼と鼻の先に来るよう掴み持ち上げた男は、幽かにそう囁いた。
その言葉は空気を微細に震わす程度だった。
しかし、鼓膜と耳小骨と蝸牛菅を通り、電気信号となって神経を走って脳に届いたそれは、先程の物理的衝撃を遥かに越えて、心を打ち据えた。
ただの、十数音節の響きで、眼が怯えに染まり、血の気が失せていくのを感じた。
「防御くらいは、せめて忘れるなよ。」
身体の重みが、いきなり消え去った。男の左手には何も無いのを、何とはなしに眺めていた。
ゆっくりと時が流れて行く様に、少女には思えていた。
高々数十㎝の距離を落下するだけなのに、時間がねばつく様に流れていって、三半規管が私に伝える情報も、何故か物理法則を無視した回転運動で、木の葉が羽毛の如く少女の目の前をくるりくるりとでも何時の間にか私の上のほうに存在して少女の視神経が木漏れ日から差す光を伝えどうしてか私の思考はひどく凝り固まってしまいいまからなにがおこるのかもわからない意やわかってるだけどかんがえたくないおもいだしたくないあんなことあんなことあんなことわたしのそんげんがみじんにうちくだかれていやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや
「い、あっ。」
「Blast off.」
「ぶみゃああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!?????」
一ケタ台の年齢と思しき齢の少女が出して良いとは到底思われない絶叫を吐き出しながら、木の葉の群れを突き破り、枝をへし折り、彼女は大空へと逆自由落下していった。
その断末魔さえも段々とフェードアウトして行き、その場には無残に飛び散った木々の一部と、右足を振りぬいたまま上空を見上げる男のみが残った。
「これで私の…………68勝だな。」
……………………へ?この流れ何の意味があんのかって?ただの導入に決まってんだろ言わせんな恥ずかしい。そういえば幼女のケツ蹴り飛ばすとか胸熱だよね。
――――――――――――
「ほれ、食わんのか。」
そしてほんの少しだけ時間は流れ、気が付けば夜空には満ちるにはまだ少し足りない月が浮かび、そして彼らは何処かノスタルジックな、数寄屋造りの住居の中、夕食をとろうとする最中だった。
まあ、一人はすねて明後日の方向を見ているのだが。
「怒りを溜めるのは良くないぞ。もっと人生笑わねばな。」
「誰のせいですか誰の!!!!」
唇をとがらせ続ける少女に対し、おどけた様子で男は両手を開き、少女はその様子に怒りを爆発させ、憤激の咆哮を上げる。
がどうしてか、その頬は少し恥辱に赤く染まっていた。
「普通私位の年の女の子を空中に飛ばしますか!?普通!?」
「正直スマンカッタ。以後気をつけよう。」
「以後気をつけようじゃあないんですよ!!前されて、もうしないでくださいって、私頼みましたよね!」
「忘れた。」
「あ゛あ゛!?」
「…………以後気をつけます。」
幼女にマジ切れされて謝る中二病罹患患者(身長196cm)
頂戴!!その叱責を代わりに僕チンに頂戴!!
キモいって?知ってる()
「怖かったんですからね!ものっすごく、怖かったんですからね!!雲がどんどん近くなって!!森がどんどん小さくなって!!」
「ああ、うん。悪かった。私が悪かった。謝るから。」
「と思ったら内臓がスーって浮いて!!!地面がすごいスピードで近づいてきて!!うあああああもういやああああああああ!!!」
「判った、判った!もうしない!!だから泣き止め!食おう!な?」
別段彼にも、あそこまでする必要性は毛筋ほども無かったと言って良い。
なら何故、少女を秒速500mで上空に吹き飛ばしたかと言えば、それはただ単に、それが当然のことのように思えたからであった。
故に少女がまさかここまでガチ泣きするとは予想しておらず、対応に追われた彼は珍しく焦りながら、懸命に彼女を泣き止ませようと、おっかなびっくりで手を伸ばし頭を撫でようと――――――
「だから死ねや!!!!!」
「はぁん!!!」
突如として少女は顔を起こし、そばにまで近づいていた男のアギトを渾身の力で殴り飛ばした。奇声を上げながら、男はちゃぶ台をひっくり返しつつ飛び上がり、畳の上に叩きつけられた。
「このくず!アホ!外道!変態!バカ師匠!バカ!バカ!!バカ!!大バカ野郎!!!」
それだけでは飽き足らずとばかりに、少女は罵詈雑言を浴びせかけながら、男を何度も何度も踏みつける。
目尻から溢れ出している涙の粒が、男への怒りがどれだけなのかを如実に表していた。
男は踏みつけられるごとに蛙が踏み潰された時の様な声を発し、途中からは血反吐までも同時に撒き散らし始めていた。
だが、先程の思い込みの怒りとは訳が違う、純粋な恐怖からの憤怒は中々に冷めることは無く、小一時間蹴り続けた少女が、彼女の師匠の心肺停止に気付くまで、この光景は続くのだった。
なんてことは無い。この森の中では良く見かけられると妖精達に噂の、いつもの景色だった。
====================終われ=====================
みんなおはよう!!私、八雲紫!!!
あふれ出る少女ぱぅわーを使って怪人を倒した私は、次なる敵を探していたの!!
すると大変!!!私の友達の幽々子ちゃんに怪しい影が忍び寄っていたの!!
助けるために変身したはいいけれど、そいつはとても強くってー―――!!
次回!!「誕生!!新しい仲間、プリンセスパピヨン!!!~あ、これとてもおいしい!!え、一袋500円、でも今月苦し、あ、はい、おいしいですけれども、え、~」
デュエルスタンバイ!!!!