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我輩、問う

このお話には下品な表現が含まれます。

苦手な方はブラウザバックをお願いします。



「はっはっは、あいでやんすか〜」


乾いた笑い声を出しているのは、もちろんあの“翼竜の角笛”で召喚した茶色いドラゴンだ。

このドラゴンには我輩達がここに来た経緯などを教えた。


それと事情を知らないアイン君とデカい受付嬢にもだいたいの事を話した。

もちろん、我輩達が異世界からやって来た事などは言っていないぞ。

最初あまり信じている様子はなかったが、このドラゴンがフランクだったのもあり、二人は徐々に警戒心を失くしていったのだった。


そしてドラゴンが喋るというのは冒険者組合長ですら知らなかった事実らしく、デカい受付嬢はえらく興奮していた。


そんな中、我輩は疑問に思っていたことを聞いてみる。


「……というわけで我輩達はこの山に入ってきたわけだが、なぜ茶色いドラゴン君がここにいるんだ?」


ドラゴン君は我輩に怯えながらも答えた。


「こ、ここが前言ってたオイラん家だからでやんすよ。ど、どうりで最近みんなピリピリしてたでやんすね」


デカい受付嬢はそれを聞いて驚いたように声を上げた。


「それって、もしかしてこの山には複数のドラゴンがいるって事なの?」


ドラゴンから迷いの表情が読み取れたが、観念したように声を絞り出す。


「むぅ〜、本来ならニンゲンには絶対教えちゃダメなんでやんすが……。伯爵殿下様もいるし、隠し通すのは無理でやんす。そうでさぁ。この山は多数のドラゴンが生息する場所でやんす」


デカい受付嬢は驚きながらさらに問う。


「やっぱり全部がバーガンディードラゴンなの?」


茶色いドラゴン君はうんざりしたように答える。


「バーガンディードラゴンっていうニンゲン語はよくわからないでやんすが、ここに住むドラゴンは全部同じ種類でやんすよ、もちろんオイラも含めて」


アマリリス殿が驚嘆した。


「あなたもバーガンディードラゴンなの!? ほかのと色が全然違うように見えるんだけど……」


ドラゴンはアマリリス殿に必要以上にびくついていた。

何かトラウマでも持っているんだろうか……。


「……オイラ達は年を経るごとに体色が黒に近づいていくんでやんす。完全に成熟したドラゴンは漆黒の黒い鱗に包まれるでやんすよ。それに伴って知能も発達していくんでさぁ」


アイン君が納得したように答えた。


「なるほど! じゃあ、旦那が倒したドラゴンは二体とも血気盛んな若い個体だったってわけか!」


「そうでやんす、あいつらは30年生ぐらいでオイラは100年生でやんす」


我輩は再び尋ねる。


「この山にはその真っ黒いドラゴンもいるんだろ? さっきから覗かれているようで鬱陶しいんだが……」


それを聞いたドラゴンはびっくりしたように言う。


「うへぇっ!! それに気付くとは流石でやんす……。 たぶんそいつは校長でやんすなぁ。それであんなに慌てていたでやんすかぁ〜! 無理もないでやんすなぁ」


我輩達の声が重なった。


「「「「校長!?」」」」


ドラゴンが頷いて答える。


「この山はニンゲン界で言う所の学校に近い場所でやんす。オイラ達ドラゴンは真っ黒でカッコイイボディになる為に日々努力しているのでやんす」


我輩は居た堪れなくなりポツリと漏らしてしまった。


「ドラゴン君すまない……。君のご学友の一人は既にこのアマリリス殿の腹の中だ。どうしてもアマリリス殿が食べたいと煩くてな……」


アマリリス殿は真っ赤になって食ってかかった。


「ちょ、ちょっと、あのトカゲを粉々の肉片に変えたのはジンさんでしょ! 私は悪くないわ……おいしかったけど……」


それを聞いたドラゴンは顔を真っ青にしていた。


「オ、オイラ達に仲間意識はないでやんす……。学校っていっても、殺し合いばかりで友情なんて芽生えないでやんすよ……」


我輩は意外なドラゴンの学校生活に驚きながら言った。


「ふむ……。結構殺伐としているのだな。だが我輩は羨ましいぞ、学園生活を満喫できるとは……。やっぱり気になるドラゴンぐらいはいるのだろ?」


「……い、いないでやんすよぉ……」


そう言ってドラゴン君は真っ赤になって否定する。

……いるんだな。


我輩がそう思っている中、デカい受付嬢が疑問をぶつけた。


「黒いドラゴンはその校長先生だけなの? もっと他にいてもよさそうなんだけど……」


ドラゴンはさっきまでの照れを消して答えた。


「校長だけでやんす。完全に真っ黒に成熟できたら、オイラ達は竜人と呼ばれる種族になるでやんす。ニンゲンに変身できる事はもちろん、ものすごいパワーアップも期待できるんでさぁ。で、無事竜人になれたドラゴンはここを卒業して、天空のどこかにあるという竜人の国へと旅立つでやんすよぉ〜」


ドラゴンは夢見る子供のような瞳で言った。


皆は竜人の国というワードに目を見開いている。


それもそうだろう、この場所ですらあまりよく分かっていなかったのだから。

そんなものの存在に驚かないほうがおかしい。


「……ほう! 竜人の国とな! 是非とも行ってみたいものだな! だが、まぁ当面の目標はその校長殿だな。ドラゴン君よ、すまない。君の恩師殿は数日も経たない内にこのアマリリス殿の腹の中に収まることになるだろう……」


我輩の不吉な言葉にドラゴン君は再び顔を青くさせる。


「ちょ、ちょっと、何で私が校長先生を食べることになってんのよ! 誤解しないでね! あなたを食べるわけじゃないから!」


そう言ってドラゴン君に言い聞かせるアマリリス殿は何かが間違っていると思う。

そして、食べる事に否定はしないらしい。


だが、アマリリス殿に必要以上の危機感を抱いたドラゴン君は覚悟を決めたように言った。


「……伯爵殿下様、お願いがあるでやんす! 校長は別にどうなってもいいでやんすから、どうか! どうか、リーリアちゃんだけは見逃してあげてくだせぇ!」


またもや我輩達の声が重なる。


「「「「リーリアちゃん!?」」」」


「オイラ達とは全然違う、ピンク色のドラゴンでやんすからすぐわかると思うんでさぁ! お願いでやんす! どうか彼女だけは助けてやってくだせぇ! 後ついでにオイラも!」


なるほど、リーリアちゃんとはこのドラゴンの想い竜か。

そして最後の言葉がこいつの本心だと思われる。


「本当に校長なんてやつはどうなってもいいでやんす! その代わりリーリアちゃんとオイラだけは見逃してくだせぇ!」


我輩は少しイラっとしながらも答えた。


「……いいだろう。こちらとしても無駄な殺生は避けたいところだ。校長殿以外は別に眼中にない。皆の者それでいいな?」


アマリリス殿はうんうんと頷いているが、デカい受付嬢とアイン君は話についてこれていないようであやふやな返事をしていた。


「それに校長殿ならば多くの財宝なり、横領なりを溜め込んでいるはず。良い手土産になるだろうよ……」


そうやって、くっくと笑う我輩にアマリリス殿以外がドン引きしている。


だが、そんなことを気にせず我輩は最後の疑問をドラゴン君へと尋ねた。


「ところで……君は尻尾を出して一体何をしていたんだ?」


聞かれたくなかったのだろうか、居た堪れない表情をしていたドラゴン君がぼそりと漏らした。


「ウ◯コしてたでやんす」


我輩、いや全ての者が一斉に、ドラゴン君の尻尾の付け根に迷うことなく抱きついていたアマリリス殿へと視線を送った。


さっきまでは一点の曇りなく輝いていた見事なフルプレートメイルに、今では茶色い斑点がいくつか付着している。


アマリリス殿がゆっくりと視線を下ろす……。





「ぬわぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」


アマリリス殿はやっぱり剣を抜いてドラゴン君に斬りかかった。



「今日の晩御飯にけってぇぇぇぇぇえええい!!!!」


ウ◯コアマリリス殿は今日も元気なのであった。




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