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銅潔のエリート奇譚  作者: 雨乃月夜
6/16

episode.02 エリートと落ちこぼれ②

 その日から、夕梨はいつにも増してエリートたちに尽くすようになった。


「あっ、このノート先生のところまで持っていくんだよね、私やるよ!」


 ある時は日直の仕事を手伝い、


「掃除は私がやっとくから大丈夫だよ!」


 ある時は掃除当番を代わり、


「よかったら先どうぞ。私残り物でいいので」


 またある時は購買の順番を譲っていた。



「何がしたいんでしょうね、あいつ……」

「…………」


 エリートに媚を売れば認めてもらえるとでも思っているのだろうか。


「あっ」


 自分を見る八城たちの視線に気付いた夕梨はあからさまに眉をひそめる。


「私、あなたたちとは違うんで」


 ぷいっと振り向くと夕梨は去っていった。


「そんな口を聞けるのも今のうちだぞ小娘………」


 八城は静かに怒りを露にしていた。



 ***



 ある日の昼休み。トイレから出た潔は化粧室に溜まる女子生徒たちの会話を耳にした。


「仮沢さん? 私たちに媚び売りたいの見え見えだよね」

「逆に萎えるっていうか……恥ずかしくないのかしら」

「まぁいいんじゃない? 落ちこぼれには私たちの召使いがお似合いよ」


 エリートお嬢様たちはキャハハッと笑い声を上げる。


「…………」



 ***



 その日の放課後。


「仮沢さん」


 一般生の女子が、帰り支度をしていた夕梨の名を呼んだ。


「はい……?」

「私たち、今日これからショッピングに行くんだけど。良かったら仮沢さんも一緒に行かない?」

「………!」


 一般生の女子からの初めての誘い。夕梨はパァっと表情を明るくする。


「行きます!」


 ふっと視線を動かした夕梨と八城の目がまたバッチリと合う。

 夕梨はどうだと言わんばかりにふっふーんと笑って見せた。


「あいつ………」


 去っていく女子たちを見ながら八城はわなわなと拳を震わせる。


「八城」


 潔が小さく八城の名を呼んだ。なんとなく照れくさそうな様子だ。


「なんですか、潔さん?」

「……様子を見に行く」

「……え?」

「別に、心配だからとかそういうんじゃない……嫌ならあたし一人でも」

「気になるんですね?」


 八城は優しげな笑みを見せた。


「!」

「どこにでもお供しますよ、主の行くところならね」

「そういうのいいから!」


 潔は赤くなる顔を隠してさっさと教室を出る。

 そんなこんなで二人は夕梨たちの後をつけることにした。



 ***



「へぇー、あいつらがそんなことをねぇ」


 道を歩きながら、潔は先ほど化粧室で聞いた女子たちの会話を八城に話した。


「まぁそんなことだろうと思ってましたけど。あんな簡単にエリートに認められるわけがない」

「仲良くする気ないくせに良い顔して近付くなんて胸くそ悪い……言いたいことがあるならはっきり言えばいいのに」

「それが女子の怖いところですからねー……それにしても」

「?」


 八城は眉間にシワを寄せる。


「エリートに媚売るような奴がいるせいで落ちこぼれ全体が見下されることを分かっているのかあいつは……」

「…………」



 ***



 やがて夕梨たちは大きなショッピングモールまでたどり着いた。

 すると一斉に笑顔で振り向く女子たち。


「仮沢さん、荷物よろしく。持ちたいんだよね?」

「え?」


 ドサドサドサッと女子たちの鞄が夕梨に降り注ぐ。


「じゃあ行こっか」

「……………」


 夕梨は何も言えずにただついていく。

 その様子を潔たちも見ていた。


「はぁー。いいように使われてますね。どうします潔さん?」

「……とりあえず様子を見る」


 潔たちも夕梨たちに続いてショッピングモールの中に入っていった。


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