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073:オンドゥルルラギッタンディスカ?

お待たせしました。

ダイジェスト化していないのにダイジェストでお送りするのは仕様です。

「宍戸、今日は時間があるなら一緒にやるか?」

「ネットの知り合いと一緒ですけど、それでよければやりますか」

「フッ……問題ない」


 引っ越しの梱包作業は、給料据え置きで早めに全行程を終了した。

 今日はオフィスに椅子を運んだりする作業がメインで大物がなかったので、肉体的な余裕があって地味に嬉しい。


「で、そのネットの知り合いとはどんな野郎だ?」

「メイドさんに自分のことを”パパ”と呼ばせてしまうような変態ですね。あと上半身裸」


「……大丈夫なのか?」

「性癖的にはアウトですけど、戦闘能力に支障はないです」


 竜碼さんは訝しんだ目で僕を見た後に「類は友を呼ぶ、か……」と小声でつぶやき、納得顔で頷いていた。

 僕の性癖はノーマルだから一緒にしてもらっては困ります。

 パパと呼ばれるくらいなら「ダディ!」と呼んで欲しい。さらには「クール!」なんて言われてしまうと調子乗るからね。ベクトルが違うのだよ、ベクトルが!


 ☆☆☆


 バイト先から帰宅し、丁度自宅に到着――という所で来栖さんからメールがあった。

 内容を展開すると、深樹海で遭遇したモンスターのデータが書いてある。

 善意でやってくれたのだろうが、ネタバレこの野郎……という感じだ。

 僕の来栖さんに対する好感度が少し低下した。


『ネタバレ絶許。でも、参考にさせて貰います』


 と書いてメールに返信しておく。

 夕飯を食べて風呂に入ったらログインだな。


 ☆☆☆


 深樹海を男三人で潜った。

 当初はサクラさんとタティも同行していたのだが、任意に森を傷つけて”精霊の加護”の効果で身体が重くなるという要素を戦闘利用した『重みで押しつぶす系プレイスタイル』が気に入らないようで、好感度が下がりそう――というか「あなたがたは何を考えているのですか?」「パパ、最低……」という状況になり「フッ……これは男の戦いだ。女子供は帰るんだな」という竜碼さんのコメントにより最悪の雰囲気になったので先に帰って貰ったのだ。

 ベンはタティの好感度が低下したことでグチグチ言っていたが、なんだかんだで男三人というのは気兼ねすることなく喋ることができるメンバー。

 竜碼さんが胸の大きい女性の良さを語ったり、ベンがパパと呼んでくれる娘とスケベする素晴らしさを語ったり、僕が黒髪こそ至高と語りながら深樹海を攻略をした。


 ……猥談に力が入りすぎて鎌鼬的なモンスターの接近に気付かず、後ろからバッサリと斬り付けられて死亡したのは余談だ。


 ☆☆☆


 翌日。朝食を済ませてMBOにログインする。

 来栖さんと待ち合わせていたのだが、そこに忍者が一緒にいた。

 どこぞで見たことがあると思ったら、異名機能が実装された後にエルフの集落で名乗りを上げていた忍者だ。

 僕のことを見るなり「む、鞭使い……」と怯えた顔をする。何故だか分らんが、怯えられるのは悪い気持ちではない。むしろ良い。畏怖される様な鞭使いオーラ力がでているのだろうか……

 期待を裏切らないよう、ハイパーでいこうと、忍者の周囲を鞭でビュンビュンした。


 しばらく一緒にプレイしていたのだが、忍者が来栖さんとベタベタしたがったり、身体的接触をしようとしているのがどうにも気になった。

 倫理規制の機能が働いているので全て寸止めブロックなんだが、釈然としない。

 そこで「ネカマをやるのは良いですけど、少しガツガツしすぎて見苦しいですよ」と注意をしておいた。


「……遙人さん、ネカマって何ですか?」

「男がネット世界で女性の格好をして女の子になりきったプレイをする。それがネカマ。今回のように同性同士に見せかけて女性に接近するのは下半身直結厨。理想の女性になりきって男を手玉にして楽しんだり、カップル同士でゲームをしていると思われるプレイヤーの関係にヒビを入れるのを楽しむのが非リア僻み勢、女装を楽しんでるのは男の娘か女装癖で、無害な変態」

「そうなんですか」


 来栖さんの返事を聞いたときに、ゾクりと寒気がした。

 そこから「昨日、私は女性限定で募集をだしたのにあなたが参加したのは何故ですか」と尋問が始まり、最終的に言い訳を重ねる忍者に対して「もういいです」とブラックリスト機能を使い対処した。


「遙人さん、変な人を連れてきてすいませんでした」

「気にしなくても大丈夫。ね、サクラさん」

「はい。クルス様には非はありません」

「そうそう。忍者は昔から汚いものだから。さすが忍者汚い。とでも思っておけば良いさ」


 その後、腹いせにダーティなプレイをした僕と来栖さんだが、その様子をうちのメイドさんが看過できなかったようで、敵対する流れとなった。

 なんでも、森を守る為に精霊がヒトと自然に加護を付与しており、僕らの行動は倫理に反しているらしい。


「言ってくれるのが遅すぎたんだ……」

「そうです。もう少し早く言って貰えれば配慮しました。何故黙っていたんですか」

「試したのです、異世界人の正義感を。そして、判断は下されました」

「残念です、お嬢様――――いえ、クルス・クリスティにハルト・レオン。あなた方には消えて貰いますぞ」


 従者の二人は、僕たちに向かって刃を構えようとした――ので、躊躇なく鞭で無力化する。

 右手の薄紅桜蛇でサクラさんの鎌を。左手で執事さんの槍を奪い取った。

 そして、すぐさま後方へと放り投げる。


 これで、来栖さんが二人を無力化するだろう。そんな風に思ったのだが……

 僕と違いサクラさんと良好な関係を築いていた少女は唖然とした表情で、


「そんな、嘘だと言って下さい。あんなに仲良くしていたじゃないですか……!」


 と。行動停止状態に陥っていた。


「来栖さん!」


 名前を呼ぶと、駄々をこねるように首を横に振る。

 駄目だ。これは僕だけで相手をするしかない……が、相手の武器は既に奪っている。警戒しなければいけないのは魔法だけ。無詠唱程度の威力ならゴリ押しすればいける。

 まずは、憑依される前にサクラさんを――――


「無駄ですよ、ハルト・レオン。あなたは既に私の憑依化にあります」


 なん、だと……

 喋ろうとしたが、声もでなかった。


「あなた風に言うなら、そうですね……”いつから私の戦闘力を自分以下だと錯覚していた?”ですか。抑止力になる案内役が、異世界人より弱いなんてことはありえません」

「残念でしたな。ご自慢の鞭も振るえなければ無価値同然ですぞ」


 野郎ッ……! 愛でるだけでも価値があるというのに。

 いや、価値がないのは鞭を振るえない僕自身ということか。なんという精神攻撃……それとなく納得してしまえる所が自分でも悲しい。

 駄菓子菓子。その程度では普段からサクラさんに散々蔑まれた僕のこころはびくともしないぜ!


「クルス・クリスティ。あなたとは友達になれると思っていましたが、残念です」


 サクラさんは、そういうと髪留め――来栖さんがプレゼントしたもの――を外して地面に捨てると、右足で踏み潰した。

 パキンという音と「あっ」という来栖さんの声が重なった。


 ≪ 警告:クルス・クリスティに精神に負荷がありました。強制シャットダウンします ≫


 まさに外道。

 リアルに友達いない……少ない来栖さんにそんなことをしたら駄目だろう。


「お仲間は消えました。次は、あなたです」


 シャットダウンは死亡扱いにされたらしい。

 僕は、魔法で焼かれて死亡とかそんな流れか……

 ゲームで好感度不足&自分の行動が原因の因果応報とはいえ、若干胃が痛い。


「なんとでもやれ、という表情をしていますね……では」


 サクラさんは指をパチンと叩く。

 すると、僕の鞭が先端から燃え始めてだんだんと灰に……


 おいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!! あああああああああああああああああああああああやめてくれえええええええええええええええええええあああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!くぁwせdrftgひゅじこl


 ≪ 警告:精神に負荷がかかっため強制シャットダウンします ≫


 ☆☆☆


「あああああああああああああああああああああああああああ!!」


 ベッドから起き上がった僕は慟哭した。

 許せない、絶対に許せない。なんだこの展開、完全に糞ゲー。初めてこんな糞なゲームをやった。ありえない、ありえない、本当にありえない。なんだこれ……

 催眠術とか超スピードとか、そんなチャチなもんじゃない。本当に邪悪だ。生まれながらの邪悪だろこのゲーム。いかん、いかんぞ。いかんだろ…………


 でもさ、ゲームだ。ゲームなんだ宍戸遙人。

 落ち着いて、深呼吸をして……


 ……駄目だ。落ち着かん。

 しかし、どうしようもない。

 だけど、ゲームなら、アレだ。



 巻き戻るハズ。

 再ログインして状況を把握しなくては。


 そう思うも、心拍数が乱れまくってMBOを起動することができない。

 ものすごくもやもやするけど、仕方がない。


 時間を確認すると『11:35』となっていた。

 少し早いけどお昼ご飯を食べて、気晴らしに賢者になって、シャワーを浴びて、そこらかゲームを再開しよう。


 ☆☆☆


 ログインすると、そこは深樹海でもエルフの集落でも、王都でもない真っ白な空間だった。

 そこには、ひとりの少女がたたずんでいる。


「また、会いましたね」


 誰、だ……どこかで見覚えがある気がするのだが、分らない。


「あなたを異世界にお送りしたメイドです」

「ああ!」


 そういえば、そうだ。そんなキャラクターがいた。

 そして、この真っ白い空間も。ゲームを開始したときにいた場所ということか。


「この結末は、ご主人様の本意ではありません。ハルト様としても、そうだと思います。そこで、私から提案があります」


 少女が言うことをめとめると、こうだ。


 1.”遡行の宝珠”で今日のログイン前の状況まで時間を巻き戻す。

   好感度は取り返しの付く段階なので、同じ行動をなぞらない限り殺されない。

   ※今回は無料。次回からは1,000円のクレジット払い。


 2.同姓同名の別人として再度異世界へと転生する。


 3.メイドの命、所持している全アイテムを対価にして蘇生。

   深樹海であった出来事が露見する心配はないが、全滅したパーティの生き残りということで人間関係に影響がある。


 4.そのまま蘇生して継続。

   蘇った情報が王都関係者へ露見した場合、命が狙われる。


 完全にノーリスクな『1』を選択し、再発防止に努めるのが無難だな。

 『2』はメイドさんの所業に心が折れてしまった人用で、残りはロールプレイ用の趣味枠。


「人生の分岐に関わる選択です。ゆっくり、心ゆくまで悩んでください」

「いえ、大丈夫です。説明を聞いた感じだと、一択ですし。僕が選ぶのは――――」

※好感度、調教、性格によって展開は異なります。

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