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054:スライムは全てを癒やす

 若妻からロリ巨乳への変化にに見とれてしまったが、鞭を握って煩悩を振り払う。

 遠距離攻撃をされる前に距離を詰めなくては。そう思ったが、足を影の触手に巻かれてその場で転倒した。


「うおッ」


 さらに、追加で触手が地面から伸びてきて僕の両腕を掴んで空中に固定する。

 必死でもがいて抵抗するが、抜けられない。


 婬魔が僕の耳元にフゥー、と息を吹きかける。

 生ぬるく、甘い。

 なんだか、身体が火照る……この婬魔の言うことを聞きたくなるような。

 ロリ巨乳に顔を埋めたくなるような……揉みたくなるような……そんな、気持ち。


「少し可愛がってから消してやろうと思ったが、魅了耐性を持っているか」

「くっ……」


 もしや、≪魅了耐性≫のスキルを持っていなければ可愛がって貰えたのか?

 捨てたい。こんなスキル必要なかったんや……僕の感情が絶望に支配される。


「つまらんな」


 婬魔は僕から離れると、両手を合せて呪文を唱え――黒い炎が生まれる。

 初めは片手に収まる程度だったそれは、加速度的に巨大化し、民家一軒ぐらいの大きさになった。

 圧倒的な熱量で、側にいるだけ身体が焼けて死にそうになる。


「これは無理ゲー……」


 どうしようもないだろう。死に戻りを覚悟した瞬間――――

 何か、粘液状の物体が足下から沸いてきた。それは、あっという間に僕を覆う。

 ネバネバして気持ち悪い。生ぬるいし。この感触は……回復スライム?


 直後、黒い炎が僕に直撃する。

 だけど、熱さも痛みもない。何故かHPが全回復しており、ピンピンしている。


「間に合ったようだね」


 その人物は、先程のスライムと同じように地面から沸いてきた。

 細身で黒を基調とした鎧の胸に、黄金の獅子を輝かせる黒髪の男――――


「勇者ッ! もう補足されたというのかッ……!」

「それだけ魔力の臭いをさせてくれば、ね」


 チュートリアルで登場した勇者さんだった。

 彼は両腕からライトブルーに輝く剣を生やすと、婬魔に向かって斬りかかる。

 婬魔は背後に下がってそれを回避したように見えた。だが、剣の長さが突如伸びて婬魔の腹を切り裂く。


「――!」


 朱色のスクール水着が裂け、婬魔は苦しそうに呻いた。エロイ。

 さらに勇者さん……いや、勇者様が伸ばした二振りの剣は触手へと形状を変化させ、四本に分裂して婬魔の四肢を拘束する。

 婬魔が抵抗して暴れる度に、巨乳が揺れて僕は目が離せない。


「お、おのれ! こうなれば第三形態に――」

「喋れないでくれるかな」


 勇者様の右腕から一本触手が伸び、婬魔の口内に挿入される。

 またもやエロスが増加――そう思ったのも束の間、勇者さんが「眠れる針のネズミ(ザ・ドーマウス)」と呟いた。

 彼の身体から何本のも触手針が生え、婬魔を貫く。


「ォ……」


 婬魔の身体から血の変わりであるポリゴンが洩れ、身体が徐々に崩れていく。


「婬魔六皇貴族キュアラメネス・ナイシック……

 キミの闇より蠢く触手ダークネス・テンタクルでは、僕の全てを貫く粘菌の触手スライムペネトレイターに勝つことはできないよ」


 紳士的には、もう少し拘束してからの展開に余韻が欲しかった。欲しかった、です……

 恨みがましい視線を勇者様に向けると、彼は「ごめん、助けるのが遅くなったね」と格好良いセリフを返してくれた。

 チョロインだったら惚れているお約束の展開(テンプレ)だが、生憎と僕は紳士なので。


「……勇者様。婬魔を倒したのに結界が砕けないのはフラグですか?」

「いや。まだ戦闘が継続中なのさ。

 僕の分身がキミの仲間を救うために頑張っているハズ。ほら、こんな感じで」


 勇者様の胴体が半分に割れた。ネバネバと糸を引きながら……

 そして、切断面からスライム的な何かが盛り上がったと思うと防具を含めて二人に増殖した。


「……ない」

「あるある。これが勇者の――粘菌の力さ。キミも、回復スライムの恩恵を受けているだろう?」

「僕が直接生成するスライムはアレの百倍は高性能さ」

「まさに絶対無敵スライムオー! スライムが最強生命体というのは間違いないね」


 二人の勇者様が交互に喋って少し気味が悪い。

 このまま三分程スライム自慢を聞いたところで、勇者様が今回襲ってきた婬魔について教えてくれた。


 説明によると、今倒したのはキュアラメネスという婬魔の中でも(エロ)い婬魔六皇貴族と呼ばれる存在で、なんでも勇者様とは触手的な好みが合わずに争っているそうだ。

 スライムの触手こそ至高と主張する勇者様と、触手は全てが平等であると主張する婬魔六皇貴族。


「第二形態までの彼女たちは闇の触手的な攻撃方法を使っているから普通に見える。

 だけど、本領は第三形態からだからね。生物的でオエッとしてしまう気持ち悪さだから」

「生物的なのは僕もアウトですね。

 スライムにはエロスを感じますけど、そうでない触手には嫌悪感しかありませんから」

「おお! 話がわかるキミのような存在に出会えて光栄だ!」

「触手といったらスライム!」

「スライムといったらスライム!」


 話が逸れて、また三分程勇者様のスライム布教トーク。

 で、肝心の僕らが狙われた理由については不明なそうだ。可能性としては”異世界人(プレイヤー)が成長する前に芽を摘んでしまおうと考えているのではないか”ということ。

 僕らが召喚される前に召喚された異世界人は勇者様なので、色々とこの人が全ての原因なんじゃ……そんな風に思わざるを得ないというか、話しててそれで確定だろうと思う。


「お。決着した」


 勇者様が呟くと、周囲の結界が霧のように分解されて元の場所に戻ってきた。

 結界に囚われる前と位置がズレていたりするけど、全員無事。

 何故か、僕とベン以外のプレイヤーとメイドさんは倒れたような状態になってるけど……結界の中での状況が影響してたりするのかね。勇者様が助けに来る前に敗北した、とか。


「糞ゲーだろ、空中に攻撃とか届かねぇ」

「完全にバランスが悪いな。こんな序盤で敗北イベントとか萎えるし」

「マジ萎えるよな。それに勇者がキメェな。イイトコ取りでウゼェし」

「婬魔が触手を使うのはアリだけど、勇者はねーよなぁ」

「ちょ、婬魔もねーよ。オマエ、そういう趣味か? ドン引くぜ?」


 ……そんな二人の様子を、十三人もいる勇者様が冷めた目付きで見つめている。

 全員が同じようなイベントを経験して分裂したのだろ。なんとも奇妙な光景だ。


「僕が使うのはスライムであって、その技の一部に触手があるというだけだよ。

 あくまでスライムがメインであって、触手はそのデザート的なものだからね」

「…………」


 勇者様の正論に二人が黙る。

 そうですよね。スライムのメインは触手を生やすことではなく、女性の服だけを溶かすお仕事だ。

 紳士なら知っていて当然の知識だが、中学生にはまだ早すぎたか……


「そういえば、今からキミたちが向かっている深樹海にジョヴィンという青年がいてね。

 彼に頼めば触手魔法を教えて貰えると思うよ。興味があれば是非という感じで。

 そっちの少年とかは好きそうだし、ね……。鞭使いのキミは、触手と鞭でなんだか通じるものがるだろう?

 きっと、覚えれば人生の成長に繋がるハズだよ! 先輩からのアドバイス」

「確かに、通じるものはありますね。尋ねてみることにします」


 無料で教えて貰えるなら儲けものだ。

 深樹海へ行ったらまずは”ジョヴィンさん”を探すことにしよう。

消化不良な感じで微妙に後味が悪いですが、中学生コンビはこれでフェードアウトです。

マナーが悪いプレイヤーを相手にスカッとなる話を書くハズだったのにどうしてこうなった……

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