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043:変態紳士と真性の変態

「……貧乳は好みじゃないんだ」


 急な展開に、そう答えるのが精一杯だった。

 いきなり奴隷と言われても承服しかねる。首輪を付けて連れ歩くわけだよな……こう、「この人は奴隷です」的な。倫理的にまずいんじゃないだろうか。

 うちのメイドさんの好感度所か、リアル友人からの好感度も爆下げだよ。


「お金を積めば風俗街で『操乳の宝珠』というアイテムが購入できるよ」

「ご主人様のためなら巨乳になります!」


 何故か外堀が一枠埋まった。

 操乳の宝珠の話題は変態紳士スレでも出ていた記憶がある。一ヶ月ほど時間を掛けて対象を成長・減退させることができるので成長を見守りたい紳士が購入し、定期的にレビューを投下している。

 本来ならメイドさんの外見カスタマイズアイテムだけど、他のNPCにも適応できるのか……課金で入手できるという話しなので、風俗街で金を出さなくともリアル300円払えば大きさの変更ができてしまう。


「くっ……」

「強さ的には今のハルトよりも上。容姿も悪くない。種族も半吸血鬼で戦闘能力が高い。それに気に触ったら殺せる立場、ご主人様だ――悪くないだろう?」

「いつお仕置きして貰っても大丈夫です!」


 変態女の平常運行が逆に恐いんですけど。

 さっきは「お助け下さい」と顔面蒼白で言っていたんだけどすでに面影が消えてるよ。


「……人格面で問題がある気がするんでお断りしたいんだけど」

「そうか。じゃぁ、処分――――殺そうか。ハルトも見ていくかい?」


 セラレドの目から虹彩が消えた。仕事モードの兆候……本気か。

 プレイヤーなら気にしないけど、NPCだから死に戻りがない。完全抹消。くっ……


「――やっぱり奴隷にするよ……」

「ああ、愛していますご主人様!」


 パァっと、女の顔が花のように咲いた。セラレドも満足そうに頷く。

 僕の精神力では見捨てることができなかったので、地雷と分っていても踏み抜くことしかできない。


「じゃあ、早速手続きをしよう。ハルト、ギルドカードを」


 ギルドカードを取り出すと、すーっと空中に浮いてセラレドの手に収まる。

 セラレドはそれに魔力のようなものを注入して僕へと返却する。


「はい。完了」

「ありがと――――名前を決めて下さい?」


 僕の手にギルドカードが戻ってくると、システムによる文章が目の前に浮かんだ。


「奴隷は登録時に主人の権限で改名させることができるんだ」

「前の名前を使って貰ったりは?」

「勿論、それでもかまわない。だけど――――」

「イヌでもブタでも、好きな名前をお付け下さい」

「と、言うこと。調教して奴隷・仲間にしたらこうなるんだ」


 期待に満ちた笑顔で女は言う。応えるにはアレな名前をつけなくては駄目なんだろうけど悩むな。

 保留に出来るか聞いたけど、名前を付けるまで契約は完全に完了しないので無理だと言われた。僕が首を傾げている姿を見て、セラレドが「今更だけど――」と奴隷についての説明をしてくれた。

 要約すれば『奴隷の証拠はギルドカードに刻まれるので、首輪などの道具を身につける必要は無い。扱いは個人の裁量によるが、最低限の衣食住で人間的な生活を保障しなくてはならない。破った場合は奴隷所持者に罰則がある』と、こんな感じだ。


「首輪、私は奴隷には首輪が必要だと思います!」


 元気な変態奴隷さん。この人、まだ壁に張り付けたままになっていたりする。

 しかし、奴隷に首輪が必要だというのは同意してしまうな。様式美的に、変態紳士的に。説明的には『首輪を付けていても奴隷じゃない』という風に捕えることができるので、世間体の問題はクリアしているし。


「首輪を買うなら商業街にある『人類の希望』がオススメだよ。頭に装着する獣耳を主に扱う店で、セットで首輪を求める人もいるから販売してるんだ」

「了解。オススメに従ってそこで購入するよ」


 公式FAQにも記載があったし、変態紳士スレでも好評だったし異論は無い。

 ついでなので、サクラさんにも獣耳を買っていこう。時間は――まだ間に合うよな。


「それと、この女が何かをしたときに懲罰をするため早期に≪拷問≫スキルを覚えることを薦めておくよ」


 ≪拷問≫スキルとは、≪苦痛愉悦≫≪苦痛快楽≫≪苦痛半減≫≪苦痛無効≫など、それらのスキル所持者と対峙したときに痛覚を貫通させるのに必須なスキルらしい。加えて、拷問をする際に対象が口を割りやすくなる。


「覚えるには『無抵抗な相手を攻撃することに馴れる』必要があるから、敵と相対したときは容赦しないように。最善を言えば、調教が完了したそこの女に≪苦痛快楽≫のスキルを任意解除させて叩きのめすことだけど――――甘いハルトには少々酷かな」

「いや、大丈夫。死ななければ回復するし――――」


 僕は、碧腕緑桜を大きく振りかぶった。


 ・

 ・

 ・


 鞭が拷問文化の中にあることを否定しない。何故なら僕は鞭が大好きだから!

 ……ってことで、瀕死にさせる→回復スライムで全快→瀕死にさせる→回復スライムで全快→瀕死にさせる、という行程を消化して≪拷問≫スキルを取得した。

 その過程で、『称号:拷問官』と『称号:眼鏡じゃない鬼畜』を手に入れた。

 セラレドからお褒めの言葉を預かり、対象の口内から鞭を潜り込ませ心臓粉砕を狙う≪ハートヴレイカー≫というエクストラスキルを伝授された。


 ……当然、実験対象になった変態さんはほぼ死にかけた。

 さすがに罪悪感を感じたけど「ご主人様が私の命を握っている感覚がたまりませんっ」と虫の息でニタァと笑いながら言う彼女の狂気によって上書きされた。


 で、現在はセラレドが変態さんの服を用意するとためにヴァレリアさんに話を通しに店へと行ったので、拷問室には僕と変態さんが二人きり。

 四肢を拘束していた金具を外し、彼女を膝枕して寝かせている。


「ご主人様、大好きです。膝枕の感触が、ふふっ」

「……拷問されていた側が拷問していた側よりも元気ってどういうことさ」

「拷問というより、良いお仕置きでした。また「断る」」


 鞭を振る作業をしているのにテンションが削られるとか、初めての経験でした。

 やはり、性的な意味での鞭は僕と相性が悪いようだ。


「……奴隷にしておいてなんだけど、僕ってまだ名乗ってないよね」

「はい。ですが名前は存じておりますよ」

「名字は宍戸。覚えて置いて。あと、この世界だとハルト・レオンで名乗ってるからそっちも覚えておいて」

「はい、ご主人様」


 不覚にも色っぽかったので、視線を逸らす。

 この変態さん、無駄に肌がつやつやしてるし汗をかいているから困る。


「あと、名前も決めた。今日からキミは『カーラ』だ」

「カーラ。カーラですか。私は……カーラ。ふふ。精一杯ご奉仕させて頂きます!」

「適度によろしく」


 喜んでくれているようでなによりだ。

 名前の由来は首輪。英語でcollar、そのままの読みにするとカラー。そこから少しイジってカーラにしたというワケだ。……似合っていると思う。


 カーラを膝に置いて嘆息していると、ヴァレリアさんが拷問室へ入って来た。


「ハルトくん。着替えを持ってきたわよ」

「ありがとうございます。じゃあ、僕は先に店まで上がってまってますから」


 変態が「生着替えを見てくれて良いのに」と呟いたのが聞こえたが無視した。

 恥じらいって、大切だと思うんだ。変態紳士的に考えて。


 ・

 ・

 ・


 セラレドと談笑をしているとヴァレリアさんとカーラが拷問室から上がってきたが、カーラの格好が奴隷から婬魔にクラスチェンジしていた。

 金色の髪は綺麗に整えられ、ゴシックなボンテージに赤にラインが入ったミニスカート。黒のニーソックスに茶色のブーツを穿いている。


「胸がある、だと……!?」

「布を丸めてパッド代わりにしてあるの。私のサイズだとぶかぶかになってラインが格好悪いからね」

「ご主人様、どうですか?」


 カーラはくるりと回転して、スカートをふわっとさせてお辞儀をする。

 ちらりと、肌色と黒の三角形が見える。ボンテージの下腹部形状がハイレグで無駄にエロいな……恥じらいがないのがやはり減点対象だ。エロスはあるけど正義がない。


「うん、可愛いよ。似合ってる」

「ありがとうございます。ふふ。褒められましたよヴァレリアさん」

「よーしよし。良い子ねカーラちゃん。あー、食べたくなっちゃうわー」


 ※ただし好みではない。という注釈が僕の頭の中でテロップ表示されている。社交辞令だ。


「服装は、洗って返してくれるならお金はいらないわ。買い取りなら10,000Gってトコね。私のお古だけど魔法耐性がある服だし悪くないわよ」

「鞭をサービスして貰ってますし、買い取りしますよ」

「ふふ。ありがとう。古着に出すより得しちゃった」


 なんか、ボスを倒して裕福だった予算があっというまに消え去った。

 残金は379Gしかない。これは、カーラ用の首輪とかサクラさん用の獣耳は後回しだな。


 時刻も良い感じになったので、宿屋に戻ることにする。

 ……サクラさんとカーラが仲良くしてくれるのかが未知数で不安である。

先日執筆していたテキストでは8行目で死亡していた奴隷さん。

何故か生き残って仲間になりました……

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