肉を食べられる、唯一のレストラン ~ただし、代償が必要です~
しいな ここみ様、主催。『焼肉短編料理企画』参加作品です。
これは、焼き肉なのか……
西暦XXXX年
世界は全てオートメーション化され、生存する生物は人間のみだった。
清潔で完璧な都市。
しかしその中でも人間の原始の本能は残っていた。
都会の地下街にある目立たない一角にある店。
看板は出してない。
しかし噂を聞きつけた人たちが 今日もドアをノックした。
迎えた白髪の店主は、客に告げる
「 確かにこのレストランは、唯一肉を提供できる店です。しかし、お客様には代償を頂くことになっています」
客は焦りながら答えた。
「もちろんだ! 金ならある!」
「お金だけでは、ないんですよ」
店主は再び告げる。
「それも充分承知している。私はもうこの歳だ。そんなに長くはないだろう。今更失っても、困るものはいない。最後に一度だけでいい。私はずっと夢を見ていたんだ。子どもの頃に読んだ、本の体験をしてみたいんだ」
店主は静かに了承した。
「かしこまりました。ご覚悟があるようですので、肉料理を提供させていただきます」
客は満面の笑みを浮かべた。
「そうか、ありがとう」
「 焼き加減はどのように致しますか?」
客は戸惑った。
「……わからない……どうすればいいんだ?」
「それではミディアムレアにしましょう。あと一つ質問。どこの、『部位』にしますか?」
客は心に決めていたのか、今度は即答だった。
「左手を頼む」
「わかりました。それでは、切断手術から始めます」
どこからともなく店員が現れ、客を店の奥の部屋へ案内した。
人間以外の生物が、すべて駆逐された清潔な世界。
食用の肉は、工場で作られた人工蛋白しかない。
この社会で、本物の生き物の肉が食べたい場合はどうすればいいか?
たった一つだけ許されている方法。
それが、自分の肉を食べること。
このレストランは、法律に基づき営業されていた政府公認の場所だった。
客を案内した部屋から、たった一人の店員が出てきた。
店主は、年老いた自分の部下に声をかけた。
「お客の手術の準備ができたか?
店員は、答えた。
「できました」
静かにそう告げる彼は、杖を使っていた。
なぜなら、左足がなかったから。
「そうか」
微笑む店主は、眼帯をしていた。
なぜなら片方の目が、なかったから。
シリアスな不条理系ホラーに挑戦して、ぜんぜん不条理な結末にならなかった私はハピエン厨。_| ̄|○
最後に企画主の しいな ここみ様に御礼申し上げます。
ありがとうございます。楽しかったです(*^▽^*)




