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Twinkling Ash

作者: ほっきょくせい

物事がうまく回り始めていた。家でダラダラ過ごしていた日々が終わって毎日が何となく充実し始めて何となくいい雰囲気が巡っている。




誰かが背中を押してくれているようなそんな日々だった。




「youさんこれお願いします。」「はーい。」




学歴も職歴も碌にないyouは統計調査の仕事に何とか潜り込んでいた。彼は氷河期世代の住人でそれまでは父親の仕事を手伝ったりしていたがそれではいけないと訓練校で建築科を卒業していたがうまく就職できなかった。


家でダラダラしている日々も不味いと思い立ち役所仕事を何とか勝ち取った。


だが役所の人間も知ってか知らずか彼の履歴書の汚さと学歴の無さで一番下の小間使いをさせていた。要は力仕事だ。誰でもできる仕事しかない。それでも彼にとっては久々の充実した日々だった。




「ただいま。」


「お帰り。おばあちゃん亡くなったって。」


「マジか。」


「あなた喪服あったっけ?」


「ないね。」


「じゃあ買いに行かなくちゃ。」




そこそこいい年の男が母と喪服を買いに行く時代。


こんなだらしがない男に寄って来る女性もおらず独り身だ。


彼自身は安定した日常生活を取り戻したい一心だったようだが相も変わらず自堕落だ。だが必死に変わろうとしていた。



無精ひげで安い喪服を購入した。


近所の喫茶店に入って久しぶりに母と話した。




「向こうに行ったら整理しなくちゃな。」


「整理するものあるの?」


「you。お葬式も大変だよ。ちゃんと手伝ってよ?」


「・・・。」



実家暮らしの長い自分に何ができるのか。


そんな疑問を頭によぎらせながら新幹線に乗り込んだ。


新幹線に乗ってからビールを煽るように飲んだ。ばーちゃんが向こうに行ってしまう。お祭りだ。




「すいませんビールください。」


「ちょっとyou まだ飲むの?」


「お祭りで酒飲まない奴があるか。」


駅弁を食らいビールを煽る。


悲しみを消すように必死に食べた。


先に着いていた父親が駅まで向かいに来ていた。


酒臭い息子を見ても父親は何も言わない。



祖母の家に着くと父親の弟つまり叔父がいの一番に話しかけてきた。



「お!youちゃん来たな?」

「あ。どうもお久しぶりです。」

「元気そうだな。ちょっと太ったか。ガハハ。」



こんな具合だ。この叔父は父親と何十年も一緒に仕事をしていた。叔父には3人息子がいるのだがその一人、カズが今も父親と一緒に仕事をしている。


3人の兄弟達も挨拶してきた。


「どうも。お元気そうですね!」

「こんにちは。」


こんな具合だ。


カズとも仕事をしたことがある。


仕事が気に入らなくてyouはその度に仕事を放りだし抜け出していた。カズも何度も諦めたyouを咎めずに受け入れていた。


カズはスッとタバコを差し出したが、youは受け取らなかった。親の前でタバコは吸ったことがない。


親達といえばもう必死に通帳やら印鑑を捜索していた。


逃亡した犯人を追うように。




久々にきた田舎の空気は澄み渡っていて気持ちがよかった。


ばーちゃんは穏やかに唯々眠っているようだ。


山脈が綺麗だ。




ばーちゃんと最後に会ったのは東北のでっかい地震の前。


ばーちゃんの家は石の束の上に建っている。年代物だ。


それでも倒れなかった。気仙大工の粋な仕事のおかげだ。




帰り際父親と運転を代わったのだが、祖母の家を離れて高速に乗った時に眩暈と悪寒を感じて直ぐに運転を交代した。


こんなことは初めてで物凄く嫌な予感がした。


その後、数か月後に大きな地震があり祖母は体調を崩した。


最後執拗に印鑑と通帳それに写真の位置を教えてきた。


それに電話してきた時は東京に来たい旨を話していた。


もう会えない事を覚悟していたのだろう。





ばーちゃんは家から近くの斎場に移っていた。


父親と母親が結婚式をしたところでもある。


ここで一晩寝ずの番をして送り出すのだ。


ろうそくの火は絶やさない。




従弟の3人とyouで祖母を見守る。という名の酒盛りだ。


お別れ会で残りに残った揚げ物と刺身をたらふく食べて酒を飲む。


時折ばーちゃんの顔を拝みながら。




カズはyouに何度も何度も何で仕事が嫌になったのかを聞いてきた。


ここでyouは当時の心の弱さを始めて打ち明けた。


ばーちゃんと従弟とyouの内緒話は朝まで続いた。





朝になると両親と親族一同が集まって出棺された。




火葬場について最後のお別れだ。


youは祖母の顔を優しくなでて手を握った。


あの時。触ってもらったほっぺのお返しだ。


もう涙がこぼれそうだった。


慌てて親族の一番後ろに離れた。


ばーちゃんサヨナラ。


行ってらっしゃい。


いつも別れの時はこうだ。




その時事件が起こった。


あらーこんなに細くなってしまって。


親族も誰も知らない人だ。


みんなで顔を合わせてあの人誰だ!ってこそこそ話し始めた。


だが人違いだ。火葬場は大爆笑で一気に笑顔であふれた。


ばーちゃんは亡くなってまで友達を作ったのだ。




祖母は絶対に来た人にお茶だのみかんだの何だのを食べさせていた。


労いの人だ。


若いガソリンスタンドのあんちゃんとまで仲良くなっていたのだから驚きだ。




「それでは最後のお別れです。」




スイッチが押された瞬間が本当につらかった。


何もしてあげられなかった悲しみであふれた。




親父は雲になっていく祖母を見送りながらカズからタバコを貰っていた。youは母とすぐそこの桜を見ていた。


寒桜が咲いていた。可愛く美しかった。




空は青々としていて少し風が強かった。


旅立つ日には格好よすぎだ。




骨になったばーちゃんが眼の前にいる。


受け入れなければいけない現実だ。


大腿骨が大きくて骨がキラキラしている。


父親と叔父が骨を骨壺に入れていく。


続いてカズとyouで骨上げをしていく。


親族も同様だ。


叔父が残った骨をほうきと塵取りで取っていく。

何故かyouに手渡してきたのだ。


youが箒で骨を集めると粉々になったばーちゃんがフワフワと舞う。


ダイアモンドダストの様に薄暗い部屋を舞う。


「ばーちゃんみんなで吸おうか。」


思いっきり深呼吸をした。


キラキラのばーちゃんに抱きしめられてる感じがした。


ばーちゃんありがとう。

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