63.ヒロインなんですが友人の一面に驚いています
セージと共に地下遺跡に閉じ込められたあの地震の後、被害の調査をした結果、かなり局地的な地震ということで、幸い町に被害はほぼなかったことがわかった。
とはいえ、震源地近くの長いこと空き家になっていた家屋の倒壊はあったようで、今後空き家についての取り締まりを変えていくらしい。
死者は出なかったそうだけど、揺れに驚いて転倒したや物が落ちてきて当たった等の軽症の人は居たようだ。それでも、遺跡の入り口を塞ぐような岩が落ちてくるほどの揺れだったのだから、その程度の被害で済んだのは不幸中の幸い……もはや、奇跡といっても過言ではないのかもしれない。
結構揺れたと思ったのだが、この世界にはテレビも緊急速報も震度を正確に測るものもないようなので、よくわからない。
改めて前世は恵まれた時代に生きていたんだなぁ、と思う。
それにしても、あの地震でこの程度の被害に収まるというのも、国がちゃんとしている証拠なんだろう。
遺跡の方も建築物に多少の欠けはあったけど、やはり数千年も残っている遺跡というものは元々の強度もあるみたい。
ただ、地下遺跡の復旧作業やこれからの地震が発生する不安もある為、遠足地として消去法で動物園に決定した。
と、いうわけで今日は遠足が決行となる運びとなったのである。
「可愛い~!」
私は下見の時に訪れた、大好きなふれあいコーナーにコルザとミルティーユにいる。
本当はドラゴンの卵を見に行きたかったんだけど、やはり同じようなことを考えている人が多いみたいで、すごい人の列だった。
まぁ一般来場者に遠足の生徒たちがいれば、ここまでの状況にもなってしまうのかもしれない。
それならばと、近くのふれあいコーナーで楽しんでから、少し時間を置いて3人で行こうという話になったのだ。
小さな羽の生えたうさぎを手の平に乗せて頬ずりしながら、ふわふわの白い毛を堪能していると、その様子を見てコルザとミルティーユが楽しそうに笑った。
「やっぱりアイリスちゃんのところには、いっぱい集まって来るね。流石女神の祝福を受けた人……クロトン様は、なんだろう。魅力的過ぎるのかな……」
「あはは、すごいね……」
コルザが全身に動物をまとわせているクロトンを見て、ぎょっとしている。
私も最初見た時はびっくりしたもん、魅力値が上がるとフェロモン的な物がでるのかな……。うーん、今日も凄い。
私たちを見つけて、クロトンがうさぎまみれになっている状態のまま、こちらへ近付いてきた。
「どうしたの、皆?」
「クロトンが相変わらずすごい動物に好かれてるな、ってびっくりしてたの」
「あぁ、本当に。ここの子たちってすごい人懐っこいよね。癒されるなぁ、何度だって来たいもんね」
そういえば、ゲームでのクロトンとのデートスポットは観劇が一番多かったけど、動物園も何度かあったような。元々、動物のことも好きだったみたいだ。
「本当に可愛いよね、この子達」
クロトンが手の平に一匹を乗せて、顔に近づけると、うさぎはちゅっとクロトンの頬にキスをした。
クロトンの足元や体にまとわりついている小さなうさぎ達が、嫉妬でギャーギャーと鳴き始める。クロトンはしゃがみ込み、うさぎ達に話しかけた。
「皆、落ち着いて。順番だよ」
そういってうさぎ達にウインクをすると、何匹かのうさぎはキュ~と言いながら目をハートにして倒れこみ、大多数のうさぎはキューキューとクロトンへの可愛らしい歓声を上げ始めた。
さすが、あのファン達と程よい距離感を構築できただけある。カリスマ性が凄い……。
うさぎ達を手に乗せたクロトンは何故かキラキラとして見える。
さすが魅力系キャラクター、とあっけにとられていると、横でミルティーユがバッと鞄から筆記用具と紙を取り出した。
そして、目を血走らせながら、クロトンと小動物達のデッサンをすごいスピードで描き始める。
あまりの美しさにミルティーユの創作魂に火が付いたようだ。
その様子をコルザが少し呆れたように、見つめる。「劇に使えそうな事になると、いつもこうなの」とため息をつきながら、コルザがぽつりと教えてくれた。
ミルティーユがデッサンを描き終わった頃に、ドームを見てみると、先ほどまでドームの外にまで伸びていた人の列が無くなっている。
「そろそろ空いてきたみたい。並んでる人がいないよ。行ってみようか! ……あ、クロトンはしばらくここにいる?」
「ううん、もう1回行こうかな。今度こそ、卵を動いたところを見てみたくて」
「え、卵動いたの!?」
「すごい、ようやく永い眠りから覚めるんですね!!」
クロトンの発言に、コルザとミルティーユが食いついた。
うごい楽しみにしているところに、二人の期待を裏切るようで申し訳ないと思いながらも、訂正をする。
「殿下が言うには、クロトンが言っているだけらしいけど……」
「だぁかぁらぁ、絶対動いたんだって!」
私が補足すると、クロトンがむくれながらさらに主張した。
ミルティーユはもう私の訂正もクロトンの言葉も聞こえていないようで、目をキラキラさせながらドームをうっとりと見つめている。
「早速いきましょう! 永い眠りから覚めるドラゴン……これは、良い劇の参考になる予感がします!」
「あ、待ってよミルティーユ!! アイリスちゃん、クロトン様、いきましょう!」
そう言って、ミルティーユはものすごいスピードでドームへと駆け出して行った。それを慌てて追いかけるコルザ。なるほど、劇の事となるとミルティーユはこうなってしまうのか……。
ドームに向かって走っていくミルティーユの後ろ姿を見て、思わず呆気にとられてしまった。
ミルティーユは言葉遣いも丁寧だし、大人しくて優しい文学少女のような印象だったのだが、劇につながると思うと熱量がかなり違ってくるみたいだ。ものすごい気迫……。
「……ミルティーユって大人しい印象だったけど、劇となると結構熱い人なんだね」
「劇の練習の時もすごかったよ、凄いよね」
学園祭の劇『オルキデ』の時の事を思い出してか、苦笑しながらクロトンが教えてくれる。実際の劇しか見た事しかなかったが、練習の時もあんな感じだったのだろうか。
「じゃ、僕らもいこっか」
そうクロトンが言い、手の平に乗っけていたうさぎをそっと地上に置く。
キューキューというクロトンを求める寂しい声を背に、私たちはドラゴンの卵を見にドームへ向かった。
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