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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori


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56.ヒロインなんですが必殺技を使ってみました


 今日は遠足下見当日。

 皆で待ち合わせて、ソレイユ王立動物公園にやってきたのだが、本当に異世界らしい動物園だ。


 犬や猫、鳥等、元居た世界と変わらないような動物しか認識をしていなかったが、やはりファンタジーの世界。すごい。

 手の平サイズの羽の生えたうさぎ。

 やけに野太い声で鳴くリス。

 長い尾が七色に輝いていて、歌うように綺麗に鳴く鳥。

 生態系に合わせて水晶の森、水辺、花畑、まるでマグマのように熱く炎のたぎった空間まであった。

 そういった生態系に合わせた場所も大型動物も素敵だが、触れ合える近さの動物たちには一番目も心も奪われる。


「わぁ! わたし、こんなのはじめて!」


 すべてが新鮮で、想像のはるか先をいった光景。

 今日何度目か分からないほどの、この必殺技をまた口に出した。

 今は、ふれあいコーナーにいるのだが、特にウサギを手の平に乗せた時がすごい。

 ふわっと羽をぱたぱたと動かして手の平に擦り寄ってくるのだから、もう可愛くて可愛くて。


「いやー、ほんっと、かわいいね。ほら、こんなに擦り寄ってくるよ」

「……いや、それはクロトンだからじゃ」


 魅力系攻略対象キャラのクロトンには頭や肩、手の平、膝の上、足元。あらゆるところに動物がうっとりした顔ですりすりと顔を擦り付けている。

 何か特殊なフェロモンでも出ているのだろうか……。


 そこに、うさぎが目の前でころんっと寝転んだ。

 ここだ!

 私はすかさず、両手をグーにして顎に近づけて必殺技を繰り出した。


「うわぁ~! わたし、こんなのはじめて!」


 私がそう言うと、ヴィオレがちょんちょんっと後ろから私の肩を叩いてきた。

 振り返ると、親指で雑に少し離れた場所へ行こうと合図をされる。

 なんだろう、と思いながらついていくと、ヴィオレが周りに聞こえないような小さい声で尋ねてきた。


「なぁ、おい。今日のそれ、なんなんだよ」

「え? 今日のそれって?」

「はじめて! ってやつだよ。今日だけで何度聞いたことか」


 ヴィオレが私の真似をして、両手をグーにして顎に近づけて雑な真似をする。

 そうか、そうだろうな。ヴィオレにはわからないだろうな。

 私は、少し誇らしげに胸を張ってヴィオレに言う。


「ふふん、彼女いない歴年齢だった前世を持つヴィオレには分かるまい」

「いや、お前もだろ」

「私乙女ゲーやってたもん」


 だからなんだよ、とでも言いたげな顔で私を見るヴィオレ。

 いいえ、のんちゃんだってこれをやれば男の気持ちがわかるのよって言ってたもん。

 乙女ゲームで数多の男たちをひっかけてきた彼女ならわかるはずだ。


 私はヴィオレの耳元に顔を近づけて、こっそりと教えた。


「これはね、のんちゃんに教えてもらった必殺技なの」

「必殺技?」

「これを使えば男は皆イチコロなんだって」


 それを聞くと、ヴィオレは頭を片手で抑えながら天を仰いだ。

 ふぅ、とため息を吐いて私にまた視線を向ける。

 その目は死んだ魚のような目をしていた。


「あのな、それはない」

「え!? だってのんちゃんが言ってたんだよ!?」

「いや、あの人ただの乙女ゲーオタクだろ。乙女ゲームを恋愛経験値に含めるのやめた方がいいぞ。それに見てみろ、ローラン達のあの顔」


 ヴィオレがローラン達を指差す。


「お前が今日色々なものがよっぽど物珍しくて喜んでるんだって、孫を見るような優しい顔してるだろ」


 そこにはローランやクロトンが、ヴィオレに言ったようにほっこりとした優しい顔で私を見ている姿があった。

 私たちの視線に気が付いて、こちらに小さく手を振っている。


「……で、でも! サジェス卿は!!」

「私がなんだ」

「うわっ、びっくりした」


 いつの間にかセージが後ろに立っていた。

 びくりと体をびくつかせると、また怪訝な顔をする。

 こんなにもかわいい動物に囲まれているのに、今日も相変わらず眉間の皺は深い。


 セージがその表情のまま、私に小さな冊子を突き出した。


「これを」

「……何これ?」

「ほら、あれを見ろ」


 セージが指さす先には、動物たちの柵の前に置かれたスタンプ台があった。

 子供たちが嬉しそうに並んで、小さな冊子にスタンプを押している。

 私は、セージに向き直ると、いつも険しい表情をしているのに、ふっと力が抜けたように笑って私に手渡した。


「今日の良い思い出にするといい」


 そう言って、冊子を手渡される。

 思った通り、あの子たちの持っているスタンプラリーの冊子と同じ。

 ……どうやら、セージの目にも、私はあのスタンプに並ぶ可愛い子供のように見えているようだ。


 セージは私に冊子を手渡すと、満足そうにローラン達のところへ戻っていく。

 ヴィオレは一連のその様子を見て、私にそれ見た事かと言わんばかりの顔で「な?」とだけ言う。


「……はっ、もしや魅力パラが足りないから……」

「いや、現実見ろって。完全にセージにまで子ども扱いされてただろ」


 ヴィオレに呆れた顔でそう言われるが、恋人の居なかった男の意見はあまり信用ならない。

 本当にのんちゃんの必殺技はきかないのだろうか。


 私が悩んでいると、そこにゆっくりと作業着を着た高齢の女性がやってきた。 


読んで頂きましてありがとうございました。

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