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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori


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53.ヒロインなんですがお別れはやはり寂しいです


 リズ料理を皆で食べたすぐ後に、リズ料理を町の人たちに配ることになった。

 クロトンがスタイリッシュにおにぎりを食べてマダム達にきゃあきゃあ言われたり、ロベリアンがマダム達が作ってくださったお菓子を食べ過ぎてしまったり。一頻り盛り上がり終わったところで、私たちは帰宅することとなった。

 

 明日には学校だ。

 眠っていた期間を含めても4日しか経っていないのに、とても長いことここに居た気がする。


「さ、そろそろ帰ろうか」


 ローランがそう声をかけて、私たちは帰り支度を始めた。

 帰る時、寂しく感じるかなと思っていたが、とにかく何も起こらず終わったことにほっとする気持ちの方が大きい。

 レオもレオのお父様もすごい顔をしていたが、私も同じくらい恐ろしかった。あまりにもすごい空気だったから私のせいで戦争とか、何か恐ろしいことになってしまったらと思うと怖くて……。

 早くいつもの日常に戻って、デイジーやお父様の顔を見たい。

 私は溜まった心労を吐き出すかのように、長くため息を吐いた。


「はぁ、なんとかなって良かった。レオ達の顔を見たらもう自分がどれだけの事をしてしまったか、ってもう気が気じゃなくて……」

「あはは、アイリス嬢が目を覚ますまで私も気が気じゃなくてね。酷い態度を取ってそのままにしてしまったから」

「うぅ、ご迷惑をおかけしてすみません」


 私がそう謝ると、ローランは私の頭に手を置いて優しく頭を撫でた。


「ううん、今度はこの程度で済んで良かったよ」


 そうローランがにっこりと笑った。いつもの優しくて穏やかな笑顔だ。

 ずっと険しい表情が多かったから、ローランのこんな表情を見るととてもほっとする。

 ローランは頭から手を離し、私の鼻をそっと人差し指で触れながら最後に優しく窘めた。


「とにかく、今回で分かったと思うけどアイリス嬢の力は皆に重宝されるからこれからも気を付けるように」

「フェスタン国の人がまだ善良だったから良かったが、そうじゃなかったら利用される可能性が高いんだぞ。よく心得ておけ」

「本当だね、今回の皆の様子を見て、大袈裟なんかじゃないってようやくわかったよ」


 私は改めて皆に向き直る。

 ヴィオレもそっと私の隣に立った。

 

「今回は色々本当にごめんなさい。皆、ありがとう」

「本当に申し訳ございませんでした」

「……殿下、本当にヴィオレにどんな詰め方をしたんですか?」


 相変わらず小さく固くなっている様子で思い切り頭を下げるヴィオレを見て、ますます謎が深まっていく。

 ローランに聞くもいつものあの笑顔でさらりとかわされてしまった。


「あはは、いつか笑い話になりそうなときにね」


 とても気になるけど、そのいつか笑い話になりそうな時が来るまで待つしかなさそうだ。


***


 いよいよお別れの時。

 ようやく会えた父と母。また簡単に会えなくなるのか、と思うと寂しい。

 皆が馬車に乗り、残りは私だけという時に、少し離れているところにいた母に私はぎゅっと抱きついた。


「ありがとう、元気で居てね。何かあったら、私の家に来てね」


 母も抱きついた私を力強く抱きしめ返した。


「ありがとう、あんたも何かあったらうちに来るんだよ」


 しばらく抱きついていたが、お互い体を離して顔を見合わせる。

 そして笑顔を交わした。

 そっと離れて馬車に戻ろうとした時、母が思い出したように話を始める。


「あぁ、でも結婚式には呼んでほしいね。素敵な人じゃないか、きっと大切にしてもらえるよ」

「えぇぇ、誰の事言ってるの!?」

「ほら、あの人。あの王子様! あぁ、でもあの色男も素敵ね。あの難しそうな顔した男の人もお父ちゃんによく似てるわ、あの人もきっと良い人よ」

「皆じゃん! それに、セージはお父ちゃんとは全然似てないよ。セージの方がずっとかっこいいよ」

「あら、お父ちゃんも良い男だったのよ。昔はね。まぁ、なんでも良いけど、幸せに生きるんだよ。何かあったらすぐ来なさいね。いってらっしゃい」


 また明日も会うような、いつものいってらっしゃいに少し涙が出そうになる。

 私は手を振りながら、馬車に乗り込んだ。

 馬車でヴィオレが私と視線を合わせて、二人で少し寂しそうに笑う。

 泣きそうになる私を見て、ヴィオレが優しい声で言った。


「また、すぐ来れる距離だから」

「うん、そうだね」


 馬車はゆっくりと進んだ。

 町の人たちがどんどん小さくなっていく。本当にこれで帰るんだ。

 さっきはあんなに日常に帰りたかったのに、今こうやって窓の外から小さくなっていくフェスタンを見ていると離れるのがとても寂しい。小さくなっていく二人の姿はずっと、私たちに手を振ってくれていた。


 本当に色々なことがあって、なんだか疲れた。

 でも、レオも王様も良い人だ。父も母も、あの国ならきっと幸せに暮らしていけるだろう。多分。リズだってこれから皆で食べて行けば、母たちはもっと町に馴染んで楽しく過ごせるかも。


 安心した私は、来た道と同様にガタガタとお尻が浮き上がるほど揺れる馬車の中だというのに、いつの間にか深い眠りに落ちていた。

 私の小さな心配をよそに、両親がリズ栽培や外食産業、畑の運営で名を上げすぎて、のちにフェスタン国の豪商として成り上がってしまうのだが……それはまた、別のお話。


読んで頂きましてありがとうございました。

一旦、ここでフェスタン~思い出の漬物を追いかけて~編はおしまいとなります。

良かった良かった。


リアクションやブクマ、評価をしてくださった方もありがとうございます!

嬉しいです!励みになります!

これからもどんどんと色々巻き起こっていく気がするので、これからもよろしくお願いします

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