52.ヒロインなんですが自分のケツは皆で拭きます
「この度は大変、申し訳ございませんでした。すべては私のせいです。私の身は煮るなり焼くなりして頂いて構いません。どうか、どうか国民の事は……」
レオと王様は私たちに会うなり、床に額をこすりつけた。
顔は真っ青で見るからにげっそりとしている。
私の部屋の周りにはソレイユの騎士たちも沢山並んでいたような状態だし、私は実際倒れてしまったし、ローランは怒っているしでずっと肝が冷えた状態だったのだろう。
この人たちの心労も私の行動のせいでもあるんだな、と思うと申し訳ない気持ちだ。
「あぁ、そういった話をしにきたわけではありませんから。顔をあげてください」
ローランはそんな二人を全く意に介していない様子で爽やかにそう言うと、それぞれ席について話を始めた。
「建設的な話がしたい、フェスタンの王」
ローランがテーブルの上で手を組み、真剣な眼差しでフェスタンの王を見つめた。
「我が国の公爵令嬢を使う前に、あなたにはすべきことがあったように思える。リズのことだ。聞けば、リズはたくさんあるというではないですか。雇用が無くなり、治安が悪化する前にリズを使用するといった考えは浮かばなかったのですか」
「しかし、リズは元々飼料でしたし、国民も食べようとしなかったと……」
「ならば、そのイメージを変えるべく努力すべきでしょう。まずは、あなた方が召し上がって、それを国民に見せるなり。フェスタンは国民と王の距離が近い国と聞いています。あなたのそういった行動に、心動かされる国民も多いと思いますよ」
「あぁ、そうですね……私自身が食すということはあまり思い浮かんでいなかった、これも固定観念ですな。お恥ずかしい」
そう言うと、王様はげっそりとした顔を更に暗くさせて顔を俯けた。レオも同様だ。
大反省モードに入っている王様やレオが可哀そうになって、私は慌てて声を上げた。
「あの、私。お祭りでこの女将の気まぐれリズセット、食べたんです。とっても美味しかったです。先ほどいただいたおかゆも、お腹に優しくてとても食べやすくて。町であった外仕事の人たちも美味しいって仰っていたし、入り口さえなんとかなれば皆さんにも喜んでもらえるものだと思うんです。そこで……」
私は椅子から立ち上がり、小走りで扉の前まで移動した。
扉は両扉になっていて、片方の扉にはクロトンが立っている。
私たちは顔を見合わせ、せーのと同時に扉を開いた。
「夫妻に協力していただいて、たくさんのリズ料理を作ってもらいました!」
私がそう言うと、父と母とメイドさん達がたくさんのお料理を持ってくる。
白いご飯、さつまいもの炊き込みご飯、かぼちゃのリゾット、ライスコロッケ、焼きおにぎり、チャーハンといったたくさんのご飯とかぼちゃの煮物やお味噌汁、卵焼き、漬物。ごはんに合いそうなおかずでテーブルが埋め尽くされた。
「なんと……華やかな」
「こんな食事、久々に見ますね」
「ぜひ、食べてみてください。美味しいですよ」
母が嬉しそうにそう言うと、皆でたくさんのリズ料理に舌鼓を打った。
暗い顔をしていたレオも王様の顔も少し明るくなる。
早速レオはかぼちゃのリゾットに、王様はお芋の炊き込みご飯を口に入れた。
「美味しい、これが飼料だけに使われていたなんて。なんてもったいないんだ」
「わしはこの芋とリズを炊いたものが好きだな。うまい」
「それはお芋の炊き込みご飯ですね。お芋はまだ採れたてで甘みが少ないですから、これからもっと美味しくなりますよ」
「なんと……早くもっと美味しくなったものを食べてみたいな」
喜ぶ王様の顔を見て、母はまた嬉しそうに微笑んだ。
私たちも少しずついただく。相変わらず母の作る料理はとても美味しかった。
一頻り食べ進めたところで、またローランが口を開いた。
「この夫妻の畑の作物はとても立派に育っているそうです。そういった技術を共有し、規模を広げたら雇用を生み出すこともできるはず。夫妻に聞けば、今畑仕事に加え、昼の外食産業も手掛けていて忙しいそうだ。そういったところに、人を動かす必要があるのではないでしょうか」
「仰る通りです。夫妻、是非お願いできないでしょうか」
「えぇえぇ、むしろ私たちも忙しかったから助かるくらいですよ。これからよろしくお願いします」
両親はそう言って王様に微笑んだ。
あたたかな食事が出てきたところで、穏やかに話は進んでいく。
「フェスタンの状況が落ち着いたら、リズの輸出も考えていただきたいと思っています。うちの国にも、この料理は喜ばれそうだ。保管にも優れているということだし、技術も教えてほしい。これからもフェスタンとは友好的な関係を築いていきたいと考えています」
「……こんなにご迷惑をおかけしたのに、そのようなご提案まで。本当にありがとうございます。ぜひ、こちらこそよろしくお願いいたします」
レオと王様は深々とローランに頭を下げた。
話はまとまったようだ。
私たちは顔を見合わせる。ローランはいつもの優しくて穏やかに微笑んでくれた。
良かった……無事に話も落ち着いたようだ。
このまま私のせいで国同士が関係悪化とかになったらどうしようかと思った。
ほっと胸をなでおろすと、視線を感じてそちらを見る。母だ。
母を見ると、私にこっそりと口パクで『いい男だね』と言ってウインクをしてきた。相変わらず顔の良い男が好きでマイペースな様子に、笑ってしまった。
ようやく、日常が戻ってきそうな空気。まさか、この漬物がこんな大騒動を引き起こすなんて、あの時は思いも寄らなかった。
私は漬物を口に放り込む。やっぱり懐かしい味がした。
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次は21時頃に更新予定です。
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