48.ヒロインなんですがプロポーズは謹んでお断りします
「なんでこんなところでヒロインとして覚醒してんだよ!」
急なプロポーズを前に動揺する私、頭を抱えられるヴィオレ、手を口に当てながら固まる前世の両親。そして、跪きプロポーズをしている男の子。
混沌とした状況だが、まずこの男の子が何者か知るべきだろう。
私はおずおずと手を握られたまま、男の子に聞いてみることにした。
「あ、あの……あなたは?」
「申し遅れました。私はフェスタンの王太子、レオです」
「あぁ、フェスタンの王子様ですか。……え、王子様にプロポーズされたの私!?」
私がそう叫ぶと、レオはにっこりと微笑んだ。
夏からずっと頑張っていた甲斐あり、なんとあの夏から約3か月ほどで王子様にプロポーズされるほどになったのか……。感慨深いけど、攻略対象キャラでもない人にプロポーズされるとは。隠しキャラ……? まぁ、たしかに青に近い藍色の素敵な短髪に、少し垂れている大きくて優しそうな瞳。うーん……攻略対象キャラと言われても分かるくらいにはたしかに、優しい雰囲気の素敵な男の子だ。
相変わらずフルグレの世界が分からない私が、うーん……と悩んでいると、レオは立ち上がり、私の両手を握り、ぐっと体を近づけた。
「我が国は食糧難に陥っています。田畑を蘇らせるあなたの力が必要なんです! ……あ、お名前は?」
「ア、アイリスと申します」
「アイリス! ソレイユ王国の祝福を受けたという女の子と同じ名前だ! あなたも女神のように素敵な方ですね」
いや、その女の子が私なんですが……。
私を祝福を受けた奇跡の女の子ではない、と決めつけて接してくるレオを見て、こっそりヴィオレが噴き出す。くっくっ、と小さく笑ってから息を整えて、ヴィオレが落ち着いて私に話しかけた。
「なぁ、これお前の魅力っていうか光属性の魔法が大事なだけなんじゃね?」
「うーん……」
いや、まぁ考えなくてもそんな気がしないでもない。
そうなると、私の上げたパラメーターも私の努力も無に帰する感じがするので否定したいところだが……。私は、レオの目を真っ直ぐと見た。
「じゃあ、あなたは私を好きだから求婚したわけじゃないんですね?」
「あぁ、えっと……その……いや、かわいい子だなと思いまして……」
先ほどから熱く語っていた男はどこへやら。私から視線を逸らすように視線はあちこちに行き、口調も途端にしどろもどろになったレオ。
私は思わずはぁ、とため息をついた。
まぁ、そうか。以前ヴィオレも言っていた気がするけど、怠惰に生きた16年がたったの3か月で取り戻せるはずはないのだ。
慌てふためくレオを見ながら、ヴィオレも呆れたようにレオに忠告する。
「あんたもうちょっと嘘つけるようになった方がいいぞ」
「……すみません。あの、良かったらゆっくりお話もしたいので王宮に来ていただけませんか。あ、夫妻も! リズについて聞きたい事がありまして」
父と母は驚いたような顔をして顔を見合わせ、はいと丁寧にお辞儀をした。
***
レオの住まう王宮に着いた。どちらかというと屋敷のようだ。
ソレイユにあるうちの公爵邸よりも二回りは小さい。
そんなこぢんまりとした造りだけど、王宮に縁のない生活を送ってきた父と母は、きょろきょろと目を回すのではないかというほど落ち着きのない様子で周りを見ていた。
着くなり、レオのお父様にレオが私たちを紹介した。
レオが私をアイリス・フルール公爵令嬢として招いていない事、田畑を蘇らせる素晴らしい力を持っている事、求婚をした事。更には、ヴィオレに至っては私の友達くらいにしか見えていなかった事が判明した瞬間、凄まじい勢いで私たちの目の前に床に額をこすりつけた。土下座はフルグレの世界にもあるらしい。
そんな父を見て状況が呑み込めないレオは、首を傾げている。
「も、申し訳ございません、アイリス様! ヴィオレ様! うちの愚息が、あろうことか公爵家の方に対して結婚などと……! すぐに首でも足でもなんでも撥ねさせますので、どうか、どうかご容赦を……っ!」
「へ!? アイリスって本当にあの女神の祝福を受けたアイリスだったの!?」
「この……黙れ! 相変わらず頭の働かん奴だ! 田畑を蘇らせる素晴らしい力だと!? そんなもの、この世の奇跡である光属性の魔法に決まっているだろうが!! お前も頭を下げろ! 大変失礼をして申し訳ございません」
そう言って、レオの頭を思い切り床に押し付けるレオのお父様。
私は慌てて二人の土下座を止めた。
「いやいや、あの……大丈夫ですから! そんな、顔をあげてください」
「そうですよ、そういう風に見えないコイツにも原因はあるんですから」
「ヴィオレ! 言い方!! 私だって今は努力しています!」
私たちのやり取りを聞いて、レオもレオのお父様もほっとしたような表情で顔を上げた。
私はレオのお父様に手を差し伸べ、立ち上がらせる。呆然としていたレオも、ヴィオレが少し手荒く立ち上がらせた。
前世の父と母は「うちの子たちってすごいのねぇ……」といった表情で、口に手を当てながら何やらこそこそと話している。
私はゴホン、っと咳払いをして話題を戻した。
「あの、そういうわけなのでプロポーズは謹んでお断りさせていただきたいと思います。なんですが、リズについて聞きたいとか、ゆっくりお話ししたいとレオ殿下に招かれてこちらに伺ったんです。そのお話について、お聞かせいただけますか?」
ありがとうございます、と王様は何度も深々と礼をし、客室のような場所に通された。
読んで頂きましてありがとうございました。
最近ちょっと長くなってしまってすみません。
あと、お昼にも更新したいと思います!




