47.ヒロインなんですが異国でヒロイン覚醒しました
「そう、そうだったの……」
各々気持ちが落ち着いたところで、椅子に座って皆で全員で今までのことを話し始める。
公爵家の生まれのこと。ヒロインなのに、公爵家で少々怠惰に過ごしていたらヒロインらしく生きれず、世界が少しずつ変わっている事。周りの人たちがとてもやさしい事。今が幸せな事。
これから、どうしよう。
泣くほど再会をお互い喜んだのに、私たちはもうそれぞれ違う生活がある。
母も父も思うところはないのだろうか。
会いたい、という気持ちだけで会いに来てしまったのだが、話しているうちに自分の子供達に別の家族がいるとは複雑な気持ちにならないだろうか。
話し始めてから、そんな事に気が付いて、少しずつ口が重くなっていった。
しかし、母も父も私とヴィオレが公爵家の生まれで幸せに暮らしている事を知ると、良かったと心底嬉しそうに頷く。
無理をしていないか、と心配になった私は、控えめに小さく両親に聞いてみた。
「……寂しくない? 私たちに別に親がいて、そこで暮らしていて」
「あんたたちが幸せならなんでもいいのよ」
「もし何かあったらうちにきなさい。労働者として使ってあげるから、給料は良くないけどな!」
そう言って二人は大声で笑った。
相変わらず豪快な笑い声だ。その笑い声につられて、私もヴィオレもよく笑った。
「それにしても、なんでここでも農業やってるの?」
「うーん、よくわかんないしねぇ。ここでの生き方って」
「あぁ、前世と同じ生き方なら無理に適応しなくていいし、楽だしな」
「そっかー、たしかにここの畑はずいぶん元気そうだね」
両親探しの為に町をしばらく歩いたが、その際に見かけた畑は手入れを諦められているような状態だった。しかし、家の横の小さな畑には大振りの野菜がよく生っている。
「今年は不作で困ってるって聞いたけど、大丈夫なのか?」
「たしかに天候不良で不作ではあるけど、知識があるから、ある程度のことは対応できるし。備蓄米があるからうちは大丈夫よ」
「米は備蓄しやすいからな」
「なるほど……」
「でも周りの方はねぇ……。外仕事の人たちなんて、お腹減らしながら仕事してたのよ。ふらふらで心配だったから、良かったらって私たちのお弁当をあげたの。そしたら、美味しい美味しいって食べてくれてね。そこから、おにぎり作り始めたの。今まではうちくらいしか、米を食べていなかったけどね」
「まぁ、かえってランチがよく売れるようになって家計的にはありがたいな。忙しいが」
この畑の差は技術と知識力の差だったのか。
それにしても西洋風の家の中に、前世と同じ見た目の二人がいるのはなかなかな違和感だ。まるで、珍しい観光スポットに皆で遊びに来たみたいな。
のんびりとした雰囲気で、二人からは危機感も治安の悪化に対する不安感も感じられない。隠しているだけなのだろうか。そこにヴィオレが突っ込んで聞いた。
「治安の悪化とかも大丈夫?」
「あー、たまに野菜盗まれることはあったな」
「でも、言えば差し上げますよって声をかけたら、あんまりそういったこともなくなったし。まぁでも稲の元気もないし、今年は皆だめな年なのかもね」
他国からの寄付も足りないと聞いていた状況なのに、そんなことをのんびりと言う両親。国と国民の温度差なのか、うちの両親の楽観的でマイペースな性格のせいなのかよくわからないが、ひとまず無事で良かった。
それにしても、やはり今年はだめな年なのか……。
気になった私は、両親に聞いてみた。
「ねぇ、見せてもらってもいい? 田んぼ」
「あぁ、見ていきな。もう収穫前だからあんま綺麗じゃないけどね」
そう言うと、二人は立ち上がり、外に案内してくれた。
家から少し離れた場所に大きく田んぼが広がっている。
本来なら黄金色に輝いているはずの稲穂は、くすんだ薄茶色になっている。長雨に打たれ続けたせいなのだろうか。
頭も垂れているものの、少し垂れ方が甘い気がする。実が軽いのか、風に吹かれるとカサカサと虚しい音を立てるだけだった。たしかに元気が無さそう。
「育てるの大変だったろうにね……」
町の人たちもお腹を空かせていたという発言もあったし、米がこれなら小麦はもっと悲惨な状態なんだろう。
少しでも元気になるといいな、と稲穂を見ながら祈るように願っていると、田んぼが黄金色に輝き始めた。
「え!?」
「なんだよ、これ……!」
ヴィオレと私は驚きながら、田んぼから少し後ずさる。
父と母はポカンと口を開けながら、その様子を見ていた。
田んぼから放たれた光が弱まると、父が稲穂に近づく。私やヴィオレも、稲穂に近づいた。
「さっきより、少し……元気になってない?」
「あぁ、すごいぞ……これなら今年も大丈夫そうだ」
「わぁ、良かったね! 光属性の魔法ってこんなことにも使えたんだ!!」
私が興奮して声をあげる。
父と母は、私たちよりも先に視線を向け、深々と西洋風のお辞儀をした。
何をしているんだ、と父と母の視線の先を私たちも追うと、そこには同い年くらいの一人の男の子が立っていた。
男の子は信じられないといった顔で私を見つめている。
「おい、やべぇぞ。見られちまったんだこれ」
「え? やばかったかな」
「他国だからな、アイリスの噂は届いているだろうけど、この珍しい魔法を目にしたんだし……」
ヴィオレとこそこそと話していると、男の子は私たちに駆け寄り、私の目の前に来るや否や、道端に片膝をついて私の手を取った。
「へ?」
そして、片手は左胸のあたりを押さえ、私を愛おしそうに見つめる。
状況が飲み込めない私はただおろおろと狼狽えてしまった。
目の前の男の子はそんな私の様子などお構いなしに、朗々と語り始める。
「なんて素晴らしい人なんだ! お嬢さん、私と結婚してくれないだろうか」
「え、えええええええええ!?」
どうやら、異国の地でヒロインとして覚醒してしまったようです。
……さて、どうしよう。
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