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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori


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37.ヒロインなんですがデート中に酔っ払いの介抱をする事になりました


「うわぁ……!」


 宝石のように輝く色々な動物の飴細工、大振りのお肉や野菜が刺さった串、お野菜たっぷりの新鮮なカルパッチョ等のお魚料理に、これはシナモンの香り? 何やらスパイスの香りのする黄金色の蜜がたっぷりとかかったリンゴのコンポート。この蜜は蜂蜜だろうか、とにかくとっても良い匂い。

 魅力的なものが多すぎてずっときょろきょろと辺りを見回し過ぎて、目が回りそう。

 

「お店がすごい多いね!」

「祭りのときは町全体にお店や出し物があるんだ、それにしても例年より多いと思うが」

「今回はアイリスのお父さんがお店ももっと広げたらしいよ。これ多分1日じゃ回り切らないんじゃないかな。でも回るところが多いから、人も分散されて意外と歩きやすいね」


 セヴェール子爵とクロトンに案内をされながら、私は二人の後ろをついて歩く。どちらも背がとても高いから、その後ろを歩くのは人波にぶつかることもなくて非常に楽だ。


「早速だけど、何か食べようか」

「賛成賛成! えっとー……うわぁ~、どれも素敵過ぎて迷っちゃう。どうしたらいいんだろ!」

「甘いものとしょっぱいものならどっちが良い?」

「えーっと、じゃあしょっぱいもの! あ、セヴェール子爵はそれでも良いですか?」

「あぁ、私はなんでも……アルコールが入ってるもの以外なら」

「じゃあ、あそこなんてどう?」


 クロトンが指さす先はお肉とお野菜の串焼き。もくもくと煙が出ていて、香ばしい匂いがとても美味しそう。お店を見つめる私の顔を見て、クロトンは小さく笑ってからそのお店の前まで進んでいった。おばさんが忙しそうに沢山の串を火の上でひっくり返している。


「お姉さん、それ3つちょうだい」

「あら、かっこいいおにいさんうまいわね~! もうっ、お肉1こサービスしちゃう!」

「あはは、ありがとう。はい、アイリス」


 おばさんはお肉を3本分先頭に無理やりぐいっと突き刺した。

 そして、クロトンに3本渡し、クロトンが私に1本渡してくれる。

 すごく良い匂い。お肉も香ばしくて美味しそうな匂いをしているけど、ピーマンや玉ねぎがお肉の油をまといながらもぶりんとすごく肉厚で。串に夢中でキラキラ見つめていると、おばさんが私に話しかけてきた。


「お嬢さんもアイリスって言うのかい」

「え、あっはい! そうです」

「アイリス様がお生まれになってから、ここらへんの子はみーんなアイリスだよ」

「えええ! そうなんですか」

「そうだよー、アイリス様にあやかってね」


 そんな話を聞いて居たら、「待ちなさいアイリス!」と叫びながら小さな女の子を走って追いかける女の人がちょうど後ろに駆けていく。


「ほらね! あっはっは」

「わぁ、本当だ。なんだか嬉しいな」

「お祭り、楽しんでいきなね」

「はい! 美味しいお料理ありがとうございました!」


 おばさんがにっこりと笑って手を振ってくれる。

 私たちはお店を離れて、食べ歩きをしながら、お祭りを巡っていく。

 飲食店だけではない。ジャグリングをしている人、手品をしている人、人形劇をしている人。雑貨やアクセサリー、ぬいぐるみ、レースのハンカチ等本当に多種多様なお店があって見るだけで楽しい。そして、おばさんが作ってくれたこの串も最高。甘じょっぱい味付けで、焦げたところはほろ苦くて香ばしい。豊穣祭、本当に楽しい。早くお母様やカメリアも来られるようになるといいな。

 私がそんな事を考えていると、クロトンがしみじみと私を見ながら呟いた。


「アイリスと居ると忘れちゃうけど、女神の祝福を受けた奇跡の女の子だもんね。本当にアイリスちゃんがいっぱいだ、今もアイリスって聞こえてきたし」

「大袈裟だよ。でも、私の存在をこんな風に喜んでくれてる人って沢山いたんだなぁ。嬉しいね」

「……本当にあの日は美しかったんだ」

「そうなんですか?」

「あぁ、美しいアイリスの花が降って、その年は色々な物が豊作で、本当に幸運が沢山降り注いでいた年だった。お前が生まれたのも、その年だ。ノクティ―ヌに会えたのも。本当に良い……うわっ」


 セヴェール子爵がしみじみと思い出を語っているところに、人の身長の倍ほどもある長い長い下駄を履いた大道芸人がお酒をグラスに注ぐパフォーマンスをしている時に、誤ってセヴェール子爵の頭にドボドボと降り注いでしまった。


「うわぁ、ごめんなさーい!!」

「あぁ、大丈夫です大丈夫です~……って、これ酒か! やば」

「え、どうしたの?」

「父さん、お酒すごい弱いんだ」


 セヴェール子爵は俯いたままふるふると震え始める。

 え、何かショック現象とか? お医者様呼んだ方が良いかな。

 私があたふたとしていると、クロトンは頭を抱えながら大きくため息をつく。


「あぁ、こりゃだめだな」

「え!? わ、私急いでお医者さん呼んで……」

「あぁ、違う違う……すごい泣き上戸なだけなんだ」

「……へ?」


 クロトンがそう言ったや否や、セヴェール子爵は天を仰ぎながら大声で泣き始めた。


「うあああああああああ、ノクティ―ヌううううう!! こんな宝物を産んでくれてありがとううううう」

「ちょっとごめんね」


 クロトンがそう言うと、セヴェール子爵の首辺りに思い切り手刀を入れる。

 セヴェール子爵はがくっと意識を手放し、セヴェール子爵をクロトンが雑に肩に担いだ。


「ごめん、アイリス。ちょっと休もうか」

「ううん、全然いいよ。果実水とか一応買っておこうか。ちょうどあそこにあるみたい」

「あぁ、ありがとう。あそこのベンチで休んでいるから」


 クロトンは賑やかなお祭りから少し離れた木陰のあるベンチを指差した。

 二つ並んでいて幸い、どちらも空いているようだ。


「じゃあ、買ったらすぐ行くね」

 

 セヴェール子爵を担ぐクロトンを背に、私は果実水を買いに行った。

 お父さんを担ぐクロトンの姿は、あんなに不器用であんまり関係がうまくいっていないと言っていた親子の姿には見えなくて、思わず顔が綻ぶ。

 私はセヴェール子爵の為に果実水を買いに急いだ。


読んで頂きましてありがとうございました。

最近海外のお祭りや行事や屋台の様子をようつべさんで見るのが好きです。

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