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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori


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36.ヒロインなんですがデートってこんな感じなんでしょうか……


 ガタゴト揺れる馬車の中。体がカチコチで疲れてきた。

 馬車に揺られている時間が長い訳でも、乗り心地が悪い訳でもない。

 今朝クロトンの迎えがあり、豊穣祭へ向かう為、その馬車乗り込んだ。何故体がカチコチで疲れているかというと、その馬車で私はピシッとした姿勢で体勢を崩さずに座っていたからである。……というか、崩せるはずがなかった。

 ちなみに、それは初めてのデートに緊張しているからではない。


「あの、お久しぶりです。セヴェール子爵……」

「あぁ、久しぶりだ」


 まさかの父子同伴のデートだったからだ……。

 前世で男性とデートをしたことがない私だけど、デートに親を連れてくるってNG行為だったんじゃないの!? よくSNSとかのありえない彼氏の行動とかで炎上してたよ!? と思ったが、そもそも私が勝手にデートだと思い込んでいただけで、別にデートと言われた訳でもない。

 それに条件があるとも言われていた。


「条件……」

「しっ!」


 セヴェール子爵を見てそう呟くと、口に人差し指を当ててクロトンが私が何か言うのを止める。

 私はクロトンを静かに睨みつけるが、クロトンは苦笑しながら私に手を合わせるだけだ。

 ここまで衝撃的な条件を連れてくるなら、一言事前に言っておいてくれたらいいのに!

 セヴェール子爵がその様子を見て不思議そうな顔をしていたが、そもそもお父様が私の目の前に座られているって、結構気まずいのだけど。せめて、クロトンは目の前に座ってくれないだろうか。

 私とクロトンが静かな争いを繰り広げている中、セヴェール子爵は何か言いたげな表情で私を見た。どうしたんだろう、と目線を合わせると、緊張した面持ちで口を開いた。

 

「その……学園祭ではありがとう。あなたのおかげでとても良い機会に恵まれました」


 セヴェール子爵がそう言って深々と頭を下げる。

 頭を下げた拍子に馬車が思い切り揺れて、セヴェール子爵少し前に倒れるような姿勢で窓に頭を強かにぶつけた。


「だ、大丈夫ですか! というか、私何もしていませんよ! 主役のお父様と一緒に見られて光栄でしたよ、こちらこそありがとうございました」


 私がセヴェール子爵が座り直せるように支えながら慌ててそう言うと、セヴェール子爵はいつもの渋い強面からふっと力の抜けたような笑顔を見せた。笑った顔は少し、クロトンに似ているかもしれない。

 不器用なだけで、この人も悪い人じゃないんだよな、と改めて思い直すと、少し馬車の空気が良くなった気がする。息が吸いやすくなった。

 私はセヴェール子爵とクロトンに改めて、笑顔で伝える。


「私、豊穣祭初めてなんです。今日は楽しみましょうね!」


 馬車は静かに豊穣祭の開会式会場へ向かって行った。


***


 到着し、馬車でカチコチになった体をぐーっと伸ばしながら降りた。

 馬車から降りた瞬間に、町全体がおいしそうな匂いで充満しているのに気が付く。肉や魚が香ばしく焼けている匂いと、甘い蜜を煮詰めたようなスパイスが入っているような不思議な甘い香り。その美味しそうな匂い達で朝ごはんを食べてきたのに、お腹はぐぅっと主張してきた。

 石畳を埋め尽くすほどの屋台の列をきょろきょろと見渡しながら、開会式の会場へ向かう。既に会場はものすごい人で溢れかえっていた。皆、とても楽しそうだ。

 この規模や人々の様子から、ゲームになかったこの豊穣祭というお祭りがどれほど大切なものか感じられる。

 どこからか聞き覚えのある気のする楽団の演奏が耳に入ってきた。

 街を彩る鮮やかな色とりどりの旗や、楽しそうな人の様子、明るく壮大な音楽で、気分がどんどん高揚していく。


 到着したのは開会式10分前ではあったのだが、開会式に居ても、ローラン達がいる前方は遥か遠く過ぎて何も見えない。

 セヴェール子爵はその人込みの後ろにきちんと並び、私とクロトンは少し離れた壁際に立ち様子を見ることにする。本当は開会式二人きりになると、クロトンはセヴェール子爵に聞こえないように私の耳元に顔を近づけて話し始めた。


「いやぁ、アイリスが一緒に居てくれて良かったよ。実は父から久々に豊穣祭に誘われたんだけど、あの口数の少なさだろ? 流石に二人だと気まずくて」

「もう、最初から言ってくれたら良かったのに」

「言ってたら来てくれた?」

「え? ……うーん、どうだろ。よくわからないけど、多分……」


 改めて聞かれると、確かにそれならデイジーにお願いしてデイジーと二人で回っていたかもしれない。クロトンはほらね、と得意げな顔で笑っているが、それにしたって一言は欲しいものだ。

 私が少し不満そうな顔をしていても、それにあまり気を向けることなく、賑わう会場を見つめながら話し始めた。


「それに父がね、アイリスのこと結構買ってたんだ。アイリスのこと良い子だって言ってたし、今回アイリスがいるって言ったらちょっと嬉しそうだったよ」

「そうだったんだ、うーん。特に何もしてないけどなぁ」

「あはは、アイリスのそういうところって本当に良いよね」


 クロトンが高らかに笑っているが、私のそういうところってどういうところだろう。学園祭の時は本当にミルティーユのおばあ様に助けられた記憶しかないので、何がセヴェール子爵にとって良かったのかわからない。でも、とりあえず好印象を抱かれているようで良かったと思う。

 クロトンとそんな話をしていると、大きな拍手が聞こえた。あまり、よく見えないが、何か台に乗っているようで小さく人の姿が見える。そして、豊穣祭開会の挨拶が始まった。

 小さくてよく見えないが、あの方はおそらく陛下……つまりローランのお父様だろう。


「豊穣の女神に感謝と祈りを!」


 前半の声は遠くてよく聞こえなかったが、その力強い声が響くと同時に花火が打ちあがり、わぁっといった歓声が街に響いた。昼間だというのに、空には色とりどりの火花が咲き乱れている。残った煙も赤や黄色、水色に近い青色等様々な色で空を細く彩っていく。

 こんなに立派な開会式だとは思わなかった、私は驚きと感動で口をあんぐりと開けながら花火を見ていた。


「あぁ、始まったみたいだね」

「楽しみだね!」

「まず、どこからいきたい?」

「えっと……どうしよ、初めてだからよくわかんないや。どこがいいかな」

「そっか、そうだったね。じゃあこういうところでの立ち振る舞いは僕に任せて」


 そう言って、少しだけ声を落として私にウインクをするクロトン。

 クロトンの容姿にウインクという組み合わせは魅力値が天元突破してしまっているので、少しドキッとしてしまった。

 恋愛耐性のない私には、クロトンのようなちょっと軽薄な男の子の仕草は心臓に悪い。そういえば、ヴィオレもクロトンに動揺していたな。今世でも、私とヴィオレは似たもの姉弟なのかもしれない。

 ふふふ、っと笑いながらクロトンとセヴェール子爵に駆け寄り、行きましょう! っと豊穣祭へ繰り出した。


読んで頂きましてありがとうございました。

スピンオフをいれるとあっという間に40話になってしまいました。

読んでくださっている方、いつも貴重なお時間をくださってありがとうございます!

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