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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori


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35.ヒロインなんですが初デートイベントが発生しました!


「え、クロトン!?」


 扉を開けると、応接テーブルに優雅に足を組んで座っているクロトンがいた。

 こちらから顔は見えないが、向かいにはローランとセージが座っているようだ。

 クロトンは私たちの声に気付き、小さく手を振ってきた。


「やぁ、アイリス。ヴィオレ。僕も今日から生徒会メンバーだから。これからよろしくね」


 またまた、ゲームには無かった展開。

 私は応接テーブルまで駆け寄り、クロトンの隣に座った。


「えーそうなんだ、よろしくね! でも、なんで……」

「あぁ、それは私が提案したんだ。あの演技力は素晴らしかったからね。カリスマ性もあるし、これからの生徒会や今後の私の活動にも役立ててくれるかと思って」

「そうだったんですね。でも、演劇部の活動はどうするの?」


 そういうと、クロトンは気まずそうに頬を搔き、目を反らした。


「いやぁ、やってみて思ったけど僕は役者には向いてないと思うよ」

「え!? あんなにすごかったのに? コルザもセリフ覚えも演技も凄すぎるって話してたよ」

「僕が台本貰ってから毎日どれだけ家でやってたか知らないんだよ。いやー、演劇は好きだけど、やっぱり裏方の方が好きだな。そっちでは関わらせてもらうつもりだよ」

「そうなんだ」


 劇で見た時は十分素晴らしかったし、ローランの今後の活動に役立てたいと思われるくらいにはすごいのに、クロトンの理想は違うみたい。今後、クロトンの劇が見られないことを少し寂しくは思うけど、クロトンがやりたいと思った事を見つけられたのはとても良い事だ。応援しよう。

 それに、生徒会の仕事……絶対今のままじゃ、人が足りないし。クロトンという人材が入ってきてくれたのは非常に有難いことだ。

 ヴィオレもいつの間にやらこちらへ歩いてきて、ローランとセージの後ろに立ったまま話に参加する。


「まぁ、なんにせよこれからよろしくな」

「あぁ。あ……ヴィオレには申し訳ないね」

「何が?」

「ドキドキさせちゃうかなと思って」

「なっ……おま、あれは違うからな! 急だったからびっくりしただけで」


 また、顔を赤くして慌てふためくヴィオレ。

 ローランが笑い、セージは何やらメモを取っている。最近、メモを取っている姿が多いような気がする。セージが私の視線に気づくと、何か言おうと口を開くような素振りを見せるが、結局何かを飲み込むようにしてまた閉じる。どうしたんだろうか。

 そんなセージに気付かず、ローランが話を始めた。


「そういえばいよいよ豊穣祭だね。 アイリス嬢はどうするの?」

「行く予定だけど、皆は当日どうしているんですか?」

「私とセージとヴィオレは開会式をしたら、そのまま来賓対応や祭りの出店者に挨拶をしたりして回る予定だよ。それが無ければ一緒に回りたかったんだけどね」

「例年、基本的には他国の外交が主目的になりがちだがな」

「そっかぁ……じゃあ、皆とは一緒に居られなさそうね。……そういえば、お父様がまだ帰らないのよね」


 私がそう心配げに呟くと、ローランがくすくすと笑い始めた。

 なぜだろう、と首を傾げて見つめていると、ローランが私に気が付いて目尻に溜まった涙を指先で拭いながら説明をしてくれた。


「フルール公爵は今回は他国から珍しいものを取り寄せたり色々頑張っていたよ」

「え、そうなんですか? だからほとんど家に居られないほどだったんだ」

「いろいろ許可取りとかもあって、本当に忙しかったと思うよ。アイリスが初めての豊穣祭参加だから、例年よりも張り切っていて微笑ましかったよ。相変わらず仲が良いね。いや、ほんと凄かったよ」


 そう言って肩を震わせながら堪えきれないといったように笑うローラン。

 一体何をしたんですか、お父様……。あのトイレットペーパーみたいに長い手紙を出すほど恋しがっていながらも頑張ってくれているのは分かるんだけど。


「本当は私たちも時間を取ってアイリスと回れるようにしたかったんだけど、フルール公爵が他国との交渉や調整で忙しくてね。フルール公爵のいつもの職務をこちらで一部対応していたりしたから、そこまで手が回らなくて」

「ご迷惑をおかけしてすみません」


 勢い良く頭を下げる。

 お父様、王族に迷惑をおかけしてまで私の為に動いてはいけません……。そうか、だから学園祭前からあんなに忙しそうにしていたのか。

 ヴィオレも小声で「フラグクラッシャーお父様……」と呟いた。

 たしかに、もしかしたら学園祭みたいに皆で回れたかもしれないし、先生ルートは会っていない今の内から絶望的だし、お父様がいつの間にかフラグを折っている気がしなくもない。というか絶対そう。

 ローランは、私が申し訳なさそうにしていると、手を横に振りながら、慌てて説明を付け加えた。


「いやいや、うちの豊穣祭は有名だからね、参加したいという声は聞こえていたから少し枠を作ったんだ。他国との対応についてはこちらから依頼した感じもあったから、むしろフルール公爵にはこちらが手間をかけたくらいだよ」


 なんだか気を遣って言ってもらった気がしなくもないが、そう言ってもらえてほっとする。ローランは相変わらず優しいな。

 とはいえ、やはり初のお祭りイベントで友人たちと一緒に居られないのは少し残念で。もちろん攻略対象達とのデートやイベントは心躍るものなんだけど、今は大切な友人たちでもある皆と一緒に居られないのはやっぱり少し残念だ。

 やっぱりデイジーにお願いして一緒に回ってもらうかな、と思っていると、クロトンが少しだけ身を乗り出し、茶目っ気たっぷりに私の顔を覗き込み、魅力的な提案をしてくれた。

 

「ねぇ、じゃあ僕と行かない? 豊穣祭」

「え、いいの?」

「うん、1つ条件があるんだけど」


 条件なんて全然気にしない! せっかくのイベントをクロトンと回れるなんて最高!

 しかも、これは初のデートイベントではないだろうか!

 頭の中でファンファーレが鳴り響く中、私は思わず両手を挙げて喜んだ。


「いいよ全然! やったー! 豊穣祭楽しみ!」

「おいちゃんと条件聞いておけよ、お前詐欺にあうぞそんなんだと」


 ヴィオレから言われる呆れをたっぷりと含んだ一言なんて耳に入らないほど、私は浮かれていた。

 クロトンと小さく何度かハイタッチをしながら、喜びを分かち合う。パチン、と乾いた音が室内に響くたびに、隣でヴィオレが深いため息を吐くのが聞こえた。

 クロトンとはまだ生徒会メンバー程一緒に居られていないから、この機会にもっと仲良くなれるかもしれない。

 それもとても嬉しかった。

 

「じゃあ、明日迎えに行くね」

「うん、楽しみにしてるね」


 二人で指切りをして約束をした。

 なんだか前世の友人との遊ぶ約束をしているみたいで、こそばゆかった。


読んで頂きましてありがとうございました。

初デートイベント! 良かったですね

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