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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori


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3/6

3.ヒロインなんですが攻略対象は攻略できないようです


 ヴィオレに訝しげな表情をされながらずいっと顔を寄せられた。

 ゲームとは違う展開に戸惑いつつも、私はヴィオレの問いに答える。


「え、えぇ。フルール公爵家のアイリスとは私のことよ」


 そう言った瞬間、ヴィオレはピシッとまるで凍ったかのように立ち止まった。

 なんの反応も示さなくなったヴィオレの目の前で手をひらひらするも反応がない。つんつん、と体をつついたところ、ハッと体をびくつかせて改めて私を見た。呆然とした表情から一転、まるで震えた子犬のように悲しげな瞳となった様子に思わず体を引いてしまう。


「……嘘だろぉぉぉ、俺ずっとヒロインに会うの楽しみにしてたのに!」


 彼はなぜか膝から崩れ落ち、悔しそうに床を何度か殴った。

 滅多なことではあまり動じないはずの明るくどっしりと構えた性格のヴィオレがこのように動揺しているところはゲームで見たことがなかったので、こちらも呆けてしまったのだが、それよりも気になった事がある。

 彼、アイリスのことを『ヒロイン』って言った? 

 もしや……


「ヒロインって……あの、まさかあなたも転生者だったり……する?」


 尋ねてはみたものの言いながら変なことを言っていないか、転生者なんてそうそう何人もいるはずがない、と思うとつい口調も尻すぼみになっていく。私がそう問うと、ヴィオレはバッと顔を上げた。


「あなたも……ってお前も転生者なのかよ!」


 ヴィオレが私を指さしながらすくっと立ち上がる。数多の衝撃に脳が対処しきれていない様子だったので、背中をぽんぽんと優しくたたいてあげると、彼はふぅと深呼吸をして息を整えた。

 動揺している彼には悪いが、私はこの異世界で仲間がいた喜びに、わぁと胸が湧き上がっていた。


「私以外にも転生者がいるなんて! 本当にうれしい! ……あ、だから3か月も何のイベントもおきなかったのか。だって私といい、あなたといい、イレギュラー多すぎるもんね」

「は……いや、え!? まだなんのイベントも起きてねぇの!?俺のねぇちゃんがやってた時はもう夏の長期休暇に向けてデートの誘いがあったはずだぞ!」

「ねぇちゃん?あなたがプレイしたわけじゃなくて、お姉さんがプレイしてたんだ。私もよく弟の目の前でやってたなぁ、ゲーム機1つしかないから学校からダッシュで家帰ってさ~」

「な、うちの姉ちゃんと同じ……あ、いや、ゆっくり話せる場所があった方が良さそうだな。来い」


 ヴィオレの後ろについていくと、どんどんと階段を上がり、屋上の手前の小部屋に連れてこられた。物置のように雑然と色々な物が置かれており、少し埃っぽいというか薄暗い部屋だ。

 何度もあった上り階段にぜぇぜぇと息を切らした後にそんな部屋に入ったものだから、ゲホゲホと大きく咳をしてしまった。

 少し古そうな椅子が何脚か置かれていたので表面の埃を手で払って座る。ヴィオレも少し離れたところにあった幾分かきれいめな椅子を引いて私と向き合う形にし、長い足を組んで座った。


「悪いな。生徒会室はローランがいるし、屋上は万が一人に聞かれてもなと思ってこんな場所に」

「ハァハァ……ゲホッゲホッ、ん‘‘ん‘‘! ううん、大丈夫。ふぅ……それにしてもこの世界に私以外にも転生者がいるなんて思わなかったよ」

「はっは、いや俺も! 最初は転生するにしたってねぇちゃんがやってたゲームかよ! って思ってたんだけどさ、良い世界だったし良かったよ。ローランは本当に良い奴だし」

「へぇ、ローランってすぐ近くにいる人にもそう思われるほどやっぱり素敵な人なんだね」

「あぁ。天才肌タイプなのに必要以上ってくらい努力してるのを小さいころから見てるんだ。だから、アイツの支えになりたくて俺も騎士スキルもバシバシあげてんだ」


 とても嬉しそうにローランについて語るヴィオレ。

 転生者と言っても、結局ヴィオレはローランが好きで彼を支える騎士なことは変わらなさそうだ。ヴィオレはローランとのこれまでのことを細やかに話してくれた。


「……というわけで、俺は絶対ローランに幸せになってほしいと思っているし。この国も好きだから、ローランの嫁、次期王妃には良いやつになってほしいって思ってるわけよ。だからヒロインにはローランルートにいってほしいなと思いつつ、アイリス絶対可愛いだろうな~俺も好きになっちゃったらどうなっちまうんだろうなって思ってたらさ。いや……その……何がどうしてこうなったんだ?」

「何がどうしてって?」

「あぁ……っと、いや、その……」


 先ほどまで饒舌にローランについて話していたはずのヴィオレの口がどんどん重くなっていく。しばらくもごもごと小声で何か言いよどんでいたが、急にあっと何かに気付いたように表情を変えた。


「そういえば、ゲーム権の為に学校からダッシュで帰ってたって言ってたよな?」

「そうそう。帰宅部のくせに毎日ダッシュで帰ってたせいか私結構足速い方だったんだよ」


 自慢げにふふん、とそう言うとヴィオレはうーんと急に考え込んだ。


「……あのさ。いや、さすがにそこまで出来過ぎてないとは思うんだけど……。もしかして、前世花井花穂だったりする?」

「え!? そうだよ!?」

「やっぱりねぇちゃんかよぉぉ!」

「……えぇ! たけるなのぉぉぉ!?」


 立ち上がり頭を抱え天を仰ぐヴィオレとあまりの衝撃にたじろぐ私。

 転生すらなかなかないことのはずなのに、まさか自分の家族が傍にいるとは全く考えもしなかった。

 でも、改めて考えてみるとヴィオレは攻略対象の一人だ。その攻略対象が弟だったということは……

 

「うわぁぁぁぁん!! 攻略対象が弟とか攻略できないじゃん!!」

「いや、そこかよ! てか、ねぇちゃんなら話は別だ!はっきり言う!」


 ヴィオレルートを思い出しながら泣き叫ぶ私をビシッと指さしてヴィオレが向き直る。


「なんでそんな()()()()()なってんだよ、アイリスが!」


 大声で指摘された衝撃波で頬のお肉がぷるんと揺れた気すらした。


読んでいただきありがとうございました。

若いころにちゃんと食べないと骨が脆くなるかもしれないので結果的に良かったら良いですね。

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