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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori


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22.ヒロインなんですが私の知らない設定が多いです


 ヴィオレは淡々とクロトンの家庭の事を説明しながら、書類の整理を進めていく。

 それに対して、衝撃的な事実に私の手は完全に止まっていた。


「セヴェール子爵家は結構歴史ある古い家なんだよな。まぁ普通の貴族でも、女優との結婚って賛成するところって少なそうだけど。当時の当主、クロトンのじーちゃんとばーちゃんが許さなかったんだよ。で、いつの間にか女優の恋人は姿をくらました。そのじーちゃんばーちゃんが亡くなって何の障壁もなくなった頃には恋人の行方も知れず。もしかしたら子供がいるかもしれない、という疑惑だけを残して」

「そんな……」


 言葉を失った。

 ゲームでのクロトンもそうだったのだろうか。そんな話、一度も聞いたことがなかった。

 ただ、思い返すとデート先は観劇が多かったかもしれない。

 そもそもゆる乙女ゲームで平和な世界観のゲームのキャラクターの背景にこんな辛い過去があったなんて考えもしなかった。

 ヴィオレは変わらず手を動かしながら話を続ける。


「今の当主、クロトンの父親はずっとその女優も子供も探していたみたいだ。警備とか捜査関連でよくうちにも来たりしてて俺も何度か顔を見た事あったんだ。そんで、洗礼の時に何人か庶民で魔力がある子がいることがわかった。貴族じゃない人間に魔力があるのはかなり珍しいからな」

「あぁ、そっか……本来10歳で洗礼があるもんね」


 ゲームの舞台の前にある事については私も知らなかったが、この世界で生まれてから知った。

 王立魔法学園は魔力のある子は入学が必須。魔力については、10歳の頃に魔力の有無と属性の確認のために洗礼を教会で行う。大体はそこで属性が分かるらしい。まだその時は傾向がわかるくらいで、実際に使えるようになるのはずっと後。16歳頃から魔力量が安定してきて使用できるみたい。

 私は色々あって、屋敷で10歳頃に洗礼を受けているらしい。覚えてないけど。


「その洗礼のおかげで、ずっと探していた現セヴェール家当主がようやく息子を探し当てられたってわけ。で、養子にした。とまぁ、こういった流れでさ。こういう経緯だから、女優って職業に偏見のある貴族はそんな人間の子は~とか貴族教育を受けてなかったとかいろいろ嫌味言うやつもいるんだよなぁ」

「え!? そんなこと言う人いるの、フルグレに」

「いるよ、そりゃ。あのなぁ、アイリス。そろそろ自覚しろよ。ここはゲームの世界だったけど、今の俺たちには現実でもあるんだ。前世の時だってそうだったろうけど、良い奴もいれば悪い奴もいる。それに貴族社会だ、そういう目はある。嫌だけどな。……まぁ、お前にそういう情報をいれなかったのはフルール公爵だから、あの人のせいだな。娘はきれいな世界で過ごさせたいとかどうせそんな事だろ、あの人の力と親バカ力なら叶えられそうだしな」


 ヴィオレが書類を整え終わったようで、私の分を見て黙って私の分の書類も振り分けてくれる。ごめんと言って私も続きに取り掛かった。

 手は動きつつも、頭の中は今受けた説明の衝撃でいっぱいだ。頭を強く殴られた後のような、頭の中がぼんやりと鈍く動いていた。

 クロトンとも仲良くできたら良いな、なんて軽く考えていた。彼の背景なんて考えたこともなかったし、そんな過去があったなんて知ろうともしてなかった。

 貴族社会の事だってそう。皆優しくしてくれるから、フルグレ通りの世界なんだと思って生きてきた。学園に入ってもそう。今回肩を突き飛ばされた事もについては正直かなり驚いている。この世界に生まれて、敵意を向けられたのは初めてのことだった。

 ゲームの世界が平和に見えていたのは、表面上のことだけだったのか。私が見えていなかったのか。

 ヴィオレは私の落ち込みきった様子を見て、大きく咳ばらいをして空気を変えようとした。


「と、いうわけで。有名な女優の子供であんだけ見た目も綺麗なら、演劇部の勧誘も納得ではあるんだよなぁ」

「そうか……私、全然わかってなかったんだ。クロトンのこと、好物がマリネとか甘酸っぱい系で苦手なものは辛い物くらいしか知らなかった」

「コアすぎるだろ、その知識。お前それ知ってるとか言うなよ、クロトンに。不気味がられるぞ」

「あ、うん。気を付ける……」


 ヴィオレのツッコミも上の空になってしまう。

 その背景を知った今、クロトンとゲームみたいに仲良くなれるのだろうか。


「クロトンって、じゃあ今までどんな学園生活送ってたんだろ」

「さぁ、どうなんだろうな」

「女の子には追いかけられて、嫌な貴族からは嫌味を言われて。今までずっと過ごしてきたのかな」


 俯きながら色々な事を考えてしまう。

 自分が居なかったせいで、私がありのまま過ごしてきてしまったせいでクロトンがずっと嫌な思いをしていたのかもしれないと思うと、とても辛い。


「それってかわいそうだよ。今からでも私、防波堤になれないかな」

「なれるよ」


 自信満々なヴィオレの声に顔を上げる。

 なんだかんだ前世の弟だ。私の良さ的な何かをわかって素敵な声をかけてくれるに違いない。私は少しの期待を込めて顔を上げ、ヴィオレを見た。


「一応ヒロインだし、入学当初は散々だったパラメーターだって成長してるし。公爵令嬢だしな」

「あ、そういう客観的な目線ね」


 思った答えと違って少しがっかりした。でも、たしかにその事実の方が実際納得ができる。しぼみきった私の心に小さな芽が芽吹いた。


「まぁ、ねぇちゃんの。あ、ねぇちゃんって言っちゃった。アイリスの明るさとうるささと単純さでどうでも良くなるんじゃねぇか。どのみち、あそこまで騒ぎになるなら生徒会としても対応しないといけないだろうし。とりあえず当たって砕けてみろよ。ローランとセージが戻ってきたらまたそのことの相談もしよう」

「あんまり応援に聞こえないけど、そうね! そうしてみる」

「それにどうにもならなくてもローランがいる! 最終手段、王族を盾にしたらもうこっちのもんだ!」

「そうだ! 使えるものはなんでも使おう!」


 ヴィオレとガシッと腕を組み合う。


「私、とりあえず明日からクロトンにアタックしてみるわ!」

「おう、頑張れ! 俺はローランとセージに話しとくわ」

「おう、よろしく!」


 とにかく、私のせいで大変になってしまった学園生活の軌道修正を行いたいと思います。スチルで見た素敵な笑顔でクロトンが学園生活を送れるように。


読んで頂きましてありがとうございました。

あまり複雑な背景の子を作らない方向で考えていたんですが、こうなっちゃいました。

クロトンにもたくさん幸せになってもらいたいですね。

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