17.ヒロインなんですが攻略対象達の仲裁をすることになりました
セージと二人、生徒会室に戻る。
扉を開け、生徒会室の中に入ると驚きの光景を目にして私が固まってしまった。
「殿下!? 殿下なんで洗い物しているんですか!?」
「え? いや、洗い物くらいするけど」
「王子様って洗い物くらいするの!?」
生徒会室に戻ると、ティースペースで腕まくりをしながらローランがカップを洗っていた。
そういえばゲームで紅茶を飲んでるシーンとかあったし、生徒会室で出てくる紅茶がどうやって出てきてどうやって片付けられているかなんて考えた事はなかったけど、本人たちでやってたのか。衝撃過ぎる。
ローランに駆け寄ってみると、きれいに洗われたカップとソーサーが4客水切り場に並べてあり、最後の一客は今洗っているようだった。
「しかも、私たちの分まですみません。あと私がしますから!」
「あ、もう終わるから大丈夫だよ」
「すみません。ありがとうございます!」
王子様に洗い物、しかも自分の使ったカップを洗ってもらうという衝撃的な体験をした私は呆然としながら応接テーブルのあるところまで戻って、セージの隣に所在無さげに立ち尽くした。
セージは平然としているのだが、いつも当たり前にやっていたのだろうか。びっくりした。現実世界として暮らしてみると、細かなところが発覚するときの衝撃にいつも慣れない。
洗い終わったローランが手を拭き、腕まくりを直しながらこちらへ歩いてきた。
「さてと、セージちょっと話をしようか」
「あ、じゃあ私は……」
「あぁ、アイリス嬢にも話があるからそこに居てくれるかな」
二人きりで話をするかと生徒会室を出ようとするも、ローランに呼び止められる。
私に話ってなんだろう、と思いながら促されるままに応接用のソファに座る。
セージは私の隣に座り、ローランはセージの真向かいに同様に腰を下ろした。
「まずは、セージ。すまなかった。知らぬ間に追い詰めてしまって申し訳ない。お前がそんな風に考えているとは全く思わなかったんだ」
ローランはセージに頭を下げた。
セージはピクリと眉を動かし、低い声で静かに怒りを滲ませるような言い方で返した。
「王になる者がこんなことで簡単に人に頭を下げるな」
「こんな事じゃないよ、大事な事だ。セージの事なんだから」
カラッと明るく笑うローラン。
口角は上がっているけど、眉を下げてセージを心配そうに見て話を続ける。
「もっと早くに話せばよかったな。でも、お前ハードワーク過ぎて始終虚ろな目をしてるわ、壁にブツブツ何か話してるわ、白目のまま手動かして仕事している様子が怖くて話しかけられなかったんだ」
「わぁ……そうだったんだ、サジェス卿。ファンはそんな状態になってまでの執筆は望んでないから覚えておいてね。健康が一番よ」
「ローラン! 余計な事を言うな!」
顔を赤くしながらローランに怒りをあらわにするセージ。
先ほどまで大人しかったのに、いつも通りのセージに戻っていてローランは流石だなと感心する。
ローランはセージの様子を笑い飛ばし、話を進めた。
「とにかく、結論から言うと私は作家活動は続けてほしいと思っているんだ。セージが望む限りね。先ほど学生期間中までと言っていたのも、私は反対だ。お前の作った作品はお前が思っているよりもずっと評価され、人々の暮らしにも直結しているんだ。だから、もし仕事のせいであればその為の協力を惜しむつもりはない。なんとかして両立の道を探せないかといま……」
「お前は小説を舐めている! そんな政務に携わりながらできるようなものじゃないんだ。実際、父上も妹が生まれた頃ですら家に帰れないほどだっただろう」
どんだけしんどかったんだろう、執筆活動。そして、宰相もやはりそんなにも忙しいのか。
領地の端の静養地でずっとのんびり過ごしてきた私にはまったく想像ができない。大きな会議になんとなく出席している新入社員のような居たたまれない気持ちになりながら、私は二人の話をじっと聞いていた。
「……あの時は色々重なっていて、サジェス家には申し訳ないことをしたと思っている。あんな風にならないように、あの後色々と改善されて今は事情が変わっていると思う。そして、私も今現在のお前の状況から改善したいと思って……」
そこでちょうど生徒会室の扉がガチャリと開いた。
ヴィオレが何か書類を持って入ってきた。
「お、セージ見つかったか。良かった良かった。ローラン、これだろ? 持ってきたぞ」
「あぁ、ありがとう」
ヴィオレから書類を受け取り、ローランがテーブルの上に書類を広げた。
「まず、これを見てくれ」
私とセージとヴィオレはテーブルに顔を近づけ、書類を見る。
そこにはタイムスケジュールや人員配置、今後の展望について等が記載されていた。
「まだ途中なんだが、今の宰相の大体の1日の予定。何時頃には帰宅が可能か、休日はどの程度取れそうかを可視化したものだ。さらに補佐官の人員も増やす予定で、忙しいことには変わりないができるだけ余暇は作れるように努力したいと思って。今より、正直時間が取れそうだと感じられるかもしれないな」
セージは書類を手に取り、何枚か目を通した。
ローランは説明を続ける。
「今は、学業と生徒会の仕事と執筆活動だろ? 今も忙しいから余計にそんな風に思わせてしまっていたのかもしれないと思って、先ほど反省したよ。お前のの父、現宰相の仕事ぶりも不安感を持たせてしまって。私たちには言葉が足りなかったし、配慮も足りなかったね」
目の前で繰り広げられる働き方改革談議。働き方の見直しってどこの世界でも必要なんだな、とか思考が明後日の方向にいってしまう。
学生がする話とは思えない会話にただただ呆然とその様子を見ていると、ローランが急に私に視線を向けた。なんだろうと構える私。
「そこで、アイリス嬢に提案があるんだ」
ローランは足を組み、私ににっこりと微笑んだ。
読んでいただきましてありがとうございました。
以前働いていた会社の先輩が社長との会食との会話で、社長ってコンビニとかいくんですか!?って言っていて、田中さん(仮)はボクの事をなんだと思ってるのと言っているのを思い出しました。




