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ヒロインなんですが誰も攻略してくれません!~誰か攻略してください~  作者: minori


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13.ヒロインなんですが攻略対象から嫌われているかもしれません


「……やっぱこないな」


 夏季休暇明け一日目、まさかこんな一言が出るなんて私だって予想だにしていなかった。

 残暑厳しいこの季節に相変わらず庭のベンチでまた呆然と座っている。

 こんな夏季休暇後の学園生活の幕開けではあったけど、今日はなかなか調子が良かったのだ。

 クラスの子にアイリス様少し変わられました? とか、ふんわり優しい雰囲気から少し凛々しくなられましたねとか散々声をかけられ、なかなかの有頂天でいた。その気持ちのまま学園の色々な場所に出没してみたのだが、昼休みも昼食の時間も放課後の今ですらどの攻略対象キャラとも出会わない。

 おかしい。せめて知力は平均より上くらいまではいったはずなんだから、知力系キャラなら遭遇してもおかしくないはずなのに。

 時間さえあればひたすら図書館内を周回してみるも、やはり会わない。

 フルグレはパラ上げ要素がなかったから予想になってしまうけど、知力系キャラと言ったらやっぱり思い当たるのは彼しかいない。よし……。

 私は思い立って、生徒会室にいるだろうヴィオレに会いに行くことにする。

 そのまま帰れるように鞄を持って生徒会室近くまでいくと、ちょうどヴィオレが生徒会室に向かうところだったらしく、廊下でばったりと会えた。


「お、アイリス。早速誰か会えたか?」

 

 私を見るなり嬉しそうな顔でうきうきと話しかけてくるヴィオレ。あれだけ付き合わせてしまったのに成果がないことを伝えるのは非常に気まずいが、正直に答えることにした。


「いや。あの……全然」

「は? まだ会えてなかったのか、そうか……まぁでもちょうどいい。いるぜ? アイツが」


 ヴィオレがにやりと笑いながら、生徒会室の方を顎で指す。

 やはり、生徒会室にはいたか……! 


「……! やはり! 知力系キャラといえば、絶対あの人って思って来たの。やっぱりパラメーター上がったからこうやって都合よく会えるのかな」

「そうかもな、今までは絶対に会えなかったんだもんな。とにかく入れよ」

「あ……待って。いざ会えるとなると緊張が、深呼吸させて……!」

「このオタクが……」


 何度か大きく深呼吸をする様子をしらーっとした目で見られるが、気にしない。だって、パラ

上げ合宿後にようやく攻略対象に会えるんだもの。こうなってしまうに決まっているでしょ。彼は本が好きだから、今世の私とも一番話が合うかもしれない。まぁさすがに恋愛小説を読むようなキャラクターではないけど、違う趣向の本を一緒に読む恋人同士っていうのもまた良いじゃない? 

 そんな期待で胸が膨らむ中、深い息を吐いてから、いいよとヴィオレにGOサインを出す。ヴィオレは生徒会室の扉を開けた。


「はぁ……っ」


 思わず息が止まる。

 本当にいた。攻略対象キャラが目の前にいる。オリヴィア様のご指導の成果のおかげですと心の中でオリヴィア様に感謝を申し上げながら、目の前の攻略対象キャラに対峙する。


 セージ・サジェス。王家の宰相を輩出している侯爵家の長男坊。

 後に彼もそうなるだろうと、ローランの傍にいつもついていて、生徒会室は主にローラン、ヴィオレ、セージの三人が居る場所になっている。いつも眉間の皺が寄っていて、眼鏡の奥に見える細めの灰色の瞳や深い藍色の髪色と相まって結構気難しく見えるし実際そうなんだけど、だんだん優しくなっていくところが本当にきゅんっときちゃう感じの人だったんだよなぁ。読書が好きだから、読書デートが多めでインドア派な私としてはプレイ中そこも想像がしやすくて良かった。

 セージは生徒会室の書類の整理を行っていたようで、机の周りの書類を束ね直しているようだったが、手を止めてこちらを見た。


「……ん、なんだ」

「よぉセージ、久しぶり。元気にしてたか?」

「あぁ。……そちらの女生徒は? なんの用で?」


 視線をキッと厳しくして私を見るセージ。

 ん? なんでこんなに冷たいんだろう。初期でもこんなものだったっけ。私が戸惑っていると、セージは言葉を続けた。


「ここは生徒会の人間でもない、何の用もない人間が入るところではないぞ」


 10代とは思えないような眉間の皺をさらに深くしながら、警告するセージ。あぁ……初対面から好感度下がっちゃったら大変。しかしながら、ゲームのようにセリフの選択肢は表示されない。

 何の用もなく、攻略対象キャラに会えるかもと思って会いに来ちゃいました、なんて言おうものならセージルートは完全にシャットアウトされるだろう。ヴィオレもセージの様子に動揺しているようなので、そのまま私が勇気をもって答えた。


「えっと、夏季休暇前に生徒会長が書類の束に囲まれているのを見て何かお手伝いがいるかな……と思いまして」

「手伝い?……はっ」


 あわよくば、今後も生徒会室に出入りできたり、攻略対象キャラ達との気軽な逢瀬が叶う機会が得らえるようにという下心満載の私の言葉を鼻で笑うセージ。


「この私がいるんだ、手伝いなど要らない」


 力強く仰っておられますが、その割に夏季休暇前の生徒会室はなかなかにえらいことになっていましたよね……? なんて、そんなことを言おうものなら、セージルートはもう目も当てられないものになってしまうので決して口には出さずに飲み込む。

 突破口を塞がれた上に空気も重苦しくなっていくため、次はヴィオレがセージに対しておどおどと話しかけてみた。

 

「ま、まぁまぁ。好意で来てくれたんだし。それにフルール公爵家の女神の祝福を受けているアイリス嬢だぞ? きっと何か役に立ってくれるんじゃないかなぁ…なんて」


 ヴィオレはそうセージに言ってみるも、セージの険しい顔にどんどん言葉が尻すぼみになっていく。私は視線でヴィオレに頑張れ、と送ってみるもヴィオレはチラリと私を見て小さく首を振った。

 これはだめかもしれない。さらに知力パラを上げてから臨むしかないのか。せめて、ゲーム内のアイリスの初期値パラメーターが分かれば対策しやすいのに。今更ながら、フルグレがパラメーターアップのないタイプのゲームだったことを恨む。


「フルール公爵家のアイリス……?」


 そんなことを考えていると、セージの眉がぴくりと動いた。改めて私をきちんと見るセージ。先ほどの険しい表情から、不敵な笑みに表情が変わっていく。


「そうか、やはりあなたがあのフルール公爵家の御令嬢でしたか」


 お、もしかしてアイリスだと分かったら態度が変わる? そんな少しの期待を持ちながら、セージの次のセリフを待った。


「それなら尚の事、あなたの助けはいらない。帰りたまえ」


 期待は裏切られ、再度厳しい視線に戻り、そのまま追い返されそうになる。

 生徒会室の空気はヴィオレでも払いきれないほど、大変重く沈んだ空気となっていた。

 あれ、初対面のはずだよね。なんか私……嫌われてる……?

 想定外の事態に私とヴィオレはどうしたものかと顔を見合わせ、立ち止まってしまった。


読んでいただきましてありがとうございました。

私も乙女ゲームでおいおいここまでパラ上げてあるんだからこのキャラ出てくるだろ、とひたすらコマンドぽちぽちしていたことがありました。

アイリスにもぜひ頑張っていただきたいです。その頑張りを応援していただけると嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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