**◆6、 朝の市場探索 ― 屋台の匂いと会話と食べ歩き**
朝の光は街の中央市場にまっすぐ降り注ぎ、
色とりどりの屋台がその下でキラキラと光を返していた。
焼き立てのパンの甘い香り。
ハーブとオイルを混ぜた香ばしい匂い。
果物の酸味、スープの湯気。
通りを歩くだけで、二人の食欲は自然と刺激される。
「千紗、あれ見て。なんか串焼きみたいなの売ってる」
見慣れない肉がこんがりと焼かれ、
屋台の主人が香草をぱらりと振りかける。
「いらっしゃい! 旅人さんかい?
焼きたてだよ、一本どうだ!」
悠斗は千紗と顔を見合わせ、
つい笑ってしまう。
「……一本ずつ、お願いします」
「まいど! はい、美男美女さん!」
千紗は耳まで赤くした。
「び、美男美女って……」
「まぁ、否定はしないけどね?」
「してよ!?」
軽く小突き合いながら、串焼きを一口。
――肉汁が溢れた。
ほんのりスパイスが効いていて、
噛むたびに香りが広がる。
「……おいしい……!」
「これ、普通に店出せるレベルだな……」
屋台の主人が満足げに笑う。
「そりゃ“森鹿”の肉だからな。
癖が少なくて旨味が強いんだ!」
「森鹿……千紗、これが森鹿だって」
「うん……ちょっと感動してる……」
千紗の目はキラキラしていた。
市場には次々と珍しい食材が並ぶ。
紫色のトマト。
光沢のある透明な葉っぱ。
かすかに甘い匂いを放つ白い実。
千紗は吸い寄せられるように手を伸ばした。
「これ……食べられるんですか?」
売り子の女性がニコッと笑う。
「もちろん。これは“ルミナベリー”。
甘くて、スープにも合うよ。
夜に光るから、子どもが好きでね」
「よ、夜に光る……!?」
千紗の料理魂が完全にスイッチオンになる。
悠斗はそんな彼女を見て、苦笑しつつも、
どこか嬉しそうだった。
「千紗が作ったら……絶対うまいんだろうな」
「……帰ったら作るね。絶対!」
二人の手にはいつの間にか、
食べ歩きで増えた紙袋がいくつもぶら下がっていた。
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