第八十四話 ◆ 翌朝 ― 視線の変化
朝の空気は、
前日と何も変わらない。
石畳は冷たく、
市場からは焼いたパンと油の匂いが流れてくる。
それでも――
視線だけが、違った。
千紗が歩くたび、
会話が一瞬止まる。
好奇の目。
感嘆。
そして、
ほんのわずかな――
苛立ち。
「……昨日の……
治癒師だろ……」
囁きは、
背中に刺さるようだった。
千紗は、
気づかないふりをする。
けれど、
歩調がほんの少しだけ速くなる。
悠斗は、
半歩前に出た。
無意識の動き。
守る位置。
市場の端、
人通りが少し途切れる場所。
「……なあ」
低い声。
三人組の若い男たちが、
道を塞ぐ。
装備は軽い。
だが、
態度が荒い。
「……昨日の女だろ……
調子に乗ってんじゃねえぞ……」
千紗は、
一瞬だけ立ち止まる。
目を伏せ、
息を整える。
「……何か……
ご用ですか……」
声は、
丁寧だった。
それが、
逆に癇に障った。
「……その態度だよ……
男連れで……
目立ちやがって……」
一歩、
距離が詰まる。
その瞬間――
悠斗が、前に出た。
「……どけ……」
短い。
感情を削ぎ落とした声。
男の一人が、
笑う。
「……何だ……
守り役か……?」
次の瞬間、
空気が変わった。
悠斗は、
剣に手を掛けない。
ただ、
目を見る。
逃げない。
逸らさない。
それだけで、
相手の足が止まる。
「……やめとけ……」
低く、
しかし、
はっきり。
「……この先……
後悔する……」
男たちは、
舌打ちをして下がる。
完全に、
勝ったわけじゃない。
でも――
これ以上、
踏み込めないと悟った顔だった。
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原案100%筆者。
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