第八十二話 ◆ 夜の余韻 ― 静けさの中で
宿の部屋は、
いつもと変わらないはずだった。
木の床。
白い壁。
小さな窓。
けれど、
その夜は――
空気が違った。
灯りは弱く、
影が長い。
千紗は、
ベッドの端に腰掛け、
両手を膝の上で組んでいた。
指先が、
わずかに震えている。
「……怖かった……?」
悠斗の声は、
低く、静かだった。
千紗は、
すぐには答えない。
少し考えるように、
視線を落とす。
「……怖い……というより……
胸の奥が……
冷たくなった……」
今日、
助けた命。
救えたことは、
確かに嬉しい。
でも同時に、
自分の力の大きさが――
現実として、
重くのしかかっていた。
「……終わらない……
って……
分かってしまった……」
魔力が尽きない。
限界が見えない。
それは、
希望であると同時に、
逃げ場のない責任だった。
悠斗は、
ゆっくり立ち上がり、
千紗の前にしゃがむ。
目線が、
同じ高さになる。
「……それでも……
使うんだろ……?」
千紗は、
小さく笑った。
「……うん……」
悠斗は、
何も言わず、
ただ手を差し出した。
触れない距離で、
止める。
千紗は、
少し迷ってから――
その手に、自分の指を重ねた。
温度が、
伝わる。
それだけで、
胸の冷たさが、
ほんの少し溶けた。
「……一人で……
抱えなくていい……」
悠斗の言葉は、
強くない。
でも、
逃げもなかった。
「……俺が……
前に立つ……」
剣を持つ理由。
それが、
はっきりと形を持った瞬間だった。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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