星飼い
自分が星飼いに選ばれたとき、私はよろこんだ。やはり、神として生まれたならば、自分の星を育成してこそ一柱前といわれているからだ。
最近は、そういうのは古い、さまざまな神の在り方があるべき、という意見もあるのは知っている。でも、私は古い神の目も気にする方だった。
私はわくわくしながら、大神様から自分の星をもらった。
もらった星は普通だった。
私は現実を受け入れ、その星をより良くするよう努力することにした。
神の間では、最新の育星理論というのが流行っていた。「抱えて一緒に回ると、均整がとれる」とか、「音楽を聞かせると文明が芽ばえる」とか。
私はその通りに全部やった。星はたまにチカチカと光るだけだった。
個性的な星を育てたい。すてきな生き物をはぐぐみ、この寂しい宇宙をいろどるような星になれば、みんなにうらやまれるだろう。そんな神になりたい。
他の星と交流させることもおすすめだと聞いた。星飼いの集まりに行ってみた。他の星は、衛星ごっこや重力鬼ごっこで遊んだりしている。公転したら、一緒に回ろうねと約束している星もあった。
そんな中、私の星は沈黙している。私は星がこんなに話すと知らなかった。「うちの子はちょっとゆっくりなんです」と笑ってごまかしながら、冷や汗をかいた。私は私の星の声を聞いたことがない。
こんなことで、この星はひとり立ちできるのだろうか? 育星期間が終われば、私の元を飛び立たないといけないのに。
交流会から帰ってきてから、私はいっそう育星に力を入れた。少しの歪みも気になって、真球になるよう、星を磨いた。全てのことが良くない気がして、色を変えてみたり、水に沈めたり、高温に当ててみたり、いろいろやった。
「光れ、話せ、何か反応して……」と、私は毎日星に語りかけた。
それが星のためだと信じていた。……そう信じたかった。
しかし、星は沈黙し、わずかな光さえ見せなくなった。
ある日、ぱきり、と星にひびが入った。私は星を病院につれて行った。
「構いすぎです」
医者は言った。
「これからどうすればいいんですか?」
「触らずようすを見てくださいね、――では次の方」
医者は全くあてにならない。他の病院に行ったりもしたが、改善する方法はみつからない。
最近、特別な水のことを知った。
私は星に特別な水をかけた。じゅっと音がして、嫌な臭いがするけむりがあがった。これは好転反応のはずだ。悪いものが早く私の星から消えて、まともな星になってくれることを祈った。
そして、旅立ちの日が来た。飛べない星は回収されるので、回収神が立ち会う。
私の星は、その頃には汚い土くれになっていた。昨日の夜、私が激高して投げたせいで、いびつだった。
「これは完全な廃星だな」
回収神が事務的に事実をつげた。
「そんなわけない!」
私は叫び、軌道にのせようと星をかかげた。その時だった。
「あっ、ああっ――」
星は、私の神力を恐ろしい勢いで吸いはじめた。私の腕が干からびはじめ、全身へ広がっていく。喉が、舌の水分がうばわれて、悲鳴すら上げられなくなる。
「やめるんだ!」
回収神が星にむかって叫ぶ。でも星は止まらない。
赤熱したエネルギー体になり、ついには光そのものとなって白く輝きはじめる。
「恒星だったのか……。珍しいな。育星中に気がつかなかったのか?」
回収神が私に聞いたが、神力を失いすぎた私は神の形を失いかけていた。
私の星は主星のまわる軌道には乗らず、独りで飛び立った。振りかえることなく、ものすごい速さで。
「――大嫌い」
最後に聞いたのは、私の星の声だった。
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