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三分で読めるやつ【ショートショート集】  作者: 青色豆乳


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6/7

相続人はつらいよ

 俺は、大伯母の遺言で彼女の家を相続した。

 彼女は生前、葛飾区を舞台にした映画の大ファンで、聖地に土地を買って住んでいたのだ。


 大学をさぼって、庭のミントを抜いていたら、突然スーツの男が訪ねてきた。


「あなた、この土地家屋の相続人ですね?」

 名刺には《第13銀河信用金庫 地球債権回収部(さいけんかいしゅうぶ)》。


「ホッホ。本件不動産には抵当権ていとうけんがついております。債務(さいむ)が返済されていないため、本件を差し押さえます」

「は?」


 そう言って彼は、地面に銀の箱のような装置を置いた。バン、と音がして庭の真ん中に時空の穴が開いた。


「ちょ、おい!」

俺は穴に落ちかけたが、その時、ポケットの中で、大伯母の遺品の懐中時計が奇妙な光を放った。取り出すと、ぐるぐると針が逆回転していた。


 俺は直感的に気づいた。これ、もしかしてタイムリープ装置? 時計はさらに輝き、視界が真っ白に塗りつぶされた。


 ――――


 気づくと、家の前に立っていた。しかし、隣の家も向かいの家も、形が違う。そして人々の服装が古い。


「ここは……?」

「あら、ヒデちゃん?」

家から40代くらいの女性が出てきた。秀樹は父の名前だ。もしかして、目の前にいるのは。


咲来さくらおばさん!?」

若い大伯母だった。

「おばさん、俺、今から変なこと言うけど、聞いて? この家、抵当に入れないで」

急にこんなことを言って、大伯母は怒るだろうか。


「……あなた、ヒデちゃんじゃないのね。この土地を守るには過去に戻る必要があったのよ。でもタイムマシンは高いから、土地を担保にお金を借りたの」

 大伯母は古風な細い眉をきゅっとよせて、厳しい顔をした。そして、懐中時計を服の中から出してみせた。


「でも借金は払ったから大丈夫」

「えっ! どういう事?」


 俺の時計と大伯母さんの時計が震えはじめた。同一の物が近くにあるので、反発で元に戻ろうとする力が働くのを感じる。


 ――――


 俺は再び光に包まれ、元いた場所に戻ってしまった。

 時空の穴に落ちる、と思った瞬間、俺の前にもう一人の俺が現れた。


「え、俺!?」

「未来の俺だ! 早く、このUSBを法務局に持ってけ! おばさんが返済した時の領収書の写しが入ってる!」


「え、それをどうすんの?」


抵当権抹消ていとうけんまっしょうの手続きをするんだよ! 未来では、葛飾を舞台にした映画が宇宙で大ヒットして、この辺の土地が高騰しているんだ。咲来おばさんの土地を守るんだ!」


「ホッホ」

銀河信用金庫の男が、謎の力で俺の手の中のUSBを消滅させた。


「ああっ!」

俺は悲鳴を上げた。


「こいつ、こうやって何度も抵当権抹消を妨害しているんだ! おばさんはこいつと戦っていた」

未来の俺が叫ぶ。


 色々なことが起こりすぎて、俺は逆に冷静になった。


 えーと。


 つまり、この土地は守るために抵当に入っていて、抵当に入っているから奪われそうになってる……?


 これ、どこが起点なんだ?


「では、被担保債権ひたんぽさいけん消滅時効完成しょうめつじこうかんせいによる抵当権消滅ていとうけんしょうめつを主張する!」

 ちょ、未来の俺、カッコよ。


「ホッホ、あなた、少しは使えそうで……」


 男は余裕をみせたが、最後まで言うことはできなかった。

 あたりを光が包み、宇宙信用金庫の男と未来の俺が消えたからだ。


 代わりに、そこに大伯母さんの面影がある少女が立っていた。


「私、クミ。パパの娘だよ。宇宙信用金庫の男は逮捕されたよ。あの男、過去に戻って、土地の登記の偽造をくり返していたんだ」


「そーなんだ」


 俺はそう答えるしかできなかった。みんなが何を言っているか、半分もわからなかったからだ。

 過去にさかのぼって、あの男の偽造が修正されたので、問題は解決したそうだ。

 娘も同じ懐中時計で、元の時間に帰った。


 こうして土地は守られたようだ。

 俺はその後、宅建の資格を取った。

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