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三分で読めるやつ【ショートショート集】  作者: 青色豆乳


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黒い隣人

「またアイツらか」


 黒い影が視界を横切った。二羽のハシブトガラスが電線に止まり、こちらを睥睨へいげいしている。

 由美は窓から庭を眺めた。庭に赤く色づいたプチトマトが十数個、夏の強い日差しを浴びている。ヤツらはプチトマトを狙っているのだ。もう何度も食われた。


 夫と別居してから、家庭菜園だけが由美の心の拠り所だった。夫はどこに行ったのか、今では音信不通になっている。


 近年、この郊外の町でも、カラスは異常に繁殖している。生ゴミを漁るだけでなく、公園の鳩やをノラの子猫を襲う姿も目撃されていた。


 以前、植えたばかりのプチトマトの苗をカラスに掘り起こされた。それから、由美は対策をするようになった。

 まず、防鳥ネットを購入し、プチトマトを植えている土を覆った。カラスが舞い降りた時に、足をとられるようにである。しかし、そんな間抜けなヤツはいなかった。


 カラスたちは、上から滑空し、苗の中ほどから上になった実を、器用に離れた地面に落とした。そして、ネットの無い場所でゆっくりとトマトをついばんでいた。

 由美は激怒した。


 次に、CDを吊るしたり、逆さ吊りになった作り物のカラスをつるしたり、カラスの嫌がる超音波を発するという装置を設置した。


 が、効果はなかった。カラスはむしろ、逆さ吊りになった偽カラスに糞をひっかけ、超音波を出す装置の上でくつろぐ始末だった。


 ――あいつらは賢すぎる。それに、あの、人の物を盗んで堂々としている図々しさ、まるで――……。


 ある研究所から、脳を改造されたカラスが逃げ出した。それが現在の異常繁殖の原因ではないかという都市伝説が流れていた。


 そんなバカバカしい話があり得るかもしれないと思ってしまうほど、由美の家に現れるカラスは異常だった。そして、由美のプチトマトに執着していた。

 由美はカラスの鋭い目に、あざけりを見出した気がした。


 翌朝、由美は決意した。軍手をはめ、バットを構え、庭に立った。


「もうプチトマトは渡さない!」


 だが、現れた二羽のカラスの動きは彼女の予想を超えていた。一羽を狙うと、死角からもう一羽が由美を襲う。完全に統率がとれた動き。お互いの思考を理解し合っている。

 一羽のカラスと目が合った。眼光が、まるで――人間のようだった。


「……この、泥棒ガラスが……!!」


 由美は思い切りバットを振った。だがその時、足をもつれさせ、石畳の上に転倒した。頭に衝撃を感じた瞬間、視界が暗転した。


 ―――― 


 ――目を覚ましたとき、彼女は見知らぬ白い部屋にいた。


 天井から吊られたディスプレイの内容を読み上げる、機械音声が聞こえてきた。


《テスト対象:サイトウ ユミ。行動知性:レベル6。脳移植手術、成功》


 天窓越しに、たくさんのカラスがこちらを見下ろしていた。


 彼女は自分の手を見た。黒い羽根が――生えていた。


「カァー、カァー!」

突然、一羽のカラスが鳴いた。そのカラスからは、由美の夫の声がした。庭にいたカラスだった。

 二羽のカラスが、由美の側に降りてきた。寄り添うように。

 由美は恐怖を感じ、飛び出そうとしたが、体の動かし方がわからない。


「由美」「奥さん」

カラスが口々に由美に声をかけた。今、カラスの鳴き声が、由美には言葉として聞き取れるようになっていた。


 ――そんなバカな。夫とあの女は殺したのに。殺して庭に埋めたのに……。


「「私たちの世界へようこそ」」

二羽のカラスが言った。

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