ある少年と、「アカネ」という少女
自分としては過去作キャラを久しぶりに触れるというのはなんだか変な気もしますね。懐かしさよりもごめんねといった感じ。
僕は、きっと誰かの為に生きたかった。
僕はきっと、その誰かを探していた。
それはきっと。きっと、死ぬ場所や理由を探していただけ、なんだろう。
目を開ければきっと僕はまた、同じことをする。僕の望みとは真反対のことを。真反対……。何かが引っかかるけれど、僕に許されているのはただこの暗闇で考え続けることだけ。
目を開ければきっと、化け物に後戻りだから。
僕は目を開けない。
君が、僕を許してくれるまで。
――――――
アカネは、目を覚ました。
(なんだか、夢の中で夢を見ていたみたい)
何回か死んでた気もするし、体が変なことになっていた、気もする。コールドスリープのコフィンでも何でもないふかふかのベッドから起きて、鏡を見る。いつも通り寝癖がひどい。というか、寝相も。
布団だってきちんと被って、丸めて身体に巻きつけるような感じにしてたのに何故か部屋の外にあるし、枕はどっか行ったし。なんなんだろ、もう。
夢遊病なんじゃないかと思って自分の部屋にカメラを置いていたこともあるけど、布団は蹴とばし枕は投げ飛ばしで目を疑った。それ以来何も考えないことにした。
おかしいでしょ、普通に。ちなみにその日見ていた夢は、羊に囲まれているだけという普通に平和な感じの夢だった。夢覗機とかいうものの信頼度が微妙ではあるけど、基本的には間違わないから多分基本なとこは変わらないという研究がある。
そうはいっても「人間」がいた100年前の話だけど。
西暦2212年現在、私が確認した生存者はまだいない。ローカルネットワークのみではどうしようもない。
本当に、どうしようもないから困っている。
まさか起きてみたらだーれもいないだなんて、SFでももう少しまともな設定にするだろう。どーーーせ、作者が多数の人間の視点を書くのがめんどくさかったとか、そんなのだろう。うんうん。
いや、もしかすると、多数の視点を用意すると大変なことになってしまう系かも。うーん、でもやっぱりめんどくさかったんだろう。私なんかを主人公に選ぶ時点でどうかしている。
くだらない妄想はここまで。
今日も始めよう。退屈な一日を。
【Gear : Gladiator ; Lapis Lazuli】
【S All Green】
【rE : hELLO ; Akane】
英語のようで違う文字列が流れる。大文字小文字はぐちゃぐちゃだし、文法も違う。いつものことだから気にしては行けないとは思うんだけど。
私は使い慣れてしまった大剣とDMPRを手に家から出る。
DMPRというのはDMRのパンドラ版だと思ってくれればいい。ようするに、対パンドラ用ライフルということ。
その名前とは裏腹に大したダメージにはならず、せいぜい相手の行動を止めるくらいのもの。このギアという兵器の便利なところはそういった気に入らない性能をある程度調整できるところにある。
例えばマガジンを増やしてみたり(自動給弾されるからほぼ意味はないけど)、バレルを長くして初速を速くしてみたり、近接武器を取り付けてみたり、色々できる。
しかも戦闘中だろうとお構い無しに出来るから、相手に合わせて調節しながら戦うことも可能。私がサルベージしたデータ曰く、このグラディエイターというギアはそういう戦い方に向いているらしい。
武装ごとの拡張範囲が緩いらしい。へー。って感じ。
まぁぶっちゃけると器用貧乏ではあるけど、そのおかげでなんとか生き延びられているとも言える。
圧縮貯蔵しているナノマシンを節約するためにぽてぽてと歩きながら色々とデータを漁る。いよいよ今日が「震源地」の最奥部探査だし、仮想敵である「スコーピオン」を予習しておこう。
―――
スコーピオン。蠍座のパンドラ。
多数の「亜種」のデータが眠っているため、「Evolve」の影響を色濃く受けていると推測される。本体性能も非常に高く、完全態・雌型のスコーピオンは多数の子機を展開することができ、消耗戦に強く、雄型は強力な装甲と武装を持ち、短期決戦に強い。
基本的にナノマシンの消費量が少ない武装が多いが、再生産能力や安定性に欠けるところがあり、ダメージが入るほど弱体化するという欠点もある。
ただし、ナノマシン状態が不安定になってから一定時間が経過してしまうと、逆に亜種状態へと変貌し、「擬似的安定状態」となってしまう。
亜種状態は武装が固定されたり、強み弱みがはっきりするため逆に亜種にするのも悪くないかもしれないが、そこまで実証することは難しい。一応ある程度のパターンが存在するというデータもあったらしいが、噂に過ぎず、データはない。
―――
ということらしい。完全態というのは、虫で言えば成虫。人間で言えば大人。一応そのパンドラという種別の中での完成形ということになる。亜種が一芸特化型になっているのに対して、万能型という立ち位置でもある。
もちろん他のパンドラだと元から一撃特化のサジタリウスや、ピスケスとかもいるわけだから一概には言えないんだけど、大雑把な理解としてはこれでいいと思う。
さて、そろそろ震源地か。
ある程度駆逐してしまえば中々復活しないのはスコーピオンのいいところ。キャンサーみたいに無制限に増殖してしまうようなのだとこう楽じゃない。
パスコードを打ち込んで震源地へと踏み込む。
ここから先は、死地というやつ。
気を引き締めて、ゆるーく行こう。どうせ死ぬときは死ぬんだから。
―――――――――
同時刻。ある場所で。
誰かが、来た。
来ないで。
その祈りは届かない。
来ないで、来ないで!
私は起きたくない。
私は。
その願いは届かない。
いいや、端から君の願いは届かない。
死者が生者に祈って何になる?
君は、君以外の誰かによって「起こされる」、眠れる姫なのだから。
そして、誰かの手が今、君に触れた。
戦わないんかい! というツッコミはあると思う。うん。
戦いません。流石にこの「同時刻」は同じ時間って意味ですね。流石にね。




