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元人工勇者による魔族国家の育成戦記  作者: チョコメモリー
連邦歴十一世紀第一章 『人工勇者』
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連邦歴十一世紀5 『似てる』

 「何を…………!?」


 幹部の蟲人(インセクター)は槍を構え、イゼル達の後方にいた兵に目がけて一瞬で移動していた。

 何度も突きを繰り出したことにより攻撃を受けた兵の身体には槍のものとは思えない風穴が無数に開き、地面がへこんでいた。


 「何故だ…………何故私を攻撃しなかった!!」


 「おい副団長!! そんな事考えるだけ無駄だ!! 元々あいつらとは相容れないんだ。俺達とあいつらに取れる対話は戦いだけなんだ。あんたがしっかりしなきゃ時間稼ぎもできねぇぞ!!」


 幹部は笑う。言葉は分からずとも分かるのだ。死にたくないという保身のためだけに部下を死なせた私のこの様をケタケタとあざ笑っている。私の腹の中には部下を殺され憎悪する気持ちやそれを引き起こした自分の不甲斐なさなどの気持ちが複雑に混ざり合い、殺意だけが溢れつつあった。


 「…………私はアルメシア王国第二騎士団副団長ジルジ・フォン・クルーゼン。お前を殺す男の名だ!! 俺の願いに答えろ。イグニス・ルクスエスト!!」


 副団長は剣に炎を乗せ、切りかかる。炎で照らされた斬撃はゆらゆらと美しく舞い、それでいて緩急をつけた速さに目が追いつかない。しかし幹部には当たらない。彼の剣が殺意で形成された力強くも単純な太刀筋だからだろうか。それとも超えられぬ壁があるのだろうか。シルが軽視した技量の面でも今の副団長では遠く及ばない。


 「極端な男だぜ副団長」


 イゼルは思う。この場にあの蟲人(インセクター)の相手が務まるのは悔しいところではあるが副団長のみだ。自分が任されたこの役も彼がいなくては成り立たない。対話を試みようとする甘い考えも結局は部下を殺されるまで捨てはしなかった。そして今は怒りと憎悪を殺意として放出し、身を委ねている。完璧でなく優柔不断。今この状況で喜べる性格じゃない。だが…………。


 「…………糞が」


 似ているのだ。この地で行方をくらました自分の父に。親父に。傭兵団と家族……お袋と自分と弟との生活どちらにも専念せずどっちつかずで傭兵の仕事で一ケ月家に帰らなかったと思えば楽な仕事をこなして半年くらい家にずっといたこともある。そのせいか団長のくせに稼ぎは悪かったし、弟とは性格が悪かったせいか接し方を間違えてあまり良い関係性とは言えなかったよな。お袋とは何度も喧嘩していた。

 前の戦争の時も最初は行かないって言ってきかなかったくせに傭兵団が戦争に参加して部下を大量に死なせたら俺も行くと勝手なことを言って最後は帰ってこなかった。それでよく団長が務まっていたものだと今も思う。やはり親父と副団長は似てる。だから今度は勝手に死なせやしない。


 「副団長……いやクルーゼン!! お前がいなきゃ俺らみんな死んじまうんだぞ!! そんな戦い方ぁするなら副団長なんて身の丈に合わない階級背負ってんじゃねえよ!!」


 「なんだと!? 何を分かったような口をきくのだ君は。そんな事言っている暇があるのかね?」


 幹部との戦いも放り出してこちらに向かいイゼルの胸倉を掴む。

 その様子に呆れる幹部は声にならない音を響かせる。


 「諢壹°縺ェ縺薙→縺�」


 だが口論は止まらない。


 「今のお前さんは上級の俺でも勝てそうだぜ。自覚してるんじゃないか? 部下が死んだことも自分のせいで今あいつに遊ばれてるのも殺意マシマシに剣を振り回してるだけのお前の未熟さが生み出してるってことをよぉ!!」


 「私は人間だ!! 未熟さがある所も承知しているが君は無いのかね?自分のいたらぬ所をまるで棚に上げて揚げ足取りのような真似しおって―――」


 「論点をズラすなよ。それはお前と俺二人の問題だ。だがお前の騎士団での階級はなんだ? 上に立つ者が短所を堂々と見せびらかして開き直るなんて真似してんじゃあねぇぞ」


 「な、何を……上に立った者でない君が何を言ってる!!」


 「だからそれは今考えることじゃねえんだ。お前が出来ることはなんだ? 俺とくだらない口喧嘩をすることか? それともさっきみたいに剣をただ振り回すことか? 違うだろ。俺とお前が協力できる唯一の方法を思い出せ。お前の天啓はなんだ!!」


 ――不甲斐ない。部下を死なせた甘い考えも蟲人(インセクター)に遊ばれているのも自分より二十は年下の男に正論でねじ伏せられ、それでも自分の過ちを認められないこの口も恥ずかしくてしょうがない。だがそんな自分でも出来ることがあるというのならば彼の気持ちに答えなければいけない。


 「天啓は……私の天啓は天啓強化…」


 「そうだ!! お前のその仲間の天啓の効果を倍にする天啓があれば俺の速度上昇で時間稼ぎぐらいしてやるさ。これが今の俺達にできることだ」


 「分かった。熱くなってしまってすまなかった」


 「いや俺達には待たせてる相手がいるんだ。そいつにまずは言うべきだぜ」


 「そうだな…………」


 副団長は……クルーゼンは後ろに振り返りこう言う。


 「待たせてすまない。続きをしようか。君と私達との戦いを…………」


 「繧�▲縺ィ譚・縺溘°縲ゅ○縺�●縺�ソコ讒倥r騾€螻医&縺帙↑縺�h縺�↓鬆大シオ縺」縺ヲ縺上l縲�」


 覚悟は決めた。この命をこの時の為に使う覚悟を。

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