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009 『京葉線』改革と『姫電車』

ある日の真夜中、NR東日本の京葉線の東京駅から蘇我駅までの

全ての線路やホームが眩い光に覆われて、1分後にその光が収まると、

なんと複線だった京葉線が6線

(本当は8線だが、残り2線は貨物専用なのでここでは省略)に、

増線されていた。


しかも、他の路線からから離れていて、動く歩道が長々と続いていた、

京葉線の東京駅は総武線快速線の地下ホームのとなりに

4面ホームに8線が配置されていて、グリーン車用2階建て車両が2両増えて

12両編成対応のホームとなって出現していた。


また、4面のホームは、特急や快速、各駅停車用ホームに

分かれているようで、特急専用ホームと、各駅停車専用ホームには、

その12両編成が折り返せるような、長い引き込み線が奥まで続いていて、

快速専用ホームの奥には折り返し線どころか、

神田駅の方まで線路が伸びており、もう少し掘れば、

旧万世橋駅付近から地上に出て、

中央快速線に繋げられるんじゃないかと思われる線路になっていた。


そして、西船橋駅から、市川塩浜駅に入ってくる武蔵野線は、

特急列車と同じ路線を走るように配線されており、

特別快速のような仕様になっていた。

(しかも、なぜか舞浜にも特急列車ホームができていた。おそらくマーレ策?)

同じく西船橋駅から、新習志野方面に向かう線路は、各駅停車用線路に

繋がれていて、以前のような新習志野駅止まりではなく、

蘇我駅まで運行できるようになっていて、

その蘇我駅は、3面6線から、6面12線に拡張されていた。


さらに、京葉線車両センターも幕張車両センターも拡張されていて、

なぜかそこに、各駅停車用車両のE233系が10両編成で10本分の100両と、

その10両の真ん中の2両に2階建のグリーン車が付いた快速用

E233系車両12両編成が10本分の120両が、置かれていたのだった。


それぞれの車両の運転席には、

神夜かぐや るなより、地球の皆様へ』という

謎のメッセージカード(マーレ策)が置かれており、

NR東日本は、これを拾得物?として、届け出た方がよいのか悩み、

慌てて警察に連絡したのだった。


そしてNR東日本でも、危機管理部門をはじめ、関係部署はもちろん、

車両メーカーや建設会社と共に調べたのだが、車両の方は実在の車両を、

何らかの方法で、正確にコピーしたものという事しかわからず、

東京駅や複々々線が一夜にして出来上がった路線設備関係にいたっては、

もはやどうにも説明ができず、お手上げ状態だった。


さらに、線路が広がった所にあった建物は、元々存在していなかったか、

あるいは、広がった分だけ移動した所に、昔からそこに建っていたように

存在していて、そこで暮らしていた住民も、

いつ移動したのか全く気づかない状況だった。


**********************************


「これは、あなたの書いた設計図で間違いないですか」と

青年捜査官の富田が丁寧な口調で問うと


「そうみたいですね、記憶にないのですが・・・」と

急遽、NR東日本の本社に呼び出された、元大手建設会社の1級建築士は、

自分の名前の入った、京葉線の古い設計図を見て、驚きながら答えた。


京葉線は、元々湾岸地域の開発に伴って新たに計画された貨物路線であったが、

総武線沿線の人口増加に伴い、途中から旅客輸送に変更された路線である。


まず1975年に蘇我から千葉貨物ターミナル(後の千葉みなと)まで

貨物線として開業したのだが、ここから旅客用に変更されて、

1986年に西船橋まで開業し、次に1988年に新木場まで開業と、

随時東京方面に開業していき、1990年に、ついに有楽町駅に近い東京駅

(成田新幹線用のホームを転用したためこの位置になったらしい)

までの全線43キロが開通したのだという。


なので、当時の設計図があるのは、当然なのだが、不思議なのは、

その設計図には、ちゃんと8本の路線が描かれていた事だった。


しかも別の古い資料から、わかった事だが、路線建設予定地の

取得にいたっては、なんと複線以外は、国鉄に寄進されていて、

蘇我駅から新木場駅までの増線用地をゼロ円で取得できた様子だった。


さらに、そこから東京駅までの6線(新木場からは、貨物線は分岐して

東京駅には向かわない)の用地も、小森商事から積極的寄進があり、

総合的な建設費は、複線での建設費と変わらないどころか、

2/3の建設費で済みそうな事がわかり、それなら将来、

中央線と接続することも念頭に置いて、もっと近づけようと計画を変更して、

総武線快速線ホームのとなりに4面8線で建設したようだった。


「この、神夜 月と言う人物は何者なのでしょう?この時代から

関わっているとすると、かなりの高齢になるのですが・・」

立ち会っていた、富田捜査官が上司のベテラン捜査官松田に尋ねる。


「その人物については、わからん。しかし設計図をはじめ、

路線用地取得の書類も、きちんとあるんだから、問題には、ならんな」

上司の松田捜査官の答えに、NR東日本の関係者は、一様に

ホッとした顔をしていた。

なぜなら、京葉線の路線が増えた事件で、一部の自称利権者から、

NR東日本が、自分の土地を不法占拠していると訴えられていたからだ。


しかし、用地の取得済み書類が見つかったことや、

捜査官のお墨付きの言葉をもらい、

これからは、毅然とした態度で対応出来るようになったからだ。


「あとは、コピー車両か・・」ベテランの松田捜査官の言葉に、

再び、NR東日本の職員たちの顔が強張る。


幕張車両センターなどが、いつの間にか拡張されていて、

そこに大量のE233系の車両が置かれていたので、NR東日本が、

拾得物として届け出ようとしているという噂を聞いて、

これまた一部の自称所有者が、俺が置き忘れたんだと

無茶な主張をしているのだ。


「ありました!こちらが、車両メーカーさんからの納品書の書類で、

こちらが、最終試験走行の合格書類です」と、

若手の職員が分厚い書類を持ってきた。


「うん?最終試験走行の合格書類の日付が昨日、

納品日が今日になっているんだが」


(誰がいつ何処で走行試験なんてやったんだよ!

それに納品が今日ってなんだよ!)と

その場にいた誰もが、叫びたくなったが、

そこは皆、大人の対応で、無言だった。


「ほんとですね、でもまあコレも、書類じたいは本物ですね・・・。

どうしますか」


「書類が本物なら、問題ないだろ、アレは元々、

NR東日本さんの所有物だったってことだ」


(本当にそれでいいのか!)と誰もが思ったが、

(これ以上この件に触れたくない)という思いの方が皆、強かったようで、

NR東日本から『警察に調べてもらいましたが、事件性はありませんでした』

と発表されて終わった。


**********************************


日本政府としては、じっくりと調査をしたかったのだが、NR東日本は、

それから3日ほどで、他の路線に近くなり便利になった京葉線の

東京駅の地下部分と、今まで使っていた車両や複線の各駅停車用線路の

安全点検を済ますと、それらを使って早々と京葉線の複線部分での運行を

再開してしまった。

そして、複線での運転が再開されると、すぐに、残りの複々線で快速運転を

してほしいという要望が、相次ぐようになった。


なにせ、2020年から、続いていた新型コロナ対策としての、

テレワーク等出勤を控える対策が終わりつつある、2022年1月20日現在では、

ジワジワと乗客が戻りつつあり、それに合わせて混雑も戻りつつあったからだ。

そんな中で、使っていない新しい複々線の線路や対面で乗り換えられる

ホームが出来上がっているのだ。

しかも、増発用の車両まであるのだという、ならばあとは、

運転手や車掌を増やすだけとあって、不満に思う利用者たちや沿線自治体から、

新たに生まれた残りの4路線や、留置してあるコピー車両を使って、

快速や特急などを増便してほしいというメールが殺到したのだ。


それに答えるように、NR東日本は、コピー車両を使っての複々線部分の

走行試験や、他路線からの運転手移動、定年退職者の再雇用等で、人員を揃え、

わずか3ヶ月で、新生京葉線として、特急、快速、各駅車両を大増便したのだ。


また、コピー車両は、誰ともなく、かぐや姫からの贈り物電車なので『姫電車』

と呼ばれ、車体番号の最後に『カグヤ』と記入された姫電車は、

多くの人から愛される車両になった。


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