008 変換とメッセージカード
ヘロヘロになって過去から戻ってきたアラタは、
一度自分たちの部屋に戻ったのだが、マーレが夕食を創ったので、
一緒にどうぞというお誘いを受け、一風呂浴びてさっぱりしてから、
再びルナ達の部屋を訪れた。
「お疲れ様でした、先ずは乾杯しましょう」とルナとアラタには、
ビールジョッキが渡され、未成年のホタルとなぜかマーレも、
グレープジュースのグラスを持ち、乾杯した。
アラタが、先日の事もあり、飲むのに躊躇していると、
「今日は、しびれ薬は入ってませんよ。何なら私が毒味しましょうか」
とマーレが言うので、だったら信用するしかないと、一気に飲み干した。
「かー、仕事のあとの一杯はうまいな」とアラタが空のジョッキを置くと
「お兄ちゃん、なんだか、おっさんみたい」とホタルがあきれる。
「どうぞ、ホタルさんから好物だと教えていただいたので」と、
アラタの前にオムライスが置かれた。
「おお!いただきます」と、目をキラキラさせて、
すぐにオムライスを頬張るアラタに
「お兄ちゃん、今度はお子様みたい」とホタルが笑う
一つでは足りず、もう一つオムライスを創って貰い、さらにデザートに、
有名どころのアイスまでごちそうになった、アラタたちは、
食後のコーヒーを頂きながら質問にタイムに移った
「俺たちの時は、ルナが帰ってきて、すぐに傷痕が消えて、
頭の中の記憶も変わったみたいだったけど、今回はすぐに起らないのか」
「かなり多くの人の意識が変換されたので、アラタさんの時のように、
個々に変化していくと、混乱してしまうのです。
なので、こう言ったときは、地球神『ガイア』様の意志に従えばよいのです。
おそらく、夜中にまとめて、記憶変換が起きると思いますよ」
「そうなんだ、京葉線が、どう変わるのか楽しみだな」
「お兄ちゃんが、転落したり、入ってきた快速に跳ね飛ばされないように、
無事に6線に増えてるといいな」
「いえ、ホタルちゃん、将来ロボット電車が走れるよう、貨物線も入れて8線よ」
ルナ達の計画では、アラタの考えるロボット電車なら、1台1台にAIが
搭載されて走るから、現在の貨物列車の代わりにもなるだろうと考え、
最初は、貨物用線路に走らせるのだ。
「いっその事、ロボ電もルナ姉様にまかせたら?」
「いや、それはダメだと思う。自分で勉強して、自分たちで、
出来る事はやらないと」
「そっか、そうだよね。そう言う考え方が努力家のお兄ちゃんらしいな」
コーヒーを飲みながら、そんな会話をしていると、アラタは急に眠くなってきた。
「今日は疲れたみたいだ、そろそろ家に帰って寝るよ。
夕食ありがとう、おいしかった」と
立ち上がろうとしたが、眠くて立ち上がる気力がでてこなかった。
「薬が効いてきましたね」
「まさかまたか、薬は入ってないと・・」
「いいえ、しびれ薬は入ってないと、いいましたよ。眠り薬が入ってたんですね」
マーレがテヘッと舌を出す。
「お兄ちゃん、今日も添い寝するだけだよ」とホタルも微笑む
何か言おうとしたアラタだったが、睡魔には勝てず、
「zzz・・」
眠ったアラタをマーレがお姫様抱っこで、大きなベッドに運んだ。
ネグリジェに着替えたルナとホタルが、アラタの両側から添い寝をする。
「あれ、マーレさんは?」ベッドに上がってこないマーレを不思議がると、
「私は少し用事を済まして参ります。先にお楽しみください」と
部屋を出て行く。
そこには、ホタルが名付けたカルル以外にも、10羽の八咫烏がいた。
「じゃあ、このメッセージカードを届けてくださいね」と
八咫烏たちにカードを渡す。
「うん!」カルルを先頭に、カードを加えた八咫烏たちが、
次々に、人の目には見えない隠密モードで飛びだっていくと
「ふふ、一度やってみたかったんです。あの美人三姉妹のように、
メッセージカードで知らせて世間を、びっくりさせるシーン」と
独り言をいいながら微笑むマーレだった。
おそらく、アラタが起きていたら、
『あの三姉妹は泥棒で、メッセージカードは犯罪予告状で、
プレゼントを置いていくのとは、意味が違う!』と
ツッコミを入れただろう。
そして、マーレの予想通り、夜中の12時、日付が変わった瞬間に、
京葉線の東京駅から蘇我駅までの全ての駅や線路が、
光で包まれたのだった。
そして、そこに、すかさず隠密モードのカルル達、八咫烏が
カードを置いていったのだった。