030 ツールドKANSAI HS その1
「すごい、これが噂に聞く阪急電車の梅田駅ですか」
アラタ達は、ホテルで朝食を済ませると、ラッシュ時の電車の様子を
見たいと言うアラタの要望に応えて、みんなで阪急電鉄の梅田駅に来ていた。
そこには、10面9線のホームに神戸線、宝塚線、京都線の電車が
ひっきりなしに到着し、また、ひっきりなしに出発していった。
「昨日乗った、京阪電車もそうですが、東京に比べて、人口の少ない大阪に
何故、こんなに沢山の私鉄が走っているのですか」
「うーん、ある意味では、この阪急電鉄を創った、小林一三氏の成功が
あったからかな。
駅前に系列のデパートを置き、途中駅の周りには、土地を造成して、
分譲住宅を建てて売り出し、そして郊外の終点の駅には、動物園や遊園地、
そこで演劇を上演するために、専属の歌劇団の学校まで創って、
平日も休日も多くの人にその電車を利用してもらう、ビジネスモデルを、
小林一三氏が考え出したんだ。」
「へえ、じゃあ他の私鉄は、小林氏の成功を真似たんですね」
「路線自体は、阪神電車や南海電車の方が先に出来てたけど、
まあ、デパートや、分譲住宅を売り出すなどの、ビジネスモデルは、
やっぱり多くの私鉄が真似たんだろうね、でも、東急電鉄の五島慶太氏には、
小林氏が直接アドバイスをしてるから、真似られても
気にしなかったんじゃないかな」
阪急電車の発着シーンを十分堪能した、アラタ達は、宝塚や有馬温泉を
堪能するため、宝塚線に向かう。
「なるほど真似されるのが、一流の証なのですね。それに大阪を中心に
神戸と京都、この2つの都市を結ぶ路線を計画するなんて、
さすが小林一三氏ですね」
「うーん、実は京都線は、昨日乗った京阪電車が、創ったモノを
阪急がそのままいただいて、返さなかっただけなんだけどね」
「え、そうなんですか」
路面電車から、出発した京阪電車は、クネクネ曲がる路線が多く、
速達性に欠けていた。
そのため、高速で走れる、新京阪線を淀川の対岸に創ったのだった。
しかし、戦時中の国策で、全ての路線が国有化され、戦後、返却時に、
便利性に気づいた阪急が返却しなかったのだ。
「うわ、京阪電車かわいそう、せっかく創ったのに・・」
「ねえ、お兄ちゃん、京阪電車を助けてあげて」
昨日の『僕は明日・・』の映画のロケ地巡りで、叡山鉄道に乗った影響なのか、
女性陣が、急に京阪電車グループを応援し始めたのだ。
「お、おう」
その結果、阪急電車に揺られながら、なぜか京阪電車の改革を
考えるアラタだった。
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宝塚歌劇団で、『ベルばら』を堪能し(何故か、飛び込みでチケットを
購入したのに、一番良い席が、4席とれたのだ。マーレ仕込み?)貸衣装での
写真撮影所で、交互にオスカル役で写真撮影をして
(ここも何故か予約無しで入れたマーレ策?)、盛り上がった後に、
マーレが出した軽自動車で、有馬温泉で日帰り温泉浴を楽しみ、
六甲山のドライブで、夜景や夕食を楽しんだ後、麓の芦屋の邸宅街にある、
ベガ大使館の秘密別邸に到着した、アラタ達は、再び入浴を済ませた後、
リビングルームに集まった。
「自転車レースですか」
「ああ、阪神・阪急ホールディングには、高校野球の聖地『甲子園』があり、
近鉄には、全国高校ラグビーの聖地『花園ラグビー場』があるのに
京阪には何も無いんだ、だから、何か高校スポーツの聖地を創れないかと
考えたんだ。
でも、バスケは、東京の『代々木体育館』だし、
サッカーも『国立競技場』と、だいたいの高校のスポーツは、
もう聖地が出来ているんだ、だからまだ聖地化してない自転車かなと思って」
アラタは、移動中に考えた、京阪電車改革のアウトラインを説明しはじめた。
「琵琶湖を1周するように線路を引いて、レースをサポートするというのは、
解りましたが、具体的には、どんなレースにするんですか?
マンガの『弱虫ペダル』のような5人体勢のレースですか」
「いや、箱根駅伝の自転車版って、いうのかな、駅伝形式にしたいんだ。
それに京阪だけでなく、南海電鉄や近鉄など、関西の大手私鉄を巻き込んで、
さらにロボ電も加えたいんだ。そう、フランスの『ツールド・フランス』の
自転車レースを参考に『ツールドKANSAI』みたいなモノもやりたいんだ、
みんなアイデアを貸してほしい・・」と、
まずは、ツールド・フランスのレースの様子をネットで見て貰い、
それを参考に、ルナ達が、さまざまなアイデアを組み込んでいった。
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「さあ、今年もやって来ました、自転車を愛する、高校生にとっての
最大最高の大会、『ツールド関西・HS』今日は、
ゲスト解説者として、お2人の方においで頂きました。
女子の部の初代総合優勝校、京都平安高校の当時のキャプテンであられた
月野うさぎさんと、男子の部の初代総合優勝校、千葉北総高校の当時の
キャプテンであり、昨年の『ツールド・KANSAI・WS』の
優勝チームキャプテンの掛布選手にお越し頂いています。
月野さん、掛布選手よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
「8年前、神夜月様より、突然、この自転車優先道路と、鉄道の新線や
モノレールを贈られ、その後、1年間のテスト走行を終え、7年前の夏に
初の高校生向けの大会『ツールド関西・HS』が開かれたとき、
2人はどのようなお気持ちでしたか」
「そうですね、僕は、このコースが突然現われた当時は高校2年生で、
その夏は調度、滋賀県で、高校総体が開かれていたので、総体の後に
少しコースを試走させて貰えたんです。
その時感じたのは、このコースを使った大会は絶対素晴らしいものになる。
来年は3年なので、最後の大会になるけど、絶対このコースでやってほしい。
そして絶対僕らのチームが県大会で優勝して、ここを走りたいと思いました」
「私は、兄の影響で、自転車をやっていて、今の2日目の琵琶湖ステージは、
小学生の頃から、似たような道を兄に付き合って結構、走ってたんですよ。
で、来年ここで全国大会が開かれそうだってことで、急遽、平安女子高校も
自転車部を創ることになったみたいで、兄や、平女(平安女子高校)からの
お誘いもあって、中3だった私は、平安女子高校を受験したんです」
「ああ、それで当時の、平安女子高校は全員1年生だったんですね。
でも、よく優勝出来ましたね」
「ええ、今のレベルだったら、厳しいですね。でも、当時は、
女子の自転車部じたいが少なかったし、平女に集まった私以外の子もみんな、
兄や父の影響で、琵琶一(琵琶湖を1周する意味)を何回かやってる、
自転車女子ばかりだったんですよ。
今考えると、『よく集まったよね』ってみんなで話してます」
「そうだったんですね。ところで、この大会は、これまでと違い、
駅伝方式、しかも2泊3日という長丁場での大会と言う事で、お2人とも、
戸惑いは、ありませんでしたか?」
「ええと、最初は戸惑いましたが、県予選も駅伝方式だったので、大丈夫でした。
それに宿泊も、『ロボ電ホテル』ですか、あの子達(ロボ電)が
付いて来てくれるので、荷物も部屋に置きっぱなしで、
移動出来たので問題なかったです。
というかあの動く『ロボ電ホテル』個人的にも、欲しいですよ。
今のうちのチームには、外国人も何人かいるんですが、
『ツールド・KANNSAI・WS』で提供される『ロボ電ホテル』が欲しいってヤツ、
結構いますよ。
あと、あの駅伝方式も、日本独特で、新鮮で、楽しいって言ってますね。
『ツールド・フランス』なんかだと、エースに『マイヨジョーヌ』を着せる為に、
風よけに徹したりするでしょう、それが無くて、自分の力を全て、
タイムアタックに使えるのが、みんな楽しいって言ってますね」
(『ツールド・KANNSAI・WS』は、HSコースよりもさらに
拡大されたコースを走る国際大会である)
「私もあの『ロボ電ホテル』は嬉しかったです。
それに、私たちは女子校だったので、男子と夜ロビーで、色々話せて楽しかったです。
特に掛布さん達から、レースについてアドバイスして頂きありがたかったです」
「それは、レースだけのアドバイスですか?」
「ははは、どうでしょう?」
「突っ込みはこれぐらいにして、お気づきの方も居られると思いますが、
私たちが今、放送しているのも、その『ロボ電』の中にあるスタジオから、
行っているんです。
このコースに沿って、南海、近鉄、京阪、阪急、阪神と、関西の大手私鉄の
路線が創られていまして、峠のトンネル以外は、
とても近くから実況できるようになっています。
また、峠道には、モノレールが併走していて、そこから迫力有る映像を
放送できるだけでなく、落車等のトラブルがあった場合も、
すぐに対応できるようになっています。
お2人は、併走モノレールに乗った事は?」
「ありますよ、練習中に具合が悪くなって、転倒してしまったんです。
しかもそれが、比叡山の山越えの途中で、あのときモノレールが居てくれて
すぐに、ケガの手当をしてもらって、すごく助かりました。」
「僕は、六甲山の峠道を有馬方面から、一人で、タイムアタックの練習を
していた時に、スリップして転んで、いきなりチェーンが切れて、
途方にくれたことがあります。
スマホもその時壊れたみたいで、連絡も取れないし、晩秋の夕方だったんで、
暗くなる道をトボトボ下りてたんですが、たまたま、モノレールが通って、
助けてもらいました。」
「そうですか、あっ、そろそろ女子の部のスタートですね。
では、まず月野さんに当時の話を交えながら、解説をお願いします」
「はい、よろしくお願いします」




