012 電気代は0円?
「はあ、困った・・・」
「どうしたんだ原田、困った顔して、ルナさんに、京葉線に続いて、
武蔵野線、外房・内房、大網線まで改良して貰ったんだぞ、
しかも新型車両付で、まあ、整備が大変になるけど、増発した分、
お客さんも喜んでくれて、万々歳じゃないか」
「経理部の立場からすると、そう簡単に喜べないんだよ」
「と言うと?」
「消費電力だよ、いいか中山、車両数が3倍になったんだぞ、
つまり、それを運行すれば、消費電力も3倍になるって事だ、
さらに新駅も、沢山出来ているんだ、どれだけ電気代と人件費が
かかると思っているんだ」
ちなみに、東海道新幹線の『のぞみ』16両編成が、300km近い速度で、
東京―新大阪間550kmを走ると、片道で30万円近い電気代がかかる。
もちろん館山―東京間の特急『わかしお』だと、距離は4分の1の
150km程、車両数も3分の2の6~10両、速度も2分の1の
140km(平均)ぐらいなので、電力消費量は、かなり減るだろうが、
それでも、1回特急を走らせると、3万円は下らない電気代がかかるのだ。
特急以外にも、快速や普通電車が3倍の本数になったのだ。
幸い、新型の特急をはじめ、快速、普通列車とも、全てAIが
搭載されていて、原則、運転手は必要ないようにできていた為、
(ラッシュ時は、安全確認の為、車掌を兼ねた、乗務員が運転席に
乗るようにしていた)人件費の増加は少なくて済んだのだが、
電気代の増加は、どうしようもなかったのだ。
「そ、そうか、それは、頭になかったな、信濃のようなウチ専用の
発電所を新たに造るにしても時間がかかるしな」
NR東日本は、国鉄時代からの遺産として、信濃川流域に、
自営の水力発電所を持っており、川崎にある自営の火力発電所と
合わせて、約55%ほどを自力で発電していたが、残りの45%は、
東京電力から購入しているのだ。
その購入電力量は、年間約25億kwhで、
電気代は約400億円になっていた。
「た、大変です課長」と、部下の富田が駆け込んできた。
富田の話では、上総一ノ宮駅から連絡があり、線路沿いに、
巨大な建物が現われていて、その建物が、どうも発電所らしいのだという。
原田は、直ぐに現場に向かった。
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原田は、建物内に入って絶句した。
「も、もう一度説明してくれ、本当に、これは天然ガス発電所でいいのか?」
設備確認の為に、専門の技術者に来て貰っていたのだ。
「だから、そうですって、さっきから、言ってるじゃないですか、
この辺りには、昔から天然ガスが出るんです。
ただ、あまり吸い出すと、地盤沈下が起きるので、大多喜ガスが、地産地消で、
地下水に含まれているガス成分を取りだして、残りの水を戻す方法で、
地盤沈下しない規模での天然ガス生産をしていたんです。
この施設は、その大多喜ガスのプラント以上の設備と言って良い発電所で、
地盤沈下させずに、天然ガスを大量に産出出来るんですよ。
しかも、それを燃料に発電するこの発電機、確か日立製作所が、開発した、
熱効率70%の最新式ですよ。」
「そうなのか、それで、どれぐらい、どれぐらい発電出来るんだ、
増線された電車をこの発電した電気で走らせられるのか?」
「うーん、この発電所だけで、軽く30万キロワットは越えているんで、
余裕じゃないですかね。これと同等のが、茂原や君津や蘇我にも
見つかったって話ですから、今後の首都圏の路線がかなり増線されて、
列車の本数が大幅に増えても大丈夫だと思いますよ」
彼の予想通り、その後、首都圏の各路線が増線され大幅に列車の本数が
増えることになるのだが、さらにその後、新たに見つかった
群馬地区の地熱発電所群、東北地区の、ダム新設による
水力発電所群及び、地熱発電所群の新設備が次々に見つかることにより、
なんとNR東日本の自力発電率が100%となり、電気代が0円になるのだった。
そして、各新設発電所にも、カグヤ・ルナからのメッセージカードが
置いてあり、「この設備で浮いた電気代分、運賃を安くしてあげてほしい」
とのことで、NR東日本は、思い切って運賃を半額にしてしまうのだった。
また、海浜幕張や習志野、船橋にも天然ガス発電所が出来ていて、
そこは、京成電車、東武電車、東京メトロに電力が送電されていた。
さらに、東京湾アクアラインの千葉側の起点の袖ケ浦には、
小田急、東急、京急、京王、西武向けに新設された、天然ガス発電所が
仲良くならんでおり、アクアラインを通って、各路線に送電されていた。
そして、これらの発電所にも、NR東日本と同様に、ルナから、
運賃を安くするように、お願いカードが置いてあったので、
関東の大手私鉄も軒並み、運賃半額を行った。
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天然ガス発電所の新設は、南関東ガス群が吸い込める、南関東地方のみ
だったが、地熱発電プラントや、水力発電所の建設と寄贈は、全国各地で
起きていて、地熱発電所が100ヶ所、水力発電所が50ヶ所出来ていた。
ただ、NR北海道をはじめ、ディーゼルエンジンなどの気動車が
多く走っている地域は、発電所の横に、その電気を利用して、
水素を発生させる、水素プラントが出来ていて、少し面倒だが、
水素を燃料にした、燃料電池電車を動かせるようになっていた。
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「電気代が0円って本当に良いんだろうか」
アラタが悩んでいると、マーレが
「いいんですよ、つい200年前のタルタニア文明では、エーテルから
無限に電気を取り出すフリーエネルギー文明だったんですから。」
「え、そんな文明、聞いた事がないんだが」
「マーレ!」ルナが何故か慌てて、止めに入る
「すみません。別の星と間違えていました」
「???・・そうなのか」
「石油が出る、アラブ諸国では、電気代どころか、
税金もない国もあるそうですから、たまたま、天然ガスや、
温泉があって、ラッキーだったと言う事で良いんじゃない」
ルナ達が、何か隠している感じがしたが、アラタはそれ以上、
追求しないことにした。
「まあ、運賃が安くなる分には、構わないか」
このルナ達の政策により、各地で大幅に、鉄道の運賃が下がり、
多くの乗客が、その分を飲食や、レジャー費に回したため、
日本経済に、好循環が生まれた。
ちなみに、東海道新幹線は、東京―新大阪間で、『のぞみ』の指定席が、
14800円から10000円に、『ひかり』が7500円、
『こだま』が5000円に下がったため、関西の人達が関東へ、
関東の人達が関西へ旅行する機会が増え、内需の拡大に貢献したらしい。




