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際三十二話 これから

最終エピソードになります。かなり個人の好みはいってます。

 

“いやいや参りましたよ。ホテルに戻ってくるなりターヒルが探し続けていた女性を見つけたと言いだして。しかもそれがアキラだとは”


 ラシードは教授に電話をしていた。


 “初対面なのに、ですか。なんだかすごいですね。実は彼女から聞いたことがあるのですが、彼女は高校生の頃事故で一か月ほど学校を休んでいたそうで。そして学校に戻って来たときには別人のように変わったそうです。それまで勉強嫌いだったのに本を読み急にアラビア文化に興味を持ち熱心に勉強しだしたそうですよ。もしかしたらその間に彼と出会ったりとか何か運命的なものがあったのかもしれませんな”


 教授は興味深そうに言った。その頃は出会うチャンスなどないのはわかっているし本当にそんな風に思っているわけではないが、そうなら面白いとは思っている。


 “それはまた不思議な。ターヒルも小さいころから少し変わったところがある子でした。いつも誰かを探し求めているような。そういえば十歳くらいの時突然自分の左腕をナイフで傷つけたことがあったんです。見つけた時には既に傷つけていて更に傷つけようとしているところを慌てて止めたんですよ。自傷行為だと精神鑑定やらカウンセリングやらと大騒ぎしたんですがその時ターヒルはこう言ったんです。これは目印だ。まだ完成してないのにこれでは見つけてもらえない、と止めたことをひどく怒ってね。その後特に問題行動はなかったんでそのままになっていましたがね”


 ‟前世での話ですかね”


 ‟それはいいとして、今のターヒルにはまだ試練が残されてますよ。何しろ、今まで奔放に遊び歩いてきましたからな。それがどうにもアキラには許せないらしくて。滞在しているホテルに連れてきたときにも土下座する勢いで謝ってましたから。あんなターヒルは見たことがない。まあ、これから行動を改めて誠意をみせるしかないだしょうな”


 カカカ、と愉快そうにラシードは笑った。



 ~~~



 ‟アキーラ、誤解だ。今日はあいつらが勝手について来ただけだ。俺は連絡してない”


 まとわりつく女達を振りきって、すたすたと立ち去ろうとする輝の後を追いかけ手を握りしめ必死で言い訳するターヒルを周りの人間たちは唖然として見つめている。

 輝は皆の視線にいたたまれずにため息をあえて生徒にでも諭すように言う。


 “あ、き、ら、です。ターヒルさん、私は何もあなたに友達と手を切れなんて言ってるわけじゃないんです。そもそも私にそんなこと言う権利はないでしょう。ただここは大学で彼らは学生じゃないんだし。そもそももう少し節度を持って…”


 “本当にそれだけ?”


 輝の顔を覗き込むと輝が恥ずかしそうに視線を逸らす。


 “…今のあなたの事はよく知らないからこんなことを言うのはおかしいんだけど…あなたはとてもモテるから…本当はもう他の人に触れるようなことはして欲しくないの”


 輝が視線を戻しさらに声を低くしてつぶやく。涙目だ。

 それにターヒルはぎょっとする。


 “だから誤解だ、アキラ。そんなことはもうしない。誓ってアキラだけだ、一生お前だけを愛する”


 そう言うと輝をギューッと抱きしめる。

 キャーッと周りで悲鳴が上がる。


 輝はなんとかターヒルを引きはがし、ジトっと見上げる。


 ‟どうだか。そのセリフを聞くのは初めてじゃないから。それにだいたいあなたが私の王様っていう確証はどこにもないんだし。本当ははっきり思い出してないんでしょ?”


 そんな輝をもう一度抱きしめてターヒルはわざと耳元に唇を寄せる。


 “そんなことない。信じてもらえないなら何度でもいうよ。愛してる、我のザキーラ”


 ‟え?”


 突然そんな風に呼ぶ。一体何なの?


 困惑し怒り出す輝の耳元に今度は、だけど今は俺は王様じゃない、お前だけのターヒルって呼んでくれ、などという。


 もう一度ため息をついて輝は耳元でささやく低く甘い声を受け入れた。




 ‟あーあターヒル持ってかれちゃった~”


 離れて二人を見ていた取り巻きの中の女性たちががっくりと肩を落とす。それをなだめるように男たちが口々に言う。


 “しかたないね、あきらめな。ターヒル、まるで別人じゃん”


 ‟意外。ああ見えて一途だったんだな”


 ‟でも、考えてみればターヒルってどんな女に言いよられても、ホテルの部屋でみんなで大騒ぎしても、女どもにべたべた触られても自分からは絶対触れんかったしベッドに連れ込むこともしなかったしな”


 “誰がターヒルを落とせるか女どもはほとんど意地になってたけどな”


 ‟もしかしたら童貞もあり得る”


 ‟えーまさかー”


 “彼女のためかー”


 “みろよ、あのデレた顔”



 また別のグループもあっけにとられて二人を見ていた。


 ‟輝が女になってる…かわいい”


 ‟いや笹川さ、きれいだったよ、ドレス着てた時。俺クラッと来そうになったもん”


 彩人がボソッと言う。


 “ドレス?何の話?”


 純也がピキッと反応する。


 ‟いや、こっちの話”


 “アラブの王様、ほんとだったんだ”


 ‟でも何この急展開”


 “純也、あきらめな”


 “そんなー”



 END


つたない文章でしたが読んでくださった方々本当にありがとうございました。アラビア系は読むのは大好きなのですがいざ書いてみると自分の知識を無さに愕然としました。精進していきたいと思います。

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