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第二十話 第二十四話 やられた。騙された…

 

 ‟夜の砂漠の散歩だが、二、三日待つことにした”


 ‟もちろんあたしはいつでもいいですけど。王様は忙しいでしょうし”


 カイラの事でシャフリヤールの怒らせてしまったためか、何事もなかったかのように今夜はまた輝は夜の務めに呼ばれた。そして開口一番にシャフリヤールが告げたのが先の言葉だった。


 “どうも天候が落ち着かないからな。大きくはないが砂嵐が頻発している”


 ‟嵐じゃ仕方ないですよね”



 シャフリヤールとそんな会話をした翌日の昼過ぎ、輝は一人の見知らぬ侍女に声をかけられた。


 ‟アキーラ様、王からの言伝です。今宵夜の砂漠へ出かけるので準備をしておくように、と”


 “え、でも天気が悪いから少し待つって言ってたけど”


 “星よみが今宵から天気は落ち着くようだと申しております”


 ‟星読み。そんな人がいるんだ。分かりました”


 “あとでお召し物をお持ちします。早めの夕食を取っていただいてその後護衛のものが案内いたします。王は政務を終えられてから別で出立し待ち合わせの場所に行くとのことです”


 “はあ”


 何を言われても輝には言うことを聞くしか選択肢はない。

 夕方近くに同じ侍女が現れ、砂漠の夜は冷えるからと厚手のショールを重ね巻きされ、前に通った裏口から外に出る。少し歩いたところでラクダに乗せられて砂漠に出た。護衛の男の前に座らされる形でおっかなびっくり乗せられるとその高さに更に慄く。しかも結構揺れるのだ。


 まだ時間は早く暗くなっていないが風は少しある。


 嵐ほんとに来ないんでしょうね。


 しばらく歩くと後ろに宮殿も街も見えなくなった。


 ‟砂漠って本当に砂しかないんですね”


 輝が呟くと護衛のハシルという男が頷く。布で目以外を覆っているのではっきりと顔はわからないが中年の男、という感じだ。


 “私たちは長い時間をかけて砂漠の歩き方を学びます。太陽を見、星を見て方角を確認するのです”


 ですから、とハシルは輝を見る。

 “あなたのようにこの地になれていない方はうかつに砂漠に出てはいけません”


 特に夜は、と言われどくんと心臓が嫌な音を立てる。だが彼の平たんな声からは何も読み取れない。少し行くと小さなテントがあった。


 ‟こちらでお待ちください。小さいですが風よけにはなります。私は王の一行に連絡してきます”


 え、行っちゃうの?


 輝の不安そうな顔を見てハシルは微笑む。


 ‟すぐ戻ります。動かずに待っていてください”


 そう言って去って行った。男の姿が見えなくなるまで輝は見送っていたがやがて本当に一人になる。時折風の音がする以外は何も聞こえない。空と砂。そして日が暮れてきた。


 “さむ…”


 風が強くなってきた。砂がテントを叩く。ハシルは一向に戻ってこない。


 まさか、ハシルさんが迷っちゃったとか。どうしよう、外に出てみようか。


 動きたくとも動けないこのもどかしさが不安をあおる。

 しばらくじっとしていたが風はどんどん強まっている気がする。輝はとうとう我慢できずに外に出てみた。


 何これ。

 真っ暗闇。


 砂が顔に当たって痛い。月も星も見えない。


 “きゃあ!”


 そのとき突風が吹きざっざ―っと音がしてついさっきまで触れていたテントが飛ばされてしまった。


 マジ…?


 この砂漠の夜にたった一人取り残されてしまった。恐怖でパニックになりそうだったが声さえ出すことができない。砂が顔をひっきりなしに叩くので慌ててショールで頭と顔を覆って蹲る。そうしないと自分も飛ばされそうだった。


 いっそ気を失ってしまいたい。もしここで死ぬなら気を失ったまま死んでしまいたい。


 うそ、やっぱり死にたくない。

 王様助けて。



 その頃、いつもの時間に寝室に現れない輝にシャフリヤールは不審に思っていた。そこへ侍従が現れる。


 “王、報告したきことが”


 シャフリヤールが眉を顰めた。



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